青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

五十里湖に 染まり切らずに 葉は落ちて。

2023年11月30日 23時00分00秒 | 野岩鉄道・会津鉄道

(五十里、秋深、陰陽。@中三依温泉~湯西川温泉間)

冬枯れも近しと思しき野岩鉄道の秋。令和2年の秋に来て以来、3年ぶりの訪問となりました。およそ半月も経たないインターバルで、再び栃木県くんだりまで出かけてった訳ですが、秋になると色付いた山々を目当てに群馬とか栃木方面に行くってのはルーティンワークになりつつありますね。さてさて、今年の紅葉の色付きはいかばかりか、と夜更けの新4号国道をひた走り、五十里湖の八汐大橋に陣取ったのが朝7時。どうやら今年の紅葉、夏が暑すぎて葉の傷みがひどく、あまりいい感じの色付きでもないというのは事前に聞いてはいたんですよね。色付く前に散ってしまうか、上手く染まらず茶色に枯れるかの傾向にあって、どうにも「錦秋」という雰囲気には程遠い・・・という感じでしたねえ。そもそも、11月の中旬にも差し掛かろうとする時期、川治の温泉街より上は少し見頃を過ぎていたかもしれない。山の色付きは、少しの標高と陽当たりで、大きく変わってしまうものだ。冷たい風が枯葉交じりに吹き抜ける五十里湖の橋の上は、さすがに手がかじかむ寒さ。手っ取り早く橋の歩道に三脚を立て、列車の接近まではクルマの中でウトウト仮眠の人となるのであった。

温暖化は日本から着実に四季を奪っていて、春が短く夏が長く、秋が短く冬が早い。すっかり「二季」の国となった僅かな秋、朝陽の中、五十里湖の大鉄橋に飛び出した61102F。東武20400系の投入により全廃された東武6050系ですが、野岩鉄道持ちの3編成のうち2編成が廃車を免れ、線内の普通列車運用を支えるために奇跡的に残されています。61103Fのほうはクラウドファンディングで修繕中ということですが、この2編成が、ノーマルな形で残された東武6050系最後のグループとなります。秋の一日、野岩鉄道に僅かに残った、私鉄急行型の末裔を追います。

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「街」のグランドデザインを考える。

2023年11月26日 10時00分00秒 | 宇都宮ライトレール

(秋の日の午後、鬼怒通り@峰電停)

ジャンボ餃子定食を美味しくいただいた親子二人、再びライトレールに乗って宇都宮の街へ。駅へ向かう地元民らしい高校生の姿。鉄道マニアだけでなく、こういう人たちが乗ってこその新設LRTである。この鬼怒通り、沿道のお店がLRTの開業に合わせて再開発されていて、新しいお店やマンションが多く活気がある。ライトレール沿線のゆいの杜地区と同様、再開発の進む駅東口地区に若い世代の流入が進めば、さらなる街の活性化に期待が持てます。宇都宮ライトレールの沿線のコア層は、ゆいの杜地区に居住するファミリー層や工業団地へ通う労働者層と、今まではあまりクローズアップされなかった宇都宮駅東側の住民たち。今まではクルマかバス以外の移動の選択肢がなかったところに、駅周辺の商業地域との回遊ルートを提供したことには大きな意味があります。

午後の宇都宮駅東口電停。暖かな陽だまりの中、駅前広場を回り込みながら、高根沢工業団地行きが発車していく。この駅前広場には「宮みらい」という名前が付けられた新しい商業施設が併設されているのだが、宮みらいの利用者とLRTの利用者で午後になっても賑わいは衰えず・・・駅前広場の階段で語らう人々と、ほんのり色付いた街路樹と、広場で開かれている小さなマルシェ。穏やかに過ぎる、宇都宮の秋ですね。

宇都宮ライトレールは、開業から82日で早くも乗客100万人を突破。8月24日からの開業3ヶ月でおよそ119万人の利用が見込まれていて、開業からの祝賀ムードが一段落しても、平日を中心にした定期券利用者が伸びて利用を下支えするなど、極めて順調な滑り出しを見せているようです(下野新聞より)。宇都宮のLRTについては、構想30年、総事業費も680億円余(うち宇都宮市が600億円)と、地方都市が抱える公共事業としては莫大な予算と時間を擁して作り上げられたものなので、関係者の皆様もほっと胸を撫で下ろしているのではないでしょうか。LRTによって宇都宮駅周辺の商業圏と、県のテクノポリス計画に基づいた工業団地群と、これに付随した新興住宅地域をうまく結節させたこと。けっこう地方の議員さんの中には、宇都宮の例を見て、すぐに「〇〇市にもLRTを導入すれば旧市街地は活性化する!」みたいな安易な「LRT万能論」みたいなイシューをぶち上げる人が多いのですが、順調な滑り出しに結びつけられたのも、LRTを導入する以前からの綿密な都市計画の賜物なのだなということが、実際に乗車してみると分かります。「そもそも」のその地域が持つポテンシャルだったり、下ごしらえが出来てなきゃ、やみくもにLRTを導入したって意味はないですよね。

