青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

The Terminal

2019年08月13日 17時00分00秒 | 阪急電鉄

(AM6:00 阪急32番街前@阪急梅田駅)

「関東大手私鉄の雄」と言われると、やれ東武だ、東急だ、いや小田急だ云々と議論になるように思うけど、こと関西に関しては「雄」と言うなら阪急という意見が優勢になるのではないかと思っている。何だろ、それはやはり創業者である小林一三翁のもと描かれた沿線のグランドデザインによって作り上げられたブランド力のなせるワザなのではないかと。阪急百貨店・宝塚歌劇・東宝・阪急ブレーブス・関西テレビ・・・鉄道事業と関連の深い不動産開発や百貨店経営のみならず、スポーツや芸能・芸術そして映画など、エンターテインメントの方面まで幅広いのが阪急系列の強み。二日目の朝に、そんな私鉄の一大ターミナルを見に来ました。大きな吹き抜けの通路が、真っ直ぐに続いている朝の6時。阪急32番街前の通路はまだ人気もまばらで、床面の格子模様が美しく見えている。その先が、阪急電車の梅田駅。

阪急の梅田駅は、1日約50万人が乗降する大阪キタの玄関口。神宝京各方面へ発着する10面9線のその圧倒的なスケール感、これが関西私鉄のターミナルだ!と言わんばかりの強烈な阪急の自意識を具現化した駅の姿である。それはまさに阪急帝国の象徴としての姿と言った感もあり。1から9まで路線ごとにずらりと並んだ行灯の下に、次々にしかし整然と到着する列車から吐き出される人波が、横に長い自動改札機のゲートを抜けて消えて行く。

おおかたの人の阪急の企業イメージは「頑固にトラディショナル」な統一感を持っているところじゃないかと思うのですが、その象徴として挙げられるのがこの阪急マルーンですよね。絶対的なイメージカラーとして全車がこの塗装で統一されていて、いつもピカピカに磨かれている。個人的には6000系や7000系辺りの顔つきがいかにも阪急だなあと感じますね。んで、阪急のMc先頭車はだいたい前パンが上がっているのがなおのことよい。

6000・7000系グループよりは若干前の世代になる5100・5300系グループ。スカートがないだけでなんだかふんわり優しい顔つきに見える不思議。この顔のグループでは先代に3000・3100系という名車がおりましたね。梅田のターミナルは乗車ホームと降車ホームが分かれていて導線がスッキリとしているのが良い。基本的に乗客はホーム先端の出口に向かうので、乗降客数の割にはホーム上に人が滞留する時間が少なく、その合間を縫っては清掃の作業員たちが常に床をピカピカに掃除している。この辺りの美意識も阪急イズムではなかろうか。

京都線系統の7300系。神宝線の7000系の京都線バージョン。京都線と言えば未だに2ドアの特急専用車であった6300系のイメージが強いのですけど、2010年に京都線の定期運用からは撤退済み。この日は平日なので、唯一残っている6300系の観光特急「京とれいん」の運行もありません。見たけりゃ嵐山線に行けってか。阪急の車両は更新や新造でシングルアームになっているのもありますけど、まだまだ下枠交差型になっているものも多くてそれもまたカッコいいですよね。関東私鉄には下枠交差型を使っているところは少ないですから(東武くらいか?)、余計に新鮮なんだよな。

京都線のホームを出て行く6300系の後継車である9300系。3ドアにはなりましたが、転換クロスシート装備車です。ほぼ京都線の優等種別限定の車両。個人的な感想になってしまうのだが、最近の阪急の車両は神戸線の1000系とかもそうだけど前面窓の縁取りを大きく上に伸ばしたせいで妙に表情が面長なのがあまり好きではない。ちなみに梅田駅を出て行く線路の真正面にあるビルが阪急の本社ビル。あそこから駅を眺めていたらさぞかし壮観であろう。

7時になったので、梅田駅に来ると恒例になりつつある1号線(京都線ホーム)上のカフェへ。ここから梅田駅の展望を楽しみながら、阪急電車が行き交う光景を眺めつつコーヒーを飲むのは至福の時。ただ、前は「Cafe LILAS(リラ)」というお店だったのだが、いつの間にかタリーズコーヒーに変わってしまっていて何だか味気ない。リラのモーニングのホットドッグのセットが美味かったのに。別に喫茶室からの展望が変わった訳でもないし、タリーズのコーヒーがまずいとかそーいうんじゃなくて、まあタリーズなら東京でも行けるでしょって事で(笑)。 

JRの大阪駅は、ホテルグランヴィア大阪を中心に「大阪ステーションシティ」なんつって大規模リニューアルを果たしましたけど、負けじと阪急も阪急百貨店の再建築や地上32階建ての梅田阪急ビル建設など相当な金額を投資しておりまして、大阪駅周辺の再開発事業の中で激しいつばぜり合いを繰り広げております。改めて今の大阪駅と阪急梅田駅を地上から見たけど、阪急に抜ける北口階段の脇で米長邦雄九段が詰将棋(大関将棋道場)の問題を出してくれていたあの大阪駅の風景は遠い昔なのでしょうねえ(笑)。これからは、旧梅田貨物駅の再開発(うめきた2期)なども控えている大阪駅周辺。巨艦JR西日本に対して挑む阪急阪神ホールディングスという図式は、これからも続きそうです。

