元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アベンジャーズ」

2012-08-21 06:46:36 | 映画の感想(あ行)

 (原題:MARVEL'S THE AVENGERS )とても楽しめた。余計な講釈は抜きにして、単純明快路線に専念しているのが潔い。基本的にはケネス・ブラナー監督の「マイティ・ソー」の続編という形を取り、雷神ソーに追われて異次元宇宙から地球にやってきた邪神ロキと“ヒーロー戦隊アベンジャーズ”とのバトルを描くのだが、そのアベンジャーズの面々とはアイアンマンやハルクをはじめとする“マーベル・シネマティック・ユニバース”のオールスターキャストである。

 通常、何人もの濃い連中をまとめて主人公として扱う場合、それぞれのプロフィール紹介に相当な時間を費やす必要があるのだが、今回は“皆おなじみのキャラクターだから、そのへんはサッと流していこう”みたいなノリで端折っているのが痛快だ。しかも“元ネタを知っていないと全く楽しめない”という不親切なところもない。たとえそれぞれの登場人物が活躍する“前作”を観ていなくても、ドラマ運びには支障がない程度のフォローをキチンと入れている。

 集まったヒーロー達は最初まるで協調性がないところが描かれるが、強い奴らが集まれば往々にしてそんなものであり、別に“このメンバーだからチームワークがなかなか成立しないのだ”といった限定的な話には持って行かない。いろいろと反目し合うけど、やがて力を合わせて強大な敵に立ち向かうという、ドラマの目的に寄り道せずに突き進む迷いの無さが心地良く感じる。

 脚本も担当しているジョス・ウェドン監督の仕事ぶりは堅実そのものだ。メンバーの得意技を一目瞭然に提示し、各人しっかりと見せ場を用意している。特定の登場人物に必要以上に肩入れせず、それどころかアベンジャーズ以外の善玉キャラの扱いにもしっかりと目を配り、不自然な部分を極力無くしていこうという姿勢は見上げたものである。

 アクション場面については申し分ない。おそらくはサマーシーズンに公開されるヒーロー物の中ではベストであろう。観る者を退屈させないように次から次に見せ場が用意されているのは当然ながら、地上で戦うメンバーと“飛び道具”主体の連中とを(テンポの面で)巧みに描き分け、活劇場面にメリハリを付けているのが嬉しい。

 ロバート・ダウニー・Jr.やスカーレット・ヨハンソン、サミュエル・L・ジャクソンやジェレミー・レナー等、各キャストも実に楽しそうに演じている。アラン・シルヴェストリの音楽も快調だ。ラスト・クレジット後の“お楽しみシーン”も含めて、満足度の高い一編である。辛い浮き世を(一時でも)忘れるにはもってこい。娯楽映画はかくありたい。
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「にごりえ」

2012-08-19 07:26:23 | 映画の感想(な行)
 1953年文学座=新世紀映画提携作品(配給は松竹)。日本映画史上屈指の監督と言われる今井正の代表作だが、私は今回の福岡市総合図書館ホールにおける再上映で初めて接することが出来た。樋口一葉の3つの短編小説の映画化で、本編も3つのパートに分かれたオムニバス映画である。

 第二話に当たる「大つごもり」が断然面白い。資産家の家に奉公しているヒロイン・みねは、ある日病に伏せっている伯父の一家から金に困っていることを明かされ、大晦日までに給料を前借りして少し都合して欲しいと頼まれる。世話になった伯父を見捨てるわけにもいかず快く引き受けた彼女だが、資産家の財布を握っているのは不人情な奥方だ。一度は給料前払いを承諾するが、大晦日近くになってもそれを実行する気配は無い。



 切羽詰まったみねは、売上金の中からいくらか抜き取って伯父一家に渡す。時あたかも月末の決算で、みねの“犯行”が露見するのは時間の問題。さて、彼女の運命は・・・・。

 プロットの積み上げ方が絶妙で、全編に渡るサスペンスには瞠目させられる。終盤の鮮やかなドンデン返しも含め、一級の娯楽編と言って良い。主演の久我美子をはじめ、仲谷昇や中村伸郎といった脇のキャストも万全だ。

 不本意な結婚生活に悩んで一時は実家に帰る人妻と、彼女に思いを寄せていた幼馴染みの車引きとの束の間の逢瀬を丹念に綴った第一部「十三夜」や、小料理屋の酌婦と彼女に入れあげて落ちぶれた男との恋のもつれを描く第三部「にごりえ」(主演の淡島千景がキレイでエロい!)も良い出来なのだが、「大つごもり」と比べればどうしても印象は薄くなる。