ライトレールの好調さに、早くも「宇都宮駅西口方面への延伸を!」という前のめりな意見も多数あるそうです。東口から西口へはJR線と新幹線の間を越える非常に大きな跨線橋を作らねばならず、相応に費用と時間のかかりそうな話ではありますが、まずは東口から清原地区と芳賀・高根沢工業団地方面方面に軌道を敷設したのは大正解だったのでしょうね。JR駅~東武駅にある旧来の商圏にライトレールを持ち込んでも、東武電車とバスを利用していた層がLRTに遷移するだけで、新たな需要は生まれなかったかも。LRTは少子高齢化と過疎化による市街地の衰退化を食い止める特効薬ではないので・・・

それでも、理想とすべき「軌道事業の導入による新しい街のカタチ」が国内で具現化されていること、非常に頼もしく思いますよね。
LRTは、本気で街づくりを考えるためのツールの一つ。輝くも輝かないも、綿密な都市計画ありきなのだと思います。

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宇都宮の、美味しい生活。

2023年11月24日 17時00分00秒 | 宇都宮ライトレール

(おいしいライトレール@峰電停)

飛山城跡から鬼怒川を渡り、再び宇都宮の市街に戻って来ました。時間はお昼を少し過ぎたあたり、朝早く出て来た息子もそろそろお腹が空いている。宇都宮でメシということになると、そりゃあなんたって名物の餃子になるに決まっている。まあ何のひねりもない実に観光客っぽい行動なのだが、おそらくライトラインに乗りに来る人々も、往復乗車&街歩き&餃子というコンボで攻めに来る人が相当多いだろうということでご容赦願いたい(笑)。宇都宮の餃子屋さん、お手軽に済ませるなら駅ビルの中に「来らっせ」という餃子屋さんが何店舗か固まったフードコート的なものがあるのだけど、それじゃあさすがに面白くない。折角なら、ライトレール沿いに餃子屋がないかなあ・・・と思って探していたら、ありました。峰電停の真正面、「びっくり餃子・中華トントン」。

軌道が敷かれた鬼怒通りに面した新しいお店。店自体は昔からあるようなのだが、鬼怒通りの拡幅に伴って建て直されたものと思われる。いかにも中華っぽい赤に白文字抜きの看板。真ん中で餃子のお皿を持った子豚がお出迎え。そうそう、この手の飲食店、例えばとんかつ屋の看板キャラクターが豚だったり、ラーメン屋や餃子屋のキャラクターが豚だったりして愛嬌をふりまいたりしてることがままありますけど、どっちかってーと「食われちゃう側の生物」がそんな暢気な気構えでいいのかといつも思う。あまつさえ「美味しいよ!」とかセリフまで言わされているのを見ると・・・(笑)。いのちだいじに。

一気に宇都宮駅西側のメインストリートとなった鬼怒通りに面したお店で、ライトレール沿いにあって看板が目立つのか、店内は満席の混み具合。ちょうど運よく妙齢のご夫婦が食事を終えたところに入り込めたのだが、見ていると後から後から店の外に並びの列が出来ていた。勿論LRT特需もあるのだろうけど、クルマで乗り付けて来る地元民もそれなり以上の数がいて、元々からの地元の人気店なのだろう。カウンターの上のメニュー表を眺めると、メニューの種類は非常にシンプルで、餃子を中心にラーメンとご飯ものがほんの僅か。しかも中華丼とか野菜炒め定食とか平日だけなんだな。平日は地元民向け、休日は観光客向けとメニューを使い分けているようだ。珍しいのは餃子を出す店でノンアルコールなこと。餃子にビールってシンプルに最強だと思うんですが、そんなに大きくない店ですし、飲まれて長居されたくないってことなのかなあ。

