永子の窓

趣味の世界

枕草子を読んできて(45)(46)(47)

2018年04月02日 | 枕草子を読んできて
三二   檳榔毛は   (45) 2018.4.2

 檳榔毛は、のどやかにやりたる。走らせたるはかろがろしく見ゆ。網代は、走らせたる。人の門よりわたるを、ふと見るほどもなく過ぎて、供の人ばかり走るを、たれならむと思ふこそをかしけれ。ゆるゆると行くは、いとわろし。
◆◆檳榔毛の車は、ゆっくりと進ませるのがよい。早く走らせるのは軽々しく見える。網代車は走らせるのが似合っている。人の家の門を通って行くのを、はっと目に止めるひまもなく過ぎて、供の人だけが後をはしるのが、今の車の主はだれかしらと思うのこそ、面白いものだ。網代車がゆっくりと通るのはひどくよろしくない。◆◆

■檳榔毛(びろうげ)=蒲葵(びろう)の葉を細かく裂いて白く晒したもので屋形を覆った牛車。貴人の正式の車。
■網代(あじろ)=網代で車体を葺いた車、四位、五位以下が用い、摂関等も略式の時は用いた。軽くて速度が出る。

 

三三  牛は  (46) 2018.4.2

 牛は、額いと小さく白みたるが、腹の下白き。足のしも、尾のすそ白き。
◆◆牛は、額に、たいへん小さく白みがかった部分のある牛で、腹の下が白いの。足の下の方や、尾の先が白いのがよい。◆◆ 



三四   馬は(47) 2018.4.2

 馬は、紫のまだらつきたる。葦毛。いみじく黒きが、足肩のわたりなどに白き所。薄紅梅の毛にて、髪尾などはいと白き、げに木綿髪といひつべし。
◆◆馬は、栗毛のまだらがついているのがよい。葦毛。たいそう黒い馬で、足や肩のあたりに白いところがあるの。薄紅梅色の毛で、たてがみや尾などはとても白いのは、なるほど「木綿髪」といっていいだろう。◆◆

■馬=「むま」と読む。
■紫=「紫」は栗毛のことという。
■葦毛=白毛に青・黒・濃褐色などの毛が混じったもの。
■木綿髪(ゆふかみ)=「木綿は」は楮の樹皮を剥ぎ、裂いて糸としたもの。白色。木綿のように白い髪の意であろう。