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クイーンの終の棲家

2016年08月30日 22時22分04秒 | 阪急電鉄

(夏の古都、蒸暑の午後@阪急嵐山駅)

さてさて、長きに亘った富山のお話を少し巻き戻して、今度は7月の終わりのお話。京都の鉄道博物館に行って来た際、まあ旅行会社のツアーだったんで、嵐山で昼食を兼ねた自由散策の時間があったんですね。嵐山散策って言われたので最初は嵐電でも乗って来ようかと思ったんだが、そこまでの時間はない。嵐山公園の近くのメシ屋でメシを食って、じゃあ余った小一時間で何しましょうとなったのだが、そんな半端な時間を使ってクイーンにお会いして来ました。


はい、阪急のクイーンこと元京都線特急専用車両の6300系。去年のGWだったかな、梅田の駅で「京とれいん」として6連で働いている姿はお見受けしましたが、その他の残った編成は4連改造されて現在は嵐山線で桂~嵐山間の機織り運用に就いています。相変わらず前照灯の飾り帯がチャームポイントの、端正な気品あるお顔である。短編成化されても、2ドアでも、嵐山線程度の輸送量なら特段問題はないのでしょうね。


阪急らしい落ち着いたオリーブのモケットと、木目調の化粧板。嵐山線投入に際し、車内外ともリフォームされているのですが、あれ?と思った方は阪急電車にお詳しい方ですかね。阪急車の特徴とも言える日除けの鎧戸が普通のロールカーテンに変わっているではないですか…。あの鎧戸をガバッと下から引き上げるのが関西っぽいと勝手に思っていたんですけどねえ。あと、全部乗り通しても10分くらいの短区間運用ですから、クロスシート部分は縮小されてしまったようです。


嵐山から1つめの松尾大社までものの3分程度、つかの間のクイーンとの邂逅。なんせツアーの合間の自由行動だけにとんでもなく慌ただしい(笑)。それでも子供の頃からの憧れの関西私鉄の名車両に乗れたので満足だ。子供にも「これがお父さんが子供の頃の阪急の看板車輌だったんだよ!」と教えてあげたのだが、どうでしょうね。ほぼ私と同年代の車両でもあるんですが。


松尾大社は「お酒の神様」として酒造会社などから篤い信仰を得ており、1300年以上の歴史を持つ京都の歴史ある神社。嵐山への折り返しは6451編成、連結器回りがスッキリしていてさっき乗った編成よりも自分のイメージに近いです。現在6300系は嵐山線用に4連の3編成が残っているようなんだけど、4+4で手を組んで走る事とか出来るのかなあ。イベントとかでもいいから、8連で京都線を再び爆走するシーンを見てみたいもの。
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マルーン色のコーヒーブレイク

2015年08月29日 16時36分16秒 | 阪急電鉄

(「神戸」三宮駅駅名票@阪急神戸線)

神戸電鉄訪問を終え、三ノ宮のカプセルホテルに入り込んだのが23時前。さっさと寝ようと思ってカプセルにこもり電気を消したのだが、意外にも体は疲れてても神経が冴えてしまって眠れないもんですね。ってかカプセルはやはり静粛性と言う点では劣るので、他のお客さんの声なり足音なりが結構気になるものです。


夜中じゅうウツラウツラみたいな中途半端な状態なので、夜が明けたらとっととカプセルホテルを出てしまった。この日は大阪方面に向かう予定ですが、行きがけの駄賃と言う事で阪急電車も少し撮ってみようかと思ってたんよね。早朝の阪急三宮駅。JRは「三ノ宮」、地下鉄は「三宮」、阪急は「神戸三宮」と同じ場所にあってもその表現は三者三様です。阪急は、車内放送や案内表示でも「神戸三宮」「大阪梅田」「京都河原町」と駅名を分かりやすいように大きい地名を被せているというのが特徴的。

 

「阪急電車にご乗車ありがとうございます この電車は普通 大阪梅田行きです 西宮北口まで先に参ります…」阪急伝統の深い緑のモケットのシートに座り、高架駅の神戸三宮を離れると、しばらくJRと並走。王子公園の手前でJRと別れると六甲、そして御影に到着。ここで下車。六甲山系は花崗岩で出来た山で、切り出された花崗岩は古くから多くの建築物に利用されてきました。ここ神戸市東灘区の御影から切り出された花崗岩が「御影石」と言う事になります。