 とはいえ、全体的には水準以上のクォリティは確保されており、この時代の今井監督の実力を垣間見るような気がした。中尾駿一郎のカメラと団伊玖磨の音楽はさすがに達者。昭和28年のキネマ旬報誌のベストワン作品でもある。
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「トータル・リコール」

2012-08-17 07:18:44 | 映画の感想(た行)

 (原題:Total Recall)映画の設定自体が噴飯物である。21世紀末の地球は戦争によってほとんど人が住めない状態になっており、わずかに上層階級中心のブリテン連邦と下層階級民ばかりの豪州のコロニーの2か所のみが居住地域として機能している。地球の真ん中を貫通して両者を繋ぐ“フォール”と呼ばれる移動装置により、労働者たちは日々地球内部を移動しては戻ってくるという社会構図が作り上げられている。

 これのどこがオカシイかというと、人類の生活を支える産業基盤がまったく提示されていないことだ。労働者たちは毎日ブリテン連邦に“出勤”して仕事に追われているが、その生産活動の享受者は一体誰なのだろうか。上層階級の連中だけでは、コロニーの大半の労働者が産み出す供給物を消費できるはずがない。ならばその生産物やサービスはコロニーにも“輸出”されているのだろうか。しかし“フォール”には人員を運ぶ以外の機能は付与されていないようだ。そもそも、食料を生産するインフラも見当たらない。

 斯様な穴だらけの御膳立てで“上層階級vs下層階級”みたいな手垢にまみれたモチーフを平気で持ち出すとは、本作の作者は相当に無神経だと言わざるを得ない。

 コロニーに住む工場労働者のクエイドは、退屈な毎日を少しでも紛らわせようと、人工記憶センターのリコール社を訪れる。だが、リコール社の施術が開始されたその時、なぜか突然ブリテン連邦の警察隊の襲撃を受ける。パニックに陥ったクエイドだが、次の瞬間警官隊を一人で片付けていた。どうやら自分には秘められた戦闘能力があるようだ。

 混乱の中で帰宅したクエイドは、今度は彼の妻ローリーから殺されそうになる。彼は元々ブリテン連邦のエージェントであったが、任務遂行中に反政府組織に共感し、反乱分子に転じた過去を持つ。連邦側は彼に偽の記憶を植え付け、反乱組織のボスを見つけ出すために泳がせていたという事実が明らかになる。

 ポール・ヴァーホーヴェン監督による前回の映画化と同じく、フィリップ・K・ディックによる原作のテイストは限りなく薄く、これ全編ドンパチの連続だ。ただし「ブレードランナー」のパクリみたいなコロニーの風景と、「フィフス・エレメント」の類似品みたいなブリテン連邦の有様を見せられただけで、鑑賞意欲が減退するのは確かである。

 さらにアクション場面の段取りも“どこかで観たようなもの”が目立つ。画面は派手だが、レン・ワイズマンの演出にはキレもコクもなく、賑やかなわりには退屈だ。

 主演のコリン・ファレルは線が細すぎる。シュワ氏並の存在感は無理だとしても、せめてマット・デイモンあたりのレベルはクリアして欲しい(笑)。過激な“奥さん”役のケイト・ベッキンセイルの立ち回りは「アンダーワールド」シリーズとさほど変わらず。イーサン・ホークやジェシカ・ビールら脇の面子の仕事も大したことはない。全体として、どうしてわざわざ再映画化したのか分からない出来である。
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「卍(まんじ)」

2012-08-16 18:07:50 | 映画の感想(ま行)
 昭和39年の増村保造版。谷崎潤一郎の同名小説の映画化で、同性愛カップルの女二人と、男一人とのイレギュラーな三角関係を描く。

 これは本当に面白い。製作年度を考えれば露出度が低いのは当然だが、そこは増村御大、ヒロイン二人が山道を歩きながら指先を絡め合う場面や、若尾文子の肉体を前にして岸田今日子がシーツを引き裂くシーンなどのエロティシズム描写を小出しにすることによって最大限の効果をあげている。

