中世のフランスで、騎士カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマー)が
夫の旧友であるル・グリ(アダム・ドライヴァー)から暴力を受けたと訴える。事件の目撃者が
いない中無実を主張したル・グリはカルージュと決闘によって決着をつける「決闘裁判」を行う
ことに。勝者は全てを手にするが、敗者は決闘で助かったとしても死罪となり、マルグリットは
もし夫が負ければ自らも偽証の罪で火あぶりになる。
百年戦争の間に行われた実際の決闘裁判をテーマにした実話で、ある強姦事件を黒澤明「羅生門」
のように3つの視点で語る。出来事ベースでは3人の証言は概ね同じなのに、主観により意味が
全く違ってくる。夫カルージュは旧友のル・グリに妻マルグリットを強姦され激怒する。ル・グリ
はマルグリットを襲ったと認めているものの、強姦ではないと主張する。
ル・グリは嘘をついている訳でなく、本当に「自分がやったことは強姦じゃない」と思っている。
確かに泣き叫ぶ女性を力で押さえ込んだ。しかし彼の主観ではこれは恋の激情であって強姦ではない。
ここが怖い。この手の裁判の話は耳にし女性にとって相当きつい事を聞いて来ると言うが、この当時
からそういう事を聞いて来るのか!と、胸が締め付けられる・・・
映画のレイプシーンは、ル・グリ視点とマルグリット視点で2度繰り返される。起こっている事実は
ほぼ一緒なのに、ディテールが全く違う。ル・グリ視点ではマルグリットの抵抗はそれほど激しくない。
女好きのル・グリが別の女性たちとベッドで戯れるシーン(これは合意のお遊び)、それと行われて
いる事はほぼ同じだが、しかし、マルグリット視点の真実は違う。本気で怯え必死で逃げ、涙と鼻水
でぐちゃぐちゃになりながらやめてと懇願するも、相手には全く通じない。
三者三様の人生観の違いで、同じ出来事がどのように違って映るのか、本作品はそれを上手に描き
出して居ます。長い映画だけど、表情の違いを確認するためにもう一回見たくなる。
当時の男性、女性の立ち位置
というのもなんともいえない気分になるし、おススメの映画です ☆☆☆☆★