青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

人にやさしく 夏の越前・私鉄旅その5

2014年08月30日 22時49分28秒 | 福井鉄道

(公共交通を使いましょう@北府駅)

北府駅待合室のベンチに置かれていたクッション。「丹南広域公共交通機関活性化協議会」サマのご贈呈のようですが、どこの地方鉄道も不況・過疎化・少子高齢化で厳しくなってる中、色んな地方鉄道の沿線で「活性化協議会」が結成されているのを見聞きします。一口に「活性化協議会」と言っても色々で、社交辞令的と言うか最終的に廃線への引導を渡す死神役みたいな協議会もあったりしますが(「活性化協議会作ってアレコレやったけどダメだから廃線ね」みたいな)、概ね福井鉄道沿線の行政的支援は活発な印象を受けます。

 

越前武生駅から武生市街の路地を傘さして歩く事10分、北府駅に到着。旧名は西武生駅と言い、福鉄の車庫および工場がある心臓部でもあります。以前はいい雰囲気の草枯れた古い木造の駅舎が建っていたらしいのですが、最近以前のイメージを残したまま新しい木造の駅舎に生まれ変わりました。これも沿線の行政支援の賜物なのかもしれません。福井鉄道は平成19年に財務内容の悪化による銀行融資の凍結により自主再建を断念しており、主要株主だった名鉄から沿線各市(福井市・鯖江市・越前市)および福井鯖江の各商工会その他公的機関が株式を引き取った上で、現在は実質三セクみたいな形で再建の途上にあります。要するに公共交通を私企業に任せてたら立ち行かなくなっちゃったから公的資金ぶっ込んで、昔からの株主に手を引いて貰った上で行政が支援していると言うよくある構造なのですが、どのみちこれからの地方鉄道は大半が公的支援がないとどうにもならないとは思う。支援されなければトワカンみたいに廃止になるだけなんだよな。残酷だけど。

    

当時の雰囲気を残したまま新装開店した北府駅には福井鉄道の資料館的なスペースが設置されていて、そのヒストリーや昔の急行札やサボ、廃止された南越線や鯖浦線のキップなんかが展示されています。しかし南越線とか鯖浦線ってのはとても鉄道を通すほどの需要がある地域を走っていたとは思えないのだが、そこはやはり気候の厳しい裏日本、国鉄から離れた街には冬場の交通・物流の手段としての鉄道が渇望されていたのかなと。それにしても南越線の駅名と言ったら「社武生」「五分市」「岡本新」とかいちいち渋くてたまんないっすねw

  

雨に濡れる北府駅ホーム。武生に向かって大きく左カーブした途中にあり、ホームも湾曲しています。奥に見えるのは旧西武生工場、今は北府工場って事でいいのかな?建て直された新しい検修庫の横には電気機関車のデキ3と600型、200型のトップナンバー201編成が留置されておりました。201編成に関しては連接台車を外され編成を解かれており、アーチバーのくっそ古い仮台車を履かされて静かに雨に濡れております。噂では201編成はお鉄用語で「落ちた」らしいのだが、連接面をブルーシートで巻かれた姿を見ていると確かにそうなのかなと思わざるを得ないちょいと悲しい状態。デキ3は福井鉄道唯一の凸型電機ですが、現在は本線を走る事はなく工場内の入換が主な役割だとか。600型は東山線から移籍した610型の単行用両運転台バージョンなのだが、高床車はなるべく動かしたくないし、かと言って単行は800型で間に合ってるしみたいな中途半端な状態で、貸し切りのイベント用に使われる程度の存在らしい。

 

武生行きホームから北府駅の駅舎を。駅の近くに県立高校があるようで、日中の駅の利用者はほとんどが高校生。いつでもどこでも、地方鉄道の大事なお客様はクルマを使わない学生さんですね。三々五々にホームに集まる高校生の声でちょっと賑やかになったホームにやって来た800型。

   

北府は旅客上は無人駅ですが、工場と留置線のある運転上の要衝ですから、越前武生から車両交換で回送電車が引き上げてきたり、検修庫に工場担当の従業員が向かったりと人の動きがある駅です。福井方面の本線を逆走して留置線に引き上げる回送列車、留置線からさらに検修庫へ転線するために転轍機を回す姿なんかをぼんやり見ていると、時間なんかすぐに経ってしまうな。