 そして後半でのヒロイン園子の夫や光子の情夫も加えての欲望と狂気が渦巻く虚々実々の駆け引きは、効果的に振りまかれたブラックな笑いも相まって、一種異様な世界に突入。そもそもこの映画自体が園子の一人称で語られることもあり、何がウソでホントかわからない迷宮の深さはいや増すばかり。90分という上映時間に見せ場がぎっしりという感じで、鑑賞後の満足度はかなり高い。

 なお「卍(まんじ)」は83年に横山博人監督によっても映画化されているが、増村版にはとても及ばなかった。やはりこういうネタは“ビョーキ度”の高い映像作家の方が有利なのであろう(笑)。
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AIRBOWのシステムを試聴した。

2012-08-15 08:30:40 | プア・オーディオへの招待
 先日、久しぶりに出張のため大阪を訪れた際、仕事を終えた後に日本橋に足を運んでみた。目当てはオーディオファンの間では知らぬ者がいない有名ショップ「逸品館」が展開するオリジナルブランド・AIRBOW(エアボウ)の製品を試聴するためである。

 とはいえ、私にはあまり時間が無く、聴けたのはCDプレーヤーのSA8004/StudioとプリメインアンプのPM8004/Studio及びPM7004/Live、そしてスピーカーのIMAGE11/KAI2の組み合わせのみである。

 型番からも分かるように、CDプレーヤーとプリメインアンプはMARANTZ製品をベースにした改造モデル、スピーカーはスウェーデンのaudio pro社の製品に手を加えたものだ。正直言って、私はMARANTZのアンプ類を信用していない。中高域のクセが強すぎて繋ぐスピーカーを選んでしまうからだ。このショップがそのあたりをどう対処しているかとても興味があった。



 実際に聴いてみると、なるほどノーマル仕様とは別物だという印象を受ける。中高域の饒舌さを(聴感上で)抑えるために、中低域にガッシリとした骨格が付与されており、スピーカーに対する汎用性を格段に向上させている。しかも、情報量や解像度に関してもノーマル仕様よりも追い込んでいる印象がある。これはなかなか良い製品だ。

 しかし、当然のことながらMARANTZ製品よりも価格は高くなる。ちなみにノーマルのPM8004は実売価格が8万円弱であるのに対し、PM8004/Studioは15万円だ。15万円も出すのならばあと数万円加えるだけでMARANTZの上級機であるPM-13S2が買えるではないか。ちなみにPM-13S2はMARANTZ製品の中にあって最も(音色面で)使いやすいモデルだ。

 しかも、いくら上手く改造されているといっても、ベースになるPM8004PM7004も10万円以下の製品だ。外見も価格相応の訴求力しか発揮しない。所有満足度の点ではイマイチではないだろうか。



 MARANTZなどの既存の製品を元にするのではなく、完全なオリジナルで勝負しても面白いと思う。このショップにはそれを可能にする技術力も企画力もあるはずだ。

 とはいえ、同じ改造品であるIMAGE11/KAI2の印象は上々だった。“切れ味が良く、明瞭なサウンドを提供する”というキャッチフレーズ通りの音で、しかもいくら聴いても疲れないし、指向性が緩やかでセッティングも楽だ。これが42,900円で手に入る。お買い得商品の最たる物だろう。

 最後に、AIRBOWモデルではないがaudio proのスピーカーBLACK PEARL V3も試聴した。このモデルは初めて聴くが、明るく透明感の高い音で、特にヴォーカルの実体感は特筆できる。音場も前後の距離感が良く出てナチュラルさを失わない。実売価格は6万円台だが、コストパフォーマンスは相当に高いようだ。

 オーディオ専門ショップというと、どうしてもマニア御用達のハイエンドモデル中心という先入観があるが、「逸品館」は一般ピープルにも手を出しやすい商品を勧めてくるところも人気の理由だろう。今後このショップが推奨するモデルはチェックしていきたいと思う。
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「ダークナイト ライジング」

2012-08-14 07:24:48 | 映画の感想(た行)

 (原題:The Dark Knight Rises )前作は評判の割に大した映画だとは思わなかったが、この新作はさらにつまらない。ヒース・レジャー扮するジョーカーが大暴れした「ダークナイト」は、超能力を持たないマスクマンを主人公にした映画の矛盾点が表面化し、その意味でまったく評価できなかったのだが、本作は単純に作劇がヘタである。しかも上映時間が2時間45分と無駄に長く、鑑賞後の疲労感は実に大きかった。