息子はジャンボびっくり餃子セット、私は普通のびっくり餃子セット。普通の餃子より少し大ぶりの餃子が5つ。皮はモチモチ、そして中身の餡は大ぶりに刻んだ野菜と豚ひき肉をあまり練り込んでいないのか、ホロっと口の中で崩れるような軽い口当たり。自分の場合、餃子の餡は野菜を細かく刻んで水気を絞り、豚肉と合わせてよく練り込んで・・・みたいな作り方をするのだが、こういう作り方をすると野菜の水気が皮の中に保たれてホロっとジューシーになるのね。なかなかスーパーで売っている程度の餃子の皮では、こう水気のある餡では餃子を包みづらいかもしれないけど。そういう意味ではプロの技術であり、お店の味だなあと思う。そしてセットメニューについてくる具だくさんの卵スープいいね!シイタケニンジンニラに玉ねぎ、こういう単品でもおかずになるスープ大好き。

撮影に勤しむ親父を横目に「食べないの??」とぶっきらぼうに言い放ってそそくさとびっくりジャンボ餃子定食に箸を付ける息子。餃子も大ぶり、ご飯も大盛り。最近は親よりよっぽど大メシを食らっているのだが、食っても食っても太らないお年頃。体の成長期でもあり、部活で相応のカロリーを消費しているからだろうが、羨ましい限りである。思えば自分にも「歩く新陳代謝」みたいな、そういう時期があった。今は糖質と脂質は直接体に蓄積されるしかない。過ぎ去った時の長さを思い出して悲しくなってしまうが、まあビクビクしながらメシ食ったって美味くねえしなあ(笑)。

割と黙々とした男同士の宇都宮の昼メシ。お互いの会話はあまりないが、中学生男子なんて、親の呼びかけに返事だけしてくれればそれでいいのだろう。ホロホロの餃子を齧り、白飯を掻き込み、醬油にラー油を足し、具沢山の卵スープに手を伸ばしていると、窓の向こうをライトラインの新しい車両が通り過ぎて行った。令和の宇都宮の「美味しい生活」である。

あ、あんまりカメラばかり触っていると子供が餃子に手を伸ばして来そうだから、冷める前にさっさと食べなきゃ(笑)。

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鬼怒の川風、男体遥か。

2023年11月22日 17時00分00秒 | 宇都宮ライトレール

(撮る人・二態@芳賀・高根沢工業団地電停)

工業地帯の大通りにある、芳賀・高根沢工業団地の電停を折り返して行くLRT。お試し乗車なのだろうか、出発する車両をバックにスマホで記念撮影する妙齢のご夫婦たち。そして、通りから狙うスーツ姿の男性。撮る人二態。この辺りまで来ると土休日では車通りは薄く、存分に併用軌道を走行するLRT車両を撮影することが出来ます。バックの森は「かしの森公園」の里山の森。大きく開発された工業団地も、もとは雑木林の広がる農村地帯であったのだろうと思われ、森の向こうにアーチ形の本田技研工業の栃木体育館が見える。福利厚生施設でこの規模なのだから、さすがは世界的自動車メーカーである。研究所の周辺は、ホンダ関連の従業員が使用する駐車場が谷を越えて丘の向こうまで続いている。従業員のクルマだけでなく、日中に部品や資材を納入するトラックの出入りとかもあるのだろうし、平日のクルマの流れは相当なもんなんだろうな。芳賀・高根沢工業団地に勤務する企業の従業者数は、平成25年時点というやや古い数字ながら約1万2千人というデータが芳賀町の資料にあるのですが、その全てがホンダ関連企業のものだったりします。この中からどのくらいの従業員がLRT利用に遷移するのかは不明ですけど、1割だとしても1,200人/日だし、それなりのインパクトはあります。

かしの森公園付近を往くLRT。宇都宮ライトレールの軌道は、中央にポールを挟んで相合い傘のように架線が吊架されているのが特徴的である。四車線道路の真ん中にゆったりした間隔で敷設された軌道は、高度経済成長期に「モータリゼーションの荒波に飲まれて消えて行った」全国各地の路面電車の苦い歴史を反省点としているようにも見受けられる。というか、新設軌道だから当たり前なのかもしれないのだけど、一部の宇都宮市街の区間を除けば、路面電車らしい街の雑踏の中の情景とか猥雑さみたいなものとは無縁なんですよね。そして撮影時にクルマとの神経をすり減らすような戦い・・・いわゆる「被った/被られた」みたいな話とも全く無縁。国土交通省のHPには、「LRTとは、Light Rail Transitの略で、低床式車両(LRV)の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する軌道系交通システムのことです。」とあるのだが、これが定義だとすると、宇都宮ライトレールは「定時性・速達性」の面でどうしてもクルマと戦うような構図になってしまう既存の路面電車とは異なる、真の意味でのLRTなんでしょうね。