さっき武生に向かって行った770型が武生到着後すぐ回送で戻って来てしまったので、そうなると次の福井方面の電車は当然武生の3番線で待っていた200型になる。カーブに車体を揺らしながら北府駅へ入線する200型、どうやら今日は終日運用に入ってくれるみたい。これに乗って北府駅を後にすることにしましょう。

結局なんだかんだで1時間くらい滞在してしまったな。
200型のボックスシートに腰を下ろすと、ようやく腹が減った事に気が付いた(笑)。
次回へ続く。
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名車は姿で歴史を語る 夏の越前・私鉄旅その4

2014年08月29日 09時20分22秒 | 福井鉄道

(在りし日の…@北府駅資料館)

北府駅の資料館に展示してあった福井鉄道路線図。平成5年まではこの形でしたが、現在は駅名も変わり駅の数も大幅に増加しています。福井鉄道から枝葉のように伸びているのは福鉄のバス路線ですが、路線図にある鯖浦(せいほう)線や南越(なんえつ)線は以前福井鉄道の支線であったのがバス転換されたもので、鉄道路線としては昭和40年代後半に廃止されてしまいました。北陸地方にはこんな感じの地方鉄道のローカルな支線がいーっぱいあって、ちょっと昔の鉄道路線図を見ればそれこそ北陸本線の小駅からちょこちょこと色んな場所に電車が走っていた事が見て取れます。

 

さて、市役所前で200型を待っていると、ほどなく福井駅前を折り返して越前武生行きがやって来ました。ヒゲ線から戻って来た電車は、一度田原町行きのホームに引き上げてから渡り線を使って武生方面行のホームに入線します。駅前立ち寄り便は田原町→市役所前→福井駅前→市役所前→武生方面とルートを取るので、何度も何度も進行方向を変えるたびに運転士さんは行ったり来たりしなきゃならんのが結構大変そう。ちなみに運転士さんが立ってるのは「エンド交換ばっかで座るのも面倒だからねえ」と言う訳ではなく、目線を上げる事による安全確認のためでしょう。特にヒゲ線区間周辺では立ち乗りやってる運転士さん多かったのでね。

  

昼前に降り出した雨、武生方面行の電車は乗客もまばらで、2両編成の後方のボックスシートを陣取ってまずは車内を眺めてみる。昭和30年代後半に福井鉄道の急行用車両として作成された矜持は、まずシンプルに並べられたクロスシートと背もたれの白いビニールカバーに十分に表現されているような気がしますね。この「背もたれのビニールカバー」ってのは、何と言うか当時ならではの「よそ行きの高級感」を演出するアイテムであったんだろうな。そこらへんは同時期に同じ日車で作られた長電2000系の車内を見れば分かっていただけるかと思うのですが、メカニカルかつコンパクトな運転席回りもアナログ感バリバリで、タテ型のマスコンからは電車なんだけど路面電車っぽくもある200型の二面性を感じる事が出来ます。


比較事例として以前撮影した長電2000系D編成の車内をアップしてみる。こっちは車体の真ん中を頂点とした集団お見合いクロスシートだったけど、網棚の感じとかシートの雰囲気とか本当によく似ていると思いませんか?(笑)。外見からしても湘南二枚窓と屋根から前面にかけての丸みを帯びた落とし込みや一灯の前照灯など共通項が多く、これらはいわゆる高度成長期の日車型イズムみたいなもんなんでしょうか。

  

雨の中を走り出した電車は、公園前、木田四ツ辻と軌道部分を抜け鉄道線内に入り赤十字前。ショッピングセンターのあるベル前、江端、清明と住宅街を走り、ハーモニーホールからやや風景は田園地帯のそれに変わります。浅水を抜けて泰澄の里、三十八社は完全に田園の中で、左手に靄のかかったような低い山並みを見ながら走ると浅水川を渡って右カーブの先に鳥羽中。神明からは鯖江市の住宅街の中に分け入り水落、西山公園からは長泉寺山のすそ野を縫って緑の中を走ると西鯖江で交換のため暫し停車。雨に濡れしっとりとした200型急行色の独特の深緑が艶めかしく、停車している間のコココココ…と言うコンプレッサーの音もまた心地良いですなあ。

  

