青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

八雲立つ 祈りの国の 赤鳥居。 

2023年10月03日 17時00分00秒 | 一畑電車

(祈りの国の赤鳥居@粟津稲生神社)

祈りの国・出雲の鉄道風景として代表的なものが、この粟津稲生神社の赤鳥居。一畑電車の大社線に沿って立つ稲生神社の参道に並ぶ赤い鳥居の連なり。鳥居の数、いくつくらいあるんだろう。ざっと数えただけでも25本くらいはあるのではないだろうか。いわゆる稲荷神社系の鳥居、こういう風に数を並べて立てることはそう珍しくはないのだけど、線路に沿ってあるのは珍しいですかね。以前は一部の鉄道ファンにだけ有名なスポットだったと思いますけど、一畑電車のパンフレットにも掲載されているくらいですから、一般の観光客にもメジャーな場所になっています。

赤い鳥居と、社の向こうの山並みを見ながら、出雲大社前行きの単行7000系が走って行きます。以前の写真では、鳥居の周辺はきれいな田んぼになっていた記憶があるんですけど、今は・・・夏草が生い茂る草むらになってしまった。田んぼ、やめちゃったのかな。ここ数年、全国どこを旅していても、きれいに整えられていたであろう圃場が休耕田になってしまっているシーンを多く目にします。農家の後継者不足、労働力不足ということなのだろうか。まだここは蔓草系が跋扈していないのでマシな方なのかもしれないけど。

赤鳥居ばかりがクローズアップされる粟津稲生神社ですが、線路を渡ってきちんと本殿にもお参りをしなければなりませぬ。「粟津稲生」の読み方は、「あわづいのう」でも「あわづいなお」でもなくて、これで「あわづいなり」と読むそうで、相当に珍しい。「稲」が「生(な)る」=「稲生(いなり)」ということなのかな。穀物の神様である倉稲魂神(うかのみたまのかみ)・稚彦霊神(わくむすびのかみ)・有気持神(うけもちのかみ)の三神を祀っていて、やはり稲作と農業にかかる信仰に篤い社、ということが出来るかと思われます。

お社様から参道の赤鳥居を眺める。新しめのお狐様が守る粟津稲生神社。参道の踏切は遮断機も警報器もない四種踏切。神様の前でカンカン鳴らされちゃうのも申し訳ないということなのだろうか。遥堪駅方面のすぐ近くに警報機付きの踏切があり、電車の接近を知ることは難しくはないのだけど、くれぐれも踏切を渡る際には左右の安全をご確認のほどを。

参道の真ん中から、赤い鳥居を大きく取り込んで7000系。2016年から投入されている最新型で、まごうかたなき一畑電車の自社発注車ですが、JR四国の7000系をベースに近畿車両が製造し、JR西日本の後藤車両所(米子)に併設された後藤工業で内装を仕上げているので、まったく私鉄の車両という感じがしません。減少する沿線人口と乗客の流動を鑑み、単行運用を基本とした両運転台の設計で、当然ながらVVVFの半導体制御。当初投入を予定していた東急の1000系が他社との競合もあり2編成の確保に留まったため、計画を変更して自社発注に踏み切った車両が7000系。大手私鉄同士でも車両の新造でなく中古車両の受け入れで設備投資を賄う時代ですし、特に東急系のステンレスの手頃なサイズ感の車両は枯渇気味。これからの地方私鉄の設備更新、こういうミニマムなサイズのクルマがスタンダードな時代が来るのかもしれません。

この日の大社線、朝のうちは7000系と2100系の交互運行でした。土休日は出雲大社前~電鉄出雲市・松江しんじ湖温泉の直通が多いのですが、平日は観光需要が減少するため基本的には川跡~大社前の機織り運用が中心。川跡の大社線ホーム、常用されているのは1線しかないので、交換は大社前の駅で実施することになります。スーパーライナー色の2100系を、シンメトリーの構図で。

この参道に踏切を作ることについては、一畑電車から「どうしても参道に線路がかかっちゃうので勘弁して!」ということで神社にお許しを得て作られているのだそうで。そのお礼かどうかは知りませんが、きちんとお社を囲む柱には「一畑電鉄株式會社」の名前が。それなりの浄財が収められているのではないでしょうか。


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