青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

あの頃の、面影を探して。

2023年04月09日 10時00分00秒 | 都電荒川線

(かつての超高層ビルを仰いで@学習院下~面影橋間)

山手通りと新目白通りの交わる、高戸橋の交差点から東池袋方面を見上げる。これも都電では非常に有名な構図ですかね。早稲田を出た都電は、高戸橋の交差点で北に向きを変え、神田川の橋を渡って山の手の台地を東池袋に向かって登って行く。坂道の向こうに聳えるはサンシャイン60。高さ240m、地上60階の東洋一の高層ビルも、現在は第1位の「あべのハルカス(大阪・300m)」から数えて日本の高層ビルランキングではトップ10圏内にも入ってない(12位)のだそうで。都内でもサンシャインより高いビルは東京都庁を始め結構出来てしまいましたけど、やっぱり我々世代には「日本一の高層ビル」と言えば池袋のサンシャイン60(サンシャインシティ)。今は「空飛ぶペンギン」で有名なサンシャイン水族館でも人気があるようです。

この日の神田川沿いの桜並木は七分咲き。都内の中でも、意外とこの川は大袈裟に言えば急峻な谷あいの地形を褶曲して流れていて、ひとたび大雨・・・現代で言うとゲリラ豪雨なんかがあったりすると、あっという間に谷底にある石神井川~神田川に水が集まって溢れたりする暴れ川でもあります。特に上流、杉並あたりの神田川とか善福寺川って、今更河川改修も出来ないんだろうけどグネグネに曲がって流れてて治水の難しさを感じますですよね。この辺りの神田川も相当の深さに浚渫して河道を下げ、川の流量を確保する対策が取られてますから、東京都でも都市の洪水対策は色々とやってるんだろうけどさ。

面影橋電停に停まる7700形。新目白通りの桜並木を添えて。面影橋と言えば、私がたぶん小学生の頃だからもうウン十年前の話になるのだけど、生まれて初めて都電に乗ったのがここ面影橋の電停でした。千葉県の我孫子にある祖父母の家に行く際、休みになると片道千円くらいの電車賃を渡されてはその交通費の範囲内で一人で好きなルートを使って行っていたんですが、ある時、ふと「都電に乗ってみたい!」と思い立ったんですよね。小田急で新宿へ出て、高田馬場から歩いて面影橋の電停まで来たのを覚えている。都電の始発駅が早稲田というのは知っていたけど、たぶん地下鉄東西線の運賃をケチったんだろうな。

桜咲く面影橋の電停を眺めながら、もう記憶の彼方になった子供の頃を思う。この祖父母の家への一人旅は、都内を通り抜けて千葉へ行くだけとは言え、「自分でルートを考え、切符を買って、電車に乗る」という行為自体が小学生には非常に刺激的で楽しみだった覚えがある。もう季節はいつかも忘れたけど、確か都電を面影橋から町屋駅前まで乗ったんだよねえ。んで、町屋から千代田線に乗らず、あえて京成線に乗って高砂から京成金町に出てね。そっから千代田線乗って我孫子に出たので、小学生にしちゃマニアックなルートだと思う。まだ町屋電停も商店街のアーケードの横にあったんだよね。

ちなみに、この「面影橋」という電停の名前は、個人的に非常に趣があっていいよなあと思う。何だか歌や小説のタイトルになりそうな名前で、都電の電停名で一番好きかもしんないなあ・・・なんて考えながら、自分の「路面電車とのかかわり」がスタートした場所である面影橋の風景と、満開の桜を眺める。ここで三ノ輪橋行きの都電を待っていた少年の頃の面影なんて、とうに忘却の彼方へ去ってしまったなあ、なんて独り言ちるオジサンのセンチメンタリズム。ちょっと気恥ずかしくはあるのだけど。

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花の飛鳥山。

2023年04月07日 23時00分00秒 | 都電荒川線

(花の飛鳥山@北とぴあ展望台より)