西鯖江を出るとサンドーム西から日野川を渡って家久。スポーツ公園からは武生の市街に入り、大きく左にカーブして車両基地のある北府(きたご)を出ると家並みの中を今度は右に急旋回して、北陸本線が近付くと終点の越前武生に到着。市役所前から約50分の旅を200型と共に堪能。越前武生は中線を挟んだ2面3線のホームがあり、木製のY字型をした上屋がちょっとレトロな、郊外電車の始発駅然とした端正な駅でもあります。

  

越前武生駅は終着駅らしく電車が到着すると降車客を追い出して改札を締め切ってしまうので、改札の外から乗って来た200型のサイドビューを改めてじっくりと。この福鉄急行色である203編成は3編成ある200型の中でも一番若い昭和37年製、連接車のためなのか武生側から203-1・203-2と言う車体番号が振られています。2両連接なので台車は3つ、そのうち車端部の2つは…ほほお、国鉄の戦後の代表的な台車と言っても過言ではないDT21なんですね。いわゆる101系に代表されるような国電型のコイルバネ台車。連接台車は外釣りのコイルバネに横に突き出したダンパーがある独特な形状ですな。全検は24年7月に西武生(現在の北府ですね)の工場で受けた旨が記されてますが、果たして次の全検があるのかどうか…?

 

そして越前武生の側線には203の兄貴分である202編成(新福鉄色)が留置されておりましたが、こちらはパン下げして動く気配なし。ムムム。結局福井にいた二日間では一回も動かなかった様子ですが、贅沢言っちゃうとこっちが動いてるところも見たかったなあ。別に運用を外れてる訳でもなさそうでしたが、夏休みだし、FUKURAMとかが入っちゃってると200型は2編成も運用に入れる必要はないのかもしれません。


203の車内に輝く「日本車輌會社 昭和37年」のエンブレム。現在は「日本車輌製造」が正式名称ですが、この形式が生まれたのは201・202編成が昭和35年、203編成が昭和37年なんですが、当時はまだ現在の日車の拠点である豊川工場もなかった頃のお話。登場からここまで足かけ50余年、200型は福鉄を代表するクルマとして嶺北の地に君臨して来ましたが、今後は毎年FUKURAMが増備される事が内定しており、おそらくここ1~2年で姿を消すものと思われます。こんな雰囲気のある地方鉄道の名車がなくなってしまうのは勿体ないのだけど、経年劣化もさることながらあの乗降用の高いステップはバリアフリーの時代に沿っているとは言いがたいものがあり、仕方ない事なのでしょう。

名車は姿で歴史を語る。
見るなら、乗るなら、撮るなら今だよ200型。
次回へ続く。
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現れた昼時の古豪 夏の越前・私鉄旅その3

2014年08月27日 22時58分25秒 | 福井鉄道

(湯・食・乗の三位一体@福井鉄道「電車DE温泉券」)

福井鉄道では、土日はフリーきっぷを発売しておるのですが基本的に平日の適用はありません。そのため、今回アタクシが利用したのがこの「電車DE温泉券」。わざわざ「DE」なんて付けてるのは最近だとフォークダンスDE成子坂くらいしか知りませんが、一日フリーきっぷに神明駅近くにある「三六温泉神明苑」のご入浴&ランチ券が付いていて1,500円。フリーきっぷが500円、入湯料が500円に700円分の食事券が付いていると思えばコスパはまあまあじゃないでしょうか。夜行バスに揺られて来た身としては、温泉でさっぱり&ゆったり昼食ってのにも惹かれるものがありますw


さて、新木田の交差点での撮影を終え、徒歩でぽくぽくと歩いて赤十字前駅までやって来ました。田原町方面からは鉄道線になって最初の駅で、以前は「福井新」と名乗っておりました。この「○○新」と言うちょっと変わった駅名の付け方は福井鉄道の特徴でして、以前は越前武生も「武生新」という名前でした。新武生、新福井じゃないあたりに福鉄の妙なコダワリが感じられたものです。ちなみにえちぜん鉄道には「新福井」駅がありますが、えち鉄の新福井の方が後発の駅名なんですよね。


福井新時代から福井鉄道の福井側の主幹駅として駅員が配置されており、わざわざここまで歩いて来たのは上記の「電車DE温泉券」を買うためでもありました(有人駅じゃないと売ってないんですよね)。学校出たばっかみたいな若いあんちゃんの一人勤務でしたが、電車DE温泉券みたいな企画きっぷを求める人はあまりいないらしく発券に手間取っていたのが印象的(笑)。まー自分もバイト新米時代「しし鍋いで湯クーポン下さい」とか窓口でいきなり言われて往生したことがあったなあw