 前作から8年、地方検事ハービー・デントを英雄とすることでゴッサム・シティの治安は保たれていた。一方ブルース・ウェインはデントの悪事を一身にかぶることによって世の表舞台から消え、半ば隠遁生活を送っている。ところがゴッサム・シティの支配をもくろむ凶悪なテロリストのベインが出現。さらには女泥棒セリーナの暗躍がブルースの身辺を危うくする。街の平和を取り戻すために、ようやくバットマンとして立ち上がるブルースだが、敵は強力で逆に窮地に追いやられてしまう。

 今回の悪役ベインは昔のティム・バートン監督版から始まったシリーズの諸作も含めて、一番魅力が無い。ただのプロレスラー崩れのマッチョ野郎にしか見えないのだ。最初のバットマンとの格闘シーンでは圧勝するものの、終盤近くでの再戦ではつまらない弱点(らしきもの)を突かれて負けてしまうという、実に芸の無い展開を見せられる。

 そもそも、ベインがどうしてゴッサム・シティを狙うのか、その動機付けが弱い。大都市とはいえアメリカのごく一部を支配したところで、実体的な経済基盤も持たない都市部だけでは早々に行き詰まる。これではテロリズムというより、ただの愉快犯だろう。

 ベインはブルースと同じくラズ・アル・グール出身なのだが、そのことがどうしてバットマンに対する確執に繋がるのかイマイチ分からない。一回目の格闘で負けたブルースはなぜかラズ・アル・グールに幽閉されてしまうが、どうやって数千キロは離れた場所に連れてこられたのか不明。さらに、そこを脱出したブルースがアメリカ軍が封鎖しているはずのゴッサム・シティにいかにして易々と舞い戻ったのか、それも不明。

 第一、簡単に軍が都市を封鎖できるものなのだろうか。ちょっと考えただけでも、いろいろな政治的プロセスを経ないと無理だと思われるのだが、そのあたりをスッ飛ばしているのは“しょせんアメコミの映画化なんだから、大目に見てよ”といったエクスキューズが感じられて不愉快だ。ブルースの会社の経営に関するゴタゴタも行き当たりばったりでハッキリせず、後半になると、このあたりはどうでも良くなってくる。

 主演のクリスチャン・ベイルをはじめマイケル・ケインやモーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマンといったいつもの顔ぶれは、可も無く不可も無し。ジョセフ・ゴードン=レヴィットやアン・ハサウェイら若手の仕事も特筆すべきものは見当たらない。ハンス・ジマーの音楽は上質でアクション・シーンも盛り上がるのだが、それだけでは映画全体を支えきれない。結局、クリストファー・ノーラン監督による新「バットマン」三部作の中でまあまあ面白かったのは、第一作の「バットマン ビギンズ」だけである。
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AIR TIGHTのアンプを試聴した。

2012-08-13 08:24:22 | プア・オーディオへの招待
 市内某ショップにてAIR TIGHT(エアータイト)のアンプを試聴することが出来た。AIR TIGHTは国内の高級アンプメーカーとして知られるLUXMANに在籍していたエンジニアが、86年に設立したエイ・アンド・エム社のブランドだ。ラインナップはすべて真空管式であり、トランジスタ式アンプを凌駕する性能が確保されているという。

 デモされていたのはプリアンプのATE-2001とメインアンプのATM-3011のセットで、価格は合わせて約420万円。スピーカーはJBLのDD66000、そしてアナログプレーヤーに独TRANSROTOR社のAPOLLON TMDという、総額1,200万円以上となるシステムでの試聴である。



 気鋭の国内ガレージメーカーの製品なので大いに期待していたのだが、なぜか出てきた音は精彩を欠いていた。当然のことながらアナログレコード中心の試聴であり、メーカー担当者が厳選したというディスクを次々とターンテーブルに載せるものの、聴感上のレンジ(帯域)はどれも狭く、中高域なんか音が痩せて聴き辛い。音場もほとんど広がらず、音像はボヤけていて、情報量も低調だ。これではとても評価できない。

 ところが、試聴会の終盤になって演奏された一枚のレコードの音に完全に目が覚めた。今までの展開とは打って変わった広大なレンジと明確な音像定位が現出。聴き終わって思わず拍手したくなるほどのヴォルテージの高さだった。さらにESOTERICのCDプレーヤーに繋ぎ替えてのCD演奏は、前半の聴くに堪えない音とはまったく異なるハイファイ調で、思わず引き込まれる。