駅から歩いて10分弱、中学校の南側にある踏切が神戸本線でも有名な撮影地と言う事で立ち寄ってみた。正式名称を「有馬道踏切」と言うそうな。三宮方向から緩く上って来るSカーブで8両編成の車両がカチッと決まる構図は確かに!って感じがしますね。立ち位置如何では標識類を交わすことも出来るみたいですが、そうすると踏切を通行するクルマにちょっと邪魔になりそうだったので踏切の脇っちょから。アウェイですんで控えめにね(笑)。案外車通り多かったし。


阪急神戸線の梅田方は大抵の車両が前パン。昨日に引き続き前パン祭りです。モーター音も高らかにSカーブを走り抜ける神戸本線のエース7000系特急大阪梅田行き。貫通路に大きく振られた車体番号、赤い特急の方向幕。阪急はどの車両も塗装に関しては頑固一徹伝統のマルーン一色ですが、これぞトラディショナルというものでしょう。

  

基本的に同じ構図で撮るのみなので、やって来る車両をババババンと撮ってしまうだけなのですが、8000系と一口に言っても前面形状とかデザインとか事細かに違ってたりするので、ちょっとした間違い探しのよう。シングルアームに換装されてたり、車体番号の位置が違っていたり、前照灯がLEDに交換されていたり…自分にはそこまでこだわりはないけど、阪急マニアはここら辺の違いを掘り下げてあーだこーだ言うのが楽しいんでしょうねえw


エース7000系もリニューアル車になるとツラからして全然違ったりするのね。それにしても前照灯がLEDってのは正直写真映りが悪い。もう最近どこの会社も行き先表示をLEDにしてるから文字が映らないのも困りものだけど、前照灯までLEDにするこたないんじゃないかね。


阪急の車両と言えばグループ子会社であったアルナ工機で製造されるのが通例でありましたが、アルナ工機の鉄道車両製造からの撤退(軌道車輛のみ存続)に伴って日立製作所で製造されるようになったのがこの9000系。基本的には8000系の額縁デザインを踏襲しておりますが、ちょっと下がり眉の困り顔になってしまいました(笑)。このアルナ→日立と言う製造会社の遷移は、同じようにアルナを車両新製の主力会社としていた東武鉄道にも当てはまりますね。


現在の神宝線系統の最新車両である1000系。リラックマトレイン。9000系以降の日立車は、日立製作所の通勤型鉄道車両の基本製造技術である「A-train」として作成されています。Aトレってなんなんすか、って細かい説明はしないのだけども、アルミ板を細かい溶接で張り合わせて作っていた従来のアルミ車両と違い、箱型二重構造の鋼材を使う事によって溶接回数などを極端に減らし、劣化を防ぎ保守管理を容易にした車両って事です。関東でも西武のスマイルトレインとか東武の50000シリーズとかに導入されてますね。

 

有馬道踏切で小一時間ほど阪急撮りを楽しんだので、御影駅から大阪方面に移動。岡本から特急に乗り換えて西宮北口、十三を出ると神戸宝塚京都の3複線で淀川を渡り、大阪梅田のターミナルに到着します。普段使っている人にしてみたらどうってことない日常の風景かも知れないけど、10面9線の圧倒的なるターミナル感は関東もんにはすげえの一言でしかない。1号線から9号線までズラリと並ぶ出発信号機。広角16mmでもその全貌は抑える事は出来ません。東側から1~3号線が京都本線系統、4~6号線が宝塚本線系統、7~9号線が神戸本線系統のホームとなっております。


ひっきりなしに発着が行われるホームを歩き、その壮大さにいちいち驚きながら京都本線のホームに行くと、おおなんと憧れの阪急6300系が!京都本線筋の優等から引退し、現在は短編成化され嵐山線の折り返し運用の身になっている形式ですが、唯一6連化された編成が「京とれいん」として土休日ダイヤのみ大阪梅田と京都河原町を結ぶ観光快速特急として活躍しています。自分の阪急電車のイメージは、京都本線のクイーンとして運用されていたこの6300系なんだよなあ。車端のみの2ドア、尾灯の回りの銀帯飾り、オリーブモケットの転換クロスは「優等専用車」と言うプレミア感がありましたよね。


今度は京都本線用ホームの1号線から梅田駅の全景を撮ろうと試みるも…何だか広すぎて良く分からない写真になってしまった(笑)。そもそも全景と言われてもこっから9号線までは遠くて見えません。この広い広いホームの真上には、平成24年にリニューアルオープンした地上13階地下2階の阪急百貨店が聳え立っておりまして、さすが民鉄王・小林一三が仕上げた日本一の私鉄ターミナル駅である。


そんな阪急電車の大阪梅田駅を改札脇にある喫茶店「cafe LILAS」から眺める。店としては普通の喫茶店だが、窓際の席から梅田のターミナルの全容を見渡しながら飲むアイスコーヒーは至高。ここいっぺん来てみたかったんだよなあ。朝食代わりに頼んだホットドッグもウインナーがパリパリしていて美味。時間があれば1~2時間くらいは平気でここで時間潰せそうだわ(笑)。
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