 

赤十字前駅の東側には保守用車両の側線がありまして、保線車両やバラスト散布用のホキに混じって止まっているのはデキ11。製造は大正12年と言う事で御年92歳!元々は電気機関車ではなく電動貨車として製造されたため、有蓋貨車にカオがついたような独特のフォルムをしとります。現在はご覧のように雪かき用のアタッチメントを付け、排雪用の車両として使われているとの事。主に軌道部分の排雪作業に従事していますが、軌道の走る県道(フェニックス通り)に消雪パイプが付いたせいで最近は冬場でもあまり出番はないらしい。黄色のクチバシに緑の体、つぶらな瞳は公園の池にいるマガモみたいだよね(笑)。

  

武生方、田原町方、どっちに行っても良かったのだが、先に駅前経由の田原町行きが来たので乗車。美濃町線の880型は、木田四ツ辻から軌道線上に出ると、公園口を過ぎて足羽川にかかる橋を渡り、市役所前で折り返してあっという間に福井駅前に到着。朝から何も食ってないので猛烈に腹が減り、福井駅コンコースの立ち食いそば屋で遅めの朝食。駅のコインロッカーに余分な荷物をブチ込み、少し身軽になって再度福鉄の旅に戻ります。

  

時間があったので市役所前駅まで歩き、ヒゲ線を折り返して来た田原町行き880型に乗車。軌道の上をゴロゴロと走り、市役所前から仁愛女子高校を経由し、田原町までは6~7分と言ったところ。市役所前から田原町までは通学時間でもなきゃ乗客数は大したことがないようで…しかしこの美濃町880型のイスと言ったら、プラスチックのベンチの上に申し訳程度のクッションをつけただけでちょっと長くは乗ってらんないシロモノだよなあ。痔持ちの福鉄ユーザーには地獄。そして朝はあんなに晴れて暑かったのに、ここに来てにわかに掻き曇り雨が降って来ました。マジかよ。夏休みの補習帰りか福井のJKも相合傘。

  

福井鉄道の北の玄関口・田原町駅。ここでえちぜん鉄道の三国芦原線と接続をしてるんですが、福井県の総合交通計画の中で今後ここ田原町からえち鉄三国芦原線の鷲塚針原駅までを両者の相互乗り入れ区間とする事が決定しております。そのため、現在福鉄側の田原町駅は相互乗り入れのための改修工事により仮ホームでの営業となっとりまして、駅の奥でえちぜん鉄道と接続すべく絶賛工事中なのであります。それにしてもこの整備計画書類、結構読みごたえがあってなんか本気度が伝わって来ますね。


そしてこちらが現在のえちぜん鉄道田原町駅。正直大風が吹いたら吹き飛んでしまいそうな、お世辞にもきれいとは言えないトタン屋根の駅舎。まあここも今度来ることがあるとしたらキレイな駅舎に生まれ変わっている事でしょう。雨が強くなって来たので長居は無用、折り返しの越前武生行に乗って戻ることに致しましょう。


田原町からの返しの越前武生行きは先ほどに増して閑散として、雨の降り出した福井市街を走り始めた。誰も乗る人のいない仁愛女子高前を過ぎ、電車が市役所前に差し掛かろうとする頃、窓の外を田原町へ向けてすれ違う対向の電車が見えまして、それは驚くなかれなんと朝ラッシュ運用で出番終了だと思っていた200型!え~?今日は日中の運用にも入ってるの!?