 結局、当初“音が悪い”と感じたのは、機器の性能が低いためではなく、再生する音楽ソースの質が良くなかったからなのだ。メーカー担当者が得意気に“このディスクは貴重品で大枚叩いて手入れた”と紹介するレコードの数々は、演奏自体は希少価値があるのかもしれないが、音質面では語る価値も無い。



 いくら金を払って入手したのか知らないが、そんな音の悪いレア盤を持ってくるよりも、普通に誰でも手に入れられる“音質の良いレコード”を最初から粛々と演奏した方が、よっぽどデモンストレーション効果は高かったはずだ。自分の趣味に走るのは勝手だが、一般リスナーを前にしての音出しに当たってはもう少しソフト選定を考えて欲しかった。

 さて、普通に音の良いディスクを演奏した際のAIR TIGHT製品のパフォーマンスだが、これはかなりのものだと感じた。真空管アンプらしくない・・・・と言ったら語弊があるが、とにかくハイスピードでDD66000を朗々と鳴らす駆動力がある。それでいて中高域にほのかな艶が乗り、音色自体は明るく闊達だ。海外製のハイエンド型アンプと五分に渡り合える実力があると思った。

 デザイン面でも国産機では珍しく垢抜けている。所有欲をかき立てるエクステリアだ。高価格であり、一般ピープルが手を出せる製品では決して無いが、国内にはこういう頑張っているメーカーあるということを知ることが出来ただけでも有意義だった。
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「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」

2012-08-12 22:31:50 | 映画の感想(か行)
 2000年作品。最初のゴジラ出現以来、大きな被害を受け続けた挙げ句、いつの間にか首都を大阪に移してしまったという設定のドラマ。つまりは無理矢理に“昭和29年の第1作目「ゴジラ」の続編”にしてしまったわけだ。

 この力技には呆れるやら感心するやら。そして現代とは別のパラレルワールドの話にしてしまったのも“なんかズルい”と思ったりする(笑)。でもそのためにブラックホール砲みたいなトンデモ兵器にも違和感がなくなったのは確かだ(人工衛星が物理法則を無視して垂直に落下してくるのには笑ったけど)。

 CGデジタル合成はけっこう成功していて、ゴジラと実写の東京の街がそれほど違和感なくひとつの画面に治まっている。メガギラスとのバトルの段取りも悪くない。しかし、ゴジ公の縫いぐるみが安っぽく見えるのは難点だ。

 初代ゴジラのそれを忠実に再現したという話だが、あれはモノクロだったし、監督の演出力もケタ違いに上だったからサマになっていただけだろう(本作の演出は手塚昌明が担当)。緑色した合成樹脂っぽい縫いぐるみがウロウロしているだけでは絵にならない。せめて夜間のシーンを増やしてアラを隠すぐらいの芸は見せてほしかった。

 人間関係のドラマは、以前と比べてだいぶん改善されてきたものの、やっぱり平成版「ガメラ」あたりに比べるとかなりいい加減。対ゴジラ戦闘組織(?)のアジトがヘンに小規模で貧乏くさいのも興醒めだ。田中美里や谷原章介、伊武雅刀といったキャストは可も無く不可も無し。
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「ロボコップ2」

2012-08-11 07:17:07 | 映画の感想(ら行)

 (原題:Robocop 2 )90年作品。ポール・ヴァーホーベン監督による第一作のヒットを受けて、気を良くしたオライオン・ピクチャーズが放った第二弾。正直言って、前作よりかなり雑な仕上がりになっており、観る価値はあまりない。

 舞台は近未来のデトロイト。治安は地に落ち、真っ昼間から犯罪が横行している。この背後にあるものが、携帯用麻薬「ヌーク」の氾濫で、麻薬シンジケートのボスは笑いが止まらない。前作でも紹介されたが、警察はすでに大コングロマリット・オムニ社の手に渡っていて、その警察はストライキ中。さらにオムニ社はデトロイト市の乗っ取りを企てていて、黒人市長に圧力を加えている。

 しかし、そんな状況に関係なく、主人公である合理化の権化マーフィことロボコップ(ピーター・ウェラー)は今日も犯罪捜査に精を出している。それを良く思わないのがオムニ社で、ロボコップに対抗する「ロボコップ2」の製作にとりかかる。