再び宇都宮駅東口方面行きのLRTに乗り込み、芳賀の街を通り抜けて行く。シューンとした軽やかな電子音を奏でながら、インバーター制御の車両がスイスイと軽やかに、まるでダンスを踊るように街を往く姿は、まさに「街の遊撃手」。街の遊撃手って言えば我々世代には「いすゞジェミニ」のキャッチフレーズとしてつとに有名だったので、ホンダの街にはそぐわないかもしれないが(笑)。ジェミニ、ピアッツァ、アスカとか、いすゞの生産していた乗用車の時代を知る人も既に相当なおっさんではないかとは思うが。

帰りも一ヶ所くらいどこかで・・・と思い、飛山城跡電停で途中下車してみる。鬼怒川橋梁の上り口にある電停で、田園地帯のど真ん中にある。周辺はおそらく市街化調整区域と見え、田園地帯の中に昔からの農家が屋敷森に囲まれながらぽつりぽつりとあるような雰囲気。徒歩圏内の周辺住民はそこまでいなさそうなのだけど、その駅前の広さを生かして大きめの駅前ロータリーと利用者向けのパークアンドライド用の駐車場があって、鬼怒川左岸地区のパークアンドライド需要を幅広く拾い上げているようだ。ここにクルマを置いてLRTで宇都宮の中心市街に出れば、川を渡らない分渋滞を避けられる効果はありそう。市内に出かければ場所によっては駐車場代もかかるだろうし、交通の結節点としてそれなりのニーズはあるのではないですかね。宇都宮駅東口電停までは片道250円・23分。ベルモールのある宇都宮大学陽東キャンパス電停までは片道200円・10分のアクセス。

電停は鬼怒川橋梁に向かって大きく登って行く急勾配の手前に位置していて、坂を登り切ったレールの先には日光連山と高原山の連なりが霞んで見える。もう少し季節が進んで冬になれば、澄み渡った空気の向こうにくっきりとその山容が望めるのではないでしょうか。おそらくこの駆け上がりの坂道も60パーミル前後の勾配だと思うのだが、標識がないのでよく分からないですね。軌道法に準拠した形で建設されたLRTなので、こんな立派な高架の専用軌道の部分でも速度は法令の関係上40km/hに制限されていて、ちょっとスペック的には持て余し気味の感もしますねえ。将来的には制限速度も70km/hまでの引き上げを行う予定と聞きますが、法令的にはどうクリアするのだろうか。特例扱いなのかな。

鬼怒川の川風を突いて急勾配を駆け下りて来たLRT。
真ん中に架線柱が立っているので交わしようがないのですが、それでも駅(電停)撮りで仕留めるのはこの電停が一番いいかな。

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何だろうこの既視感、2023秋。

2023年11月20日 17時00分00秒 | 宇都宮ライトレール

(高原遥かに鬼怒流れ@平石中央小学校前~飛山城跡間)

宇都宮ライトレールで一番大きな土木構造物である、鬼怒川橋梁を渡って行く電車。2018年に着工し、2021年まで3年の工期を経て完成した鬼怒川橋梁は、橋長は646m、総工費が橋梁部分のみで46億円というのだから相応に巨大な土木構造物である。路面電車が長い鉄橋を渡る・・・というのは、富山県射水市の万葉線庄川橋梁が有名ですが、あちらが橋長417mなので、今回めでたく宇都宮ライトレールの鬼怒川橋梁が日本一長い路面電車(ないしはLRT)専用の鉄道橋と言うことになりました。この辺り、鬼怒川の右岸も左岸も河川敷に続いて長閑な農地が広がっていて、車窓からは釣り堀なんかが見えたりします。釣り堀のお客さんがライトレールに向けて手を振ってたりしてほっこりするね。

宇都宮ライトレールの車内。椅子のカラーリングも外観に準拠したデザイン。外観はケルヒャーだとか言いましたが、中のデザインはユーロスター風味。国際列車の感じ。乗ったことないけど(笑)。低床型のLRT、やたら椅子の下が箱のようになっているのだが、通常の鉄道型車両と違って車体下部に車軸を通すことは出来ませんから、それぞれが独立した車輪に独立したモーターと制御機器を持っていて、椅子の下のスペースにコンソールボックス的な形で機器類を格納している。低床型の車両は妙に椅子の座面が高いのだが、それは当たり前のことで、フルフラットになってたらどこに機器類を収めるのかと言うことになってしまう。それにしても、最近の車両は広告もほとんどデジタルサイネージ化しているね。駅で紙媒体を扱う売店の消滅、新聞や雑誌類の売り上げ減と歩調を合わせるように、昔ながらの「中吊り」文化と言うものは捨て去られてしまったように思う。