全く降りるつもりのなかった市役所前で緊急下車、さすがに田原町まで行ってから折り返しが回送って事はないだろうからこれは嬉しい誤算。一本落としても後続の200型に乗った方がいいでしょう!いやそうするべきだ!と鼻息荒く待ち構えていると、雨に濡れたフェニックス通りの向こうから200型が市役所前に到着。まずはそのお姿を改めて堪能。この電車は駅前のヒゲ線立ち寄り便ですから、またこの市役所前に戻って来るんで、ここで待ってから乗ってみる事にすっか。

いや~、運用数少ないから乗れるとは思ってなかった200型。これで福鉄を全線完乗する事に決定ですね。
予定では神明で降りて早目に風呂とメシしてゆっくりしよっかななんて思ってたんだが、当然全却下だよw
次回へ続く。
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朝の福鉄ラッシュアワー 夏の越前・私鉄旅その2

2014年08月26日 22時20分31秒 | 福井鉄道

(鉄軌分界点@新木田交差点)

と言う訳で鉄道線と軌道線の境目にあたるこの新木田交差点に座を構え、朝のラッシュ時間に投入される福鉄オールスターズをガッツリと撮ってみようって事になりました。予報では曇り時々雨くらいの天気だったはずなんだが、大きく外れてこの日の福井地方は朝から夏の日差しがジリジリと肌を刺す好天。思わずアタマにタオルをかぶって路地に佇む姿はちょっと不審者として通報されても文句は言えないのだが(笑)、なりふりは構っていられません。それでは、時間を追って9時までのチャンスタイム!行ってみましょう。


(7:16 普通田原町行 880型)

鉄軌分界点をゆるりと回って軌道線に進入して来るのは元名鉄の美濃町線で使われていた880型。名鉄時代にもモ880型として使用されてましたが、平成17年の名鉄による岐阜市内線および美濃町線の一斉廃止に伴って大量の路面電車タイプの車両が役割を失いました。福井鉄道は長年に亘って大株主だった名鉄との関係が深い事もあって、廃線により行き場のなくなった車両の中で比較的車齢が若かったものをまとめて導入。当時の旧型車の置き換えと車体の低床化(いわゆるLRT化)を果たしたのですが、この880型と770型はかなりまとまった数が導入されたので、現在の福鉄線では最もポピュラーな車両なのかな。

 

(7:36 急行田原町行 610型)

この610型は元々名古屋の地下鉄(東山線)で走っていた車両。ラッシュ時には収容人員の大きい高床車と呼ばれる普通鉄道型の車両が投入されるんだけど、同じ高床車である200型に比べクローズアップされることは少ない縁の下の力持ち。名古屋地下鉄時代は第三軌条方式の集電方式でしたが、福鉄へ転入するにあたってドアを3つ→2つに減らし、15m少々と小さな車体に大きなパンタグラフを掲げ颯爽と走っております。福井鉄道の高床車は昔から鉄格子のような大きな排障器を付けているのが特徴なのだけど、この車両にも伝統はしっかりと受け継がれておりますね。朝夕に走る福鉄の急行電車は先行の列車を追い越すことはしませんが、鉄道線部分では結構ビュンビュンとかっ飛ばして爽快な走りを見せてくれますw

 

(7:50 普通田原町行 F1000型「FUKURAM」)

北陸では富山ライトレールを皮切りに、地方鉄道を都市交通のツールの一つとして見直して行く動きが顕著な訳ですが、ここ福井でも市内中心部へ乗り入れている福井鉄道をLRT化(Light Rail Transit)して活性化して行こうと言う動きが盛り上がっております。そのシンボル的な車両として昨年導入されたのがこのF1000型「FUKURAM」。鮮やかなオレンジ色のスタイリッシュな出で立ちは、長野のフリーザ様こと「485系・彩」のような特徴的なアイラインを含めて実に目立つ(笑)。日本のLRT車両のトップメーカーである新潟トランシス謹製で、バリアフリー対応の超低床型車両はなるほど床面が地面スレスレ。北陸では富山ライトレール、富山地方鉄道、万葉線に続く4社目のLRT車両導入で、何だか北陸の私鉄ってのは元気があるなあって感じですね。

 

(8:03 普通田原町行 200型)

そしてとうとうやって来ました福鉄200型!いや~7時台の電車に入ってなかったから来るかどうか心配でやきもきしてましたよ(笑)。さすがに踏切のカーブの向こうからその姿が見えた時には「きたぁ~!」って口に出してしまったんだが今思えばちょっとこっ恥ずかしいな。ちょっと角度のある湘南二枚窓、プレスドアの下に換装された大きな乗降用ステップ、そして何より旧時代の福井鉄道の急行色である深緑とアイボリーの落ち着いた配色!前面にプリントされた旧字体の「福鉄」エンブレムと、横に広がる翼模様に大きな排障器のいかめしさ。福鉄のトラディショナルここにあり!って感じの古兵が、新木田の交差点を悠然と市役所前方面に向け進入して行くその姿、シャッターを押す指もいささか落ち着きませんw