 冒頭、マーフィの妻がロボコップと対面するシーンがある。これが映画のクライマックスになってもよさそうなものだが、人間の心を持つロボコップの苦悩はそこでオシマイ。あとは麻薬組織とオムニ社の陰謀に立ち向かうロボコップの活躍が能天気に描かれるのみだ。アクション・シーン満載なのはいいとして、ただ画面がハデになるだけで、描写自体は弛緩しきっている。

 前作では重要なキャラクターだったマーフィの相棒の女性捜査官(ナンシー・アレン)も、今回はどうでもいい描き方だし、悪役もパッとしない。麻薬組織の幹部に12歳の少年がいることが面白かったが、それ以外の脇のキャラクターが前作に比べて相当雑に扱われている。

 オムニ社は「ロボコップ2」の頭脳に、死んだ麻薬組織のボスの脳を移植する(この脳移植の手術シーンはホラー映画顔負けの気持ち悪さだ)。クライマックスは当然ロボコップとロボコップ2の戦闘場面となる。しかし、このロボコップ2、前作の悪玉ロボットED-209と雰囲気が似ているのが不満。できればロボコップ2は、ロボコップと同じ大きさで同じ機能を持ったロボットにしてもらいたかった。監督は(今は亡き)アーヴィン・カーシュナーだが、ベテランらしくないまとまりを欠いた出来である。

 製作元のオライオン社もとうの昔に消滅してしまったが、なぜか「ロボコップ」自体はリメイクの話が進められているようで、2013年に公開されるという。評判が良ければチェックしてみたい気がする。
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「崖っぷちの男」

2012-08-10 06:36:26 | 映画の感想(か行)

 (原題:Man on a Ledge)劇中、ニューヨークのホテルの上層階から飛び降り自殺をしようとする男を一目見ようと集まった野次馬たちの穏やかならぬ雰囲気が、作品に緊張感と奥行きを与えている。その中の一人が“人間、追い詰められるとああなるのだ。一部の金持ちばかりが富を独占し、大多数の国民が辛酸を嘗めている。誰だって彼みたいになってしまう可能性はある!”という意味のことを叫ぶ。

 こういう社会批判ネタはクライム・サスペンスである本作においてはモチーフの一つに過ぎないが、これがないとメイン・プロットは成り立たないほど重みがある。映画には世相が反映されるのは当然だし、また社会情勢を捨象してしまうとただの絵空事になる・・・・改めてそのことを認識した次第だ。個人的にはシドニー・ルメット監督の傑作「狼たちの午後」を思い出してしまった。

 ダイヤ強盗の罪を問われて収監された元ニューヨーク市警のニックは、スキを見て刑務所から脱獄する。その後、偽名でホテルにチェックインした彼は、遺書を部屋に残した後に窓の外に踏み出す。くだんの強盗の件は濡れ衣であるらしく、無実を訴えるために自殺という非常手段を選んだらしい。だが、この手の映画がスンナリと自殺劇を演出するはずもなく、この騒ぎの裏で着々ともう一つのプロジェクトが動いている。

 しかし、この“別働隊”の動きは実にぎこちない。強盗に遭った宝石商が所有するビルがそのホテルの近くにあるという見え透いた設定には目をつぶるとしても、いくら自殺未遂騒ぎの渦中にあるとはいえ、近くで爆弾を使用した“強制侵入”なんかをやらかせば、誰だって気付く。

 しかも使用した“機材”は置きっぱなしで指紋もベタベタと残し放題。想定される“不具合”についても行き当たりばったりの対応しか出来ず、これで成功するとしたらマグレに近いだろう。さらには主人公の説得に当たる女刑事の屈託やら、ニックの家族関係に関する言及やら、何かとサブ・プロットが多くてまとまりを欠く結果になったのが残念。もっと脚本を練り上げるべきだった。

 とはいえ、中盤を過ぎる頃になってくるとアクションが重層的に繰り出され、けっこう盛り上がる。特に終盤での主人公のアッと驚く“行動”には度肝を抜かれた。アスガー・レスの演出は際立ったところは無いが、ヘンなケレンに走らずに地道にストーリーを追うところは好感が持てる。

 主演のサム・ワーシントンは今回も大根っぽいのだが、直情型の主人公像にはよく合っていると言える。女刑事に扮するエリザベス・バンクスも、仕事に行き詰まったキャリアウーマンみたいな雰囲気を醸し出していて、なかなか良い。悪役に回ったエド・ハリスの存在感もさすがだ。邦題はイマイチだが(笑)、観ている間は退屈しない活劇編である。
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