柔らかな花曇りの午後、東京の桜の名所でもある飛鳥山公園を、北とぴあの展望台から眺める。この時期の北とぴあ展望台は、眼下を走る新幹線を眺めに来た春休みの鉄道キッズでいっぱい。無料の公共施設でここまで撮影条件の揃っているところもなかなかないのでは?という恵まれた場所にある。この日の飛鳥山の咲きぶりは線路側の東斜面が七分から満開、公園内が五分から七分という感じ。そんな春景色の東京を背に、北へ向かうはやぶさ・こまち編成。南側の王子駅前方面の展望が、駅前に建設されたタワマンのせいで狭まってしまったのが惜しい。

北とぴあの展望台を降り、都電の王子駅前から飛鳥山への階段を登れば、花見に興じる人、人、人・・・コロナ禍から三年目の春、流石に世の中も感染症を気にして閉じ籠っているよりも、外へ出る事を選んだようです。抑えていた感情を爆発させるように、一気に咲いた飛鳥山の桜。かたや人間の方は、綺麗な花を愛でるより、おおかた浮かれて宴を開き酒を飲むのが花見の本質なので、他人様に迷惑を掛けない程度に大いに盛り上がっていただきたいところ・・・(笑)。

都電荒川線が明治通りの併用軌道に飛び出して来る飛鳥山の交差点。都電の中では言わずと知れた桜の名所らしく、交差点を見下ろす歩道橋には大勢のカメラマンが。さすがに都内の交差点なので、クルマを捌きながら都電と桜をコラボレートするのがなかなか難しい。何度かのボツを繰り返してクルマの流れを掴んだ後、さくらの花弁のデザインをあしらった城北信用金庫のラッピング車両が、午後の日差しを浴びて飛鳥山の坂を降りて行きました。

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今年の桜は早過ぎて。

2023年04月02日 22時00分00秒 | 都電荒川線

(今年の桜、撮り初め。@都電荒川線・荒川二丁目電停)

今年の桜は記録的な早さで咲き始め、東京都内では3月の15日過ぎに開花、そして20日に満開の発表がありました。だいたい関東で桜が咲く頃なんてえのは、仕事も年度末進行でクッソ忙しいのに加えて「花曇り」だとか「菜種梅雨」みたいな話で何でだか天気が安定せず、自分の仕事の都合と開花予想と天気を見てはヤキモキヤキモキする時期でもあります。鉄道写真×桜ってのは、この趣味やっている人からすると永遠のテーマみたいなもので、桜前線が日本列島を駆け抜けるこの時期は撮り鉄には一年一回の祭り。あそこの桜をああ撮ろう、こちらの桜はこう撮ろうと撮り鉄諸氏の頭の中が桜色になるそんな季節に、私は今年の桜を都電荒川線で始めてみました。三河島浄水場の桜ほころぶ荒川二丁目の電停。都電荒川線は、「東京さくらトラム」なんて愛称が公式に付けられているのだけど、どちらかと言うと都電のイメージってバラなんですよね。だから、「こんな愛称しゃらくせえなあ」なんて思っていたんですけど、この時期だけは「東京さくらトラム」って呼んであげてもいいかな。

それにしても、季節を追い掛ける趣味をしているものの宿命か、先日お正月で「あけましておめでとうございます」なんて言っていたのがもう三月も終わってしまった。そう言えば明日から新年度なんですね。ぼんやりしているうちに季節は巡り、また一つ歳を取って、自分の生活にも変化が訪れている。電停の横の踏切を通り過ぎる人の姿にも、大いに春と別れの雰囲気を感じて・・・

 

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都電に揺られて

2018年05月27日 22時27分20秒 | 都電荒川線

(軒先に 洗濯物も 揺れる初夏@西ヶ原四丁目駅)

久し振りに都電なんぞに乗って来ました。そういえば、去年も梅雨の前だか中だかに都電に乗りに来たような気がしますが、そういう気分になるのは季節的なものなのでしょうか(笑)。九州南部は梅雨入りしたとかニュースでやってましたけど、週末に天気がいいのも今週までくらいでしょうかね。梅雨入り前おそらく最後の週末に、揺れる軒先の洗濯物。西ヶ原四丁目の電停に、7700形がやって来ました。




熊野前にて。「都電の日」カン付きの7701を。後進の新型車両は続々とデビューしていますけど、個人的には都電と言えばこの7000形のフォルムがしっくりくる。車体と機器更新をして7700形としてフルレストアされていても、昭和30年代から続く伝統のデザインですからね。この時期沿線を彩る荒川区の花はバラの花。都電荒川線には「東京さくらトラム」なんて愛称が付けられていますが、「東京ローズトラム」で良かったんじゃないかと思いますけど。