(8:08 普通神明行 610型)

先ほど急行で田原町に向かって行った610型が、今度は神明行の普通で戻って来ました。朝のラッシュアワーが中心となる高床車は、ラッシュ運用が終わると途中駅の神明まで引き上げて一休みする運用があるようです。あくまでレギュラーは美濃町グループって事なのかな。福鉄の車両はほぼ武生側にパンを付けているようで、さっきの写真に比べると勇ましさが2割増しと言う感じですな。


(8:22 回送 F1000型「FUKURAM」)

と言う事で朝の福井方面へ客を送り込んだFUKURAMも、客扱いをせずに回送表示で戻って参りました。朝は福井駅前・田原町方面へ向かっての流動が圧倒的に多いからなんでしょうが、ちょっと勿体ない感じもしますね。順光に鮮やかなオレンジ色がペッカペカ。ちなみに福井鉄道生え抜きの車両としては初めて2014年の鉄道友の会ローレル賞に輝きました。


(8:39 普通越前武生行 200型)

200型が田原町から折り返し、今度は越前武生方面へ。新木田の交差点を大きな音を立てて曲がって行く200型、インカーブ気味にベッタベタの順光で押さえる事が出来てとりあえず満足ですじゃ。交差点を斜めに横切って軌道線へ入って行くので、電車が動いている時は北側と西側の2方向のクルマの動きがなくなるんよね。少なくともこの交差点の東側から構えれば、クルマに邪魔されずにじっくりとそのお姿を楽しむ事が出来ますw



(8:39 急行福井駅前行 800型)

これも名鉄美濃町グループの800型。伊予鉄道とかに同じ形の路面電車がいたような気がするな。VVVFインバータ制御、特殊低床型と言われる真ん中の乗降口を底にしたすり鉢型の床面が特徴で、平成12年の導入当時はその先進性にローレル賞までいただいちゃった立派な車両です。って福井鉄道ってローレル賞受賞車が2形式もいる事になるのね。まあこんな意欲作を導入しておきながら、5年で路面電車を全廃しちゃうと言う名鉄のその当時の経営方針もいかがなもんかって気はするが…ともかくスペックは高い車両なんで、福井鉄道以外に豊橋鉄道にも貰われて行ってまして、一両も廃車にならずしっかり現役なのはまだ救われるけどね。


(8:54 普通田原町行 770型)

名鉄美濃町グループ最後のご紹介、770型の普通田原町行。880型より番号が若いのに、製造年度は770型の方が後なのは何でなんだろうか。いずれにしろこの2形式は兄弟車みたいなもんなんで、外見上の違いと言うのはあまりありません。770型の方が見た目少し腰高でシュッとスマートに見えますけど、まあマニア以外なら気が付かないレベルでw一番違うのは内装なんだけど、またその話は後日。

夏の日差しに焙られながら、朝の福鉄ラッシュアワーを撮ってみましたが、時間も9時に近付いてそろそろお開きの時間が来たよう。一通りの車両も見れたし、こちらもちょっと一休みして、今度は乗り鉄しながら沿線を巡ってみようかなと思います。
次回へ続く。
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路面電車って難しい 夏の越前・私鉄旅その1

2014年08月25日 18時11分57秒 | 福井鉄道

(夜行高速バス藤沢~金沢線@横浜駅西口)

話は木曜日の夜に戻りますが、今回の遠征については夜行バスを使いました。調べたら朝イチの新幹線使っても福井に着くのは10時過ぎくらいになっちゃうんで、これじゃあ200型の朝運用にゃとても間に合わないなあって思ったのでね。夜行バスなんて久々過ぎて前回いつ乗ったのか記憶にもない。アタクシを福井までエスコートしてくれたのは北陸鉄道バスの藤沢~金沢線。江ノ電バスと共同運行をしとりまして、終着の金沢まで直行せずに福井駅前、小松、松任と細かく刻んでくれるのがありがたいです。久々の夜行バスは3列独立シート、狭いながらもカーテンで間仕切り出来るのである程度のプライベートが確保出来るのと、一応念入りに一杯引っ掛けてたせいかある程度は眠れました。ちょこちょこ目は覚めたけど、気付いたら北陸道の今庄辺りだったからね。