ライトレール後半戦。鬼怒川を渡って清原地区の工業地帯に入り、作新学院大がある清陵高校前電停から清原地区市民センター前電停で北へ。ここには栃木県内で唯一プロ野球の公式戦が行われる宇都宮清原球場があったりする。もし来シーズンにプロ野球の公式戦が開催されるとすれば、LRTは一番の交通手段になるんだろうね。今まではクルマでしか来れなかったエリアだからねえ。ちなみに、宇都宮ライトレールは一応民間企業も出資してはいますが、宇都宮市が筆頭株主の第三セクター、ということで、民間会社の名称などは公平性を期すために電停名にはしない(副称はOK)という取り決めがあるらしい。清陵高校前も、民間の会社なら「作新学院前」だし、宇都宮大学陽東キャンパス前も「ベルモール前」となっているはずである。ここらへん、ちょっとお堅い。

清原の工業団地を抜け、ゆいの杜地区を走るライトレール。沿線風景は、庭付きの戸建てを中心とした新興住宅街と、ロードサイドのチェーン店が中心となります。茨城県を中心に、千葉県や北関東に店舗網を広げるスーパーマーケット・カスミ。カスミストアーなんて昔は言ってた記憶があるな。今はゼンショーグループになってしまったが、ハンバーグを中心にしたファミレスの「ココス」も元はと言えばカスミストアーのグループのレストラン部門に入っていて、ココスとカスミって茨城県とか千葉県北西部(東葛地域)のイメージがあるんだよな。どうということもない、関東ではよく見られるニュータウン風景なのだけど、こういう新しく形成された居住区と行政と繁華街と商工業地を結ぶのがネットワークコンパクトシティであり、LRTの目的ってことなんですよね(自分を無理やり納得させる)。

ゆいの杜地区を抜けると沿線は再び工業団地(芳賀・高根沢工業団地)のエリアに入り、芳賀町工業団地管理センター前電停(長い)~かしの森公園前電停間は、小貝川水系の野元川という小さな川が刻む谷を大きなサグで越えて行く。台地から谷へ降り、また台地へ上がって行く様子はさながらジェットコースターのようでもあり、宇都宮ライトレールの「撮り鉄的」な名物スポットになっている。宇都宮市街での4号国道のオーバークロスといい、昔ながらのいわゆる「チンチン電車」では想像もつかないようなダイナミックな線形を取っていることも宇都宮ライトレールの特徴であり、半世紀分の鉄道技術の進化みたいなものは確実に路線に反映されている。線路脇に標識がある訳ではないので実際どのくらいの勾配なのかが分からないが、線内の最大勾配は60パーミルに設定されていることから、おそらくそのくらいなのだろう。ここで撮影する際は、なるべく長めのタマを持って行って圧縮効果を狙いたい(笑)。というか、パーミル会に入れるんじゃないの?

宇都宮駅東口電停から14.6km。終点、芳賀・高根沢工業団地電停。レールは工業団地の大通りの途中でぷつんと終わっていて、周囲に商業施設などは何もありません。電停に隣接する大きな建物は、本田技研工業の研究施設である本田技術研究所栃木事業所。芳賀・高根沢工業団地の中核を成し、ホンダグループの生産する四輪車の製造研究の拠点で、中にはテストコースもあるのだとか。宇都宮ライトレールが開通する以前は、宇都宮駅東口からホンダ系列の従業員向けの通勤バスが往復し、朝夕は社員の出退勤のクルマで渋滞が発生していたそうで、このホンダ系列の従業員の通勤需要の取り込みと、通勤手段の転換による交通渋滞の緩和が、宇都宮のLRT建設の大きな原動力となったことは想像に難くありません。

澄み切った秋の青空の下を、芳賀・高根沢工業団地電停へ到着するライトレールHU300形。あと北へ500mほど行くと高根沢町に入るのだが、工場街を過ぎると本当にただの栃木の農村地帯になってしまうので、今のところ特に延伸の計画もない。そもそも、ゆいの杜地区を抜けると住宅がなくなるので、工場に用事がある人以外は乗り鉄でもしてない限りはここへ来ることはなさそうだ。しかし、本田技研の研究所以外は見事に何もない場所である。もちろんコンビニの姿なども影も形もない。工場街を吹き渡る秋の下野の風に身を委ねていると、何とはなしにこの感覚に記憶があるような気がして、息子と二人目を閉じる。

・・・そう、そうか、ここは陸の海芝浦なのだ。東芝が本田技研に変わっただけの、海芝浦なのだ。
いや、海芝浦も陸やないかい、ってのはナシで(笑)。

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