都電に揺られて、子供のお楽しみは荒川遊園地。やれディズニーランドだ富士急だとカネのかかる遊園地の類にはあまり興味がないのだが、荒川遊園地はいいよね。何に乗っても大人200円小人100円の明朗会計。しかも都電の一日乗車券を持っていると入場料が無料。日曜日に開催される有志ボランティアの方々によるNゲージ運転会が子供のお気に入り。こちらも無料です。ポ〇ンデッ〇だといくら取られましたっけ??




ひとしきり子供と遊んだあとは、菓匠「明美」の都電もなかでおやつの時間。子供の食べてるの分けてもらったけど、相変わらずしっかりとした味の美味いもなかである。梶原の商店街から、梶原電停を行く7703を。こちらは涼やかなパープル。深緑のカラーリングが好みですけど、こちらもいいですね。




帰りは梶原から王子へ出て飛鳥山の紫陽花の咲き具合なんぞを眺めて来た。6月前ですけどそこそこの色付きですね。来週末辺りには結構見頃になってるかも。紫陽花と言えば、今年は最後の箱根の紫陽花とLSEを抑えないとなあ。週末の予定とにらめっこになると思うけど、かように撮り鉄は色々と予定がいっぱい。
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梶原雨情

2017年06月19日 23時18分14秒 | 都電荒川線

(物憂げな午後@都電梶原電停)

あまり天気予報の良くなかった日曜日、上の子供がどこか連れて行けと言って来たので二人でブラブラと電車に乗った。アテもなく新宿から秋葉原に出て、日暮里から舎人ライナーに乗り、熊野前で降りて都電に乗り換える。子供がおねだりするので梶原の電停で下車。珍しく一眼レフも持って行かなかったのでスマホ撮り。泣き出しそうな空が梅雨らしい。思えば雨のない今年の梅雨である。


思えば去年もこの時期に都電に乗りに来た。飛鳥山の紫陽花が見ごろの時期でもあります。電停から踏切を渡って二軒目、和菓子の「明美」さん。地元飛鳥山の紫陽花をイメージした美しい金平糖や、鮎の形の和菓子が夏らしい。夏の和菓子と言えば私は水まんじゅうとか麩まんじゅうが好きですねえ。笹の葉っぱに包まれたのをツルっと食うのが美味いんだ。


そして子供にねだられたのが、この「明美」さんの最大の名物「都電もなか」。いつから売られているか知りませんけども、確固たる東京名物としての地位を築き上げた下町の一品。パリリと乾いた皮に包まれた粒あんとねっとりとした求肥は、シンプルながら甘いもの好きには堪えられない味わい。都電の新車が出るたびに律儀にパッケージを作っており、最新の改造車7700形までしっかりラインナップに入っているのが丁寧です。


梶原の電停には、「たばこ」の古びたホーロー看板も懐かしい売店と古書店があって、今でも営業を続けている。雑然と積まれた古書とぶっきらぼうに差されたスポーツ新聞の取り合わせが、より物憂げな下町の午後の時間を感じさせる。梶原の街は愛宕地蔵を囲む「梶原銀座」と呼ばれる商店街を中心にした地区で、地蔵の縁日の日はそれなりに賑わうそうですが、私が行く時はいつも案外とひっそりしているイメージがあります。


この電停の隣の古書店は「梶原書店」と言って、創業者のご主人はたいそう競馬好きだったそうな。ある日、新聞に載っていた騎手候補生募集の広告を目にしたご主人。ちょうど頃合いに体が小さかった古本屋の息子は、オヤジのひょんな勧めのままに馬事公苑の騎手課程に進むことになります。下町でベーゴマや缶蹴りに明け暮れていた少年は、落第ばかりの候補生。三度の騎手試験を経てようやっとこ騎手の免許を取り、21歳という遅咲きのデビューを果たします。それが、のちの第54回日本ダービー優勝ジョッキー・根本康広騎手。

この古書店からダービージョッキーが生まれた事を、一体どれだけの人が知っているのだろうか…
とうとう雨が降り出した梶原の電停を、都電がせわしなく行き交います。
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