  

とりあえず予定通りに早朝の福井駅前に放り投げられました。福井って東尋坊と三国競艇しか行った事がないロクデナシですが(笑)、県庁所在地としての福井駅はまあ立派なもの。隣にはご丁寧に北陸新幹線用のホームまで準備しているようですが、実際福井まで来るのっていつになんのかね、などと考えつつコンコースを通り抜け、バスが着いたのとは反対側の西口に出てみます。こんなに早く福井駅前に着いたのも、まずは朝の福鉄の運用を確認したかったからなんでねえ。西口駅前の少し外れにある福鉄の福井駅前駅。朝早いから誰もおりませんけれど、初めて訪問する鉄道とのファーストコンタクトってのはいつもウキウキするものです(笑)。


福井鉄道線は、田原町~越前武生間の本線部分と、途中の市役所前からここ福井駅前へ向かう通称「ヒゲ線」と言われる支線があります。路線バスとかで、街道を真っ直ぐ走りゃいいのに、駅前通りをわざわざ1往復して駅前に立ち寄って行くルートってあると思うんだけど、あんな感じで福井鉄道の電車もヒゲ線を使って福井駅前にたいていの電車が立ち寄って行くんだよね。お客の利便性を考えたら当然かなあと思いますが、まあこのヒゲ線に絡んだ運用についてはなかなかトリッキーで面白いので別項で。

  

多分この界隈が福井県内で一番の繁華街なんですかね。LOFTとか西武があるあたり池袋ですか?とムリヤリ福井をアゲてみるのだが、朝早過ぎて早起きのじーちゃんがチャリンコ漕いでる姿くらいしか見ませんでした(笑)。まだ始発の電車も来ない時間。始発は田原町から福井駅前を通らず越前武生へ直行してしまうので、てくてく歩きながら市役所前の電停まで出て来ました。駅前から市役所前までは徒歩でも5分くらいのもの。「大名町」と言う大きな交差点に面した位置にある市役所前電停、大きくカーブして北陸銀行のある路地へ向かって行くのがヒゲ線です。朝イチの電車から200型が入っていたらどうしようと期待に胸を踊らせていたのですが、やって来たのは元名鉄の美濃町線車両770型でした。

  

さて。これから朝のラッシュ時間帯を迎えて電車の本数も増加して来るので、どこらへんで撮るのが良いのかねえ~と考えつつロケハン。市役所前の電停にいれば福井駅前からの折り返しも、武生・田原町両方面の電車の行き来も効率よく収める事が出来そうなのだが、思った以上に天気が良くビル影に沈む市役所前ではちょっと撮り辛い。加えて軌道線は道路の真ん中を走っているもんだから、道路際の歩道から撮ろうと思うとクルマが容赦なく構図に飛び込んでくる(笑)。市役所前から一個歩いて隣の公園口電停まで行ってみたが、まあ平均台のような狭い安全地帯でとても駅撮りなんて出来る感じじゃない。路面電車って撮り慣れてないからどう撮ったらいいのか…と思案しているうちに、朝のラッシュ時間が始まって武生方面から電車がやって来た。うん、クルマがいなきゃこんな感じで撮れるんですけど、これも手前の信号が赤だからクルマが構図に入って来ないだけで実際はヒヤヒヤもんなんですよw

  

時刻は7時を回り、刻々と道路のクルマの数が増えて来る。結局ピンとくる場所が見当たらず、鉄道線と軌道部分の境目である新木田交差点まで歩いて来てしまった。この交差点から福鉄線はいわゆる普通の鉄道線になって武生方面へ向かって行くわけでありますが、南北に大きな道路が交わる交差点なので光の入りが良いのと、ほぼ同じ位置から鉄道線部分の小さなストレートと、軌道部分の交差点を曲がるインカーブっぽい構図をダブルで狙える事、またすぐ近くに踏切があって警報機が鳴る(要するに電車が来るのが分かりやすい)と言う3つのポイントでここに座を構える事を決めましたw

福井鉄道の朝ラッシュは7~8時までで約8往復の列車が設定されており、ここにいれば今日の運用はだいたい把握出来るはず。
果たして、200型は入ってくれるんだろうか。
まったく、こんなカネと時間かけて200型撮れなかったら東尋坊へ逝って来るしかないねw
次回へ続く。
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