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《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

実験と虚験、モデルと計算

2011年08月17日 11時00分52秒 | 生命生物生活哲学
2011年8月17日-2
実験と虚験、モデルと計算

 コンピュータ・シミュレーションを、「模擬実験」と呼ぶ人がいるが、「思考実験 thought experiment」と同様に、実験ではなく、(あえて名付ければ)虚験である。つまり、数値計算自体は当然ながら、現実と照合しているわけではない。(数値計算する際の問題はさておき、)その計算の元となる模倣モデル simulation model のたとえば予測上の信頼性は、そのモデルがどのような種類と程度で確証されているか、つまり現実と照合されているか、に関わる。

 下記は、池田清彦(1996.5)の「実証実験が不可能な科学的安全性とは何か」という節(あるいは章?)からの引用である。

  「巨大科学技術における安全性もまた、実は厳密には実験により実証されているわけではない。それはあくまでもシミュレーションにすぎない。たとえば、原子力発電所の安全性を実験により確かめるためには、実際に事故を起こさせて放射能がもれるかどうか確かめてみればよい。しかし、もし現実に放射能がもれてしまえは大事故になるから、そんなことは恐ろしくてできない。そこで水素を燃やすなどのシミュレーション実験を行〔な〕ったり、コンピュータで事故確率の計算を行〔な〕ったりして、科学的に安全だと言っているわけである。
 耐震性もまた、実際の地震を起こして確かめているわけではない。震動実験を行〔な〕ったとしても、それは安全性を実証しているわけでなく、安全に関する理論により安全性を予測しているにすぎない。最大の問題は、安全性に関する理論は未来に起こる地震の規模や手抜き工事の確率を予測できないところにある。だから事故が起きたとき、理論は多くの場合、事故は理論的予測の将外の問題であるとして、反証を免れようとする。しかし、よく考えてみれば、実際に事故が起きたときに反証を免れる安全性理論とは何か。それは「大地震が起きなければ安全です」と言っているに等しい。
 科学的安全性とは、実は安全を保障するものではなく、巨大土建事業にゴーサインを出すための装置のひとつにすぎないことを阪神大震災は見事に暴いてみせた。それでもニッポンは、科学的に安全な高速道路や新幹線や原発をこの先もずっと作り続けるつもりなのか。」(池田清彦 1996『科学教の迷信』: 96-97頁)。[この文章の初出は、『図書新聞』1995年4月8日号だと、217頁の「初出一覧」にある。]

 
[I]
池田清彦.1996.5.科学教の迷信.220pp.洋泉社.[B960609, Rh960611, y1900]


田中角栄(1972)『日本列島改造論』で原発推進に言及?

2011年08月17日 10時35分07秒 | 生命生物生活哲学
2011年8月17日-1
田中角栄(1972)『日本列島改造論』で原発推進に言及?

 一週間程前、田中角栄(1972)『日本列島改造論』に原発推進のことが書いてあるかな、と思ってちょっと探したが、書いてないと思った。

 朝日新聞2011年8月17日3面の「原発国家 田中角栄編 下 自立奪った電源三法」という記事では、この『日本列島改造論』(確か、ゴーストライター〔代作者〕は誰だかがいたという話があった)で、「原発推進にも言及している」として、下記を引用している。

  「地元は潤すものが少なくて、公害だけが残るというのが言い分だ。地域社会の福祉に貢献するような発電所づくりを考えないといけない」

 しかし、ここでの「発電所づくり」は原発だけを指していると解釈できるのだろうか? この文章は何頁目にあるのだろうか? 

 なお、『時局シリーズ 第六集 あすの暮らしを守る?? 原子力発電:その魅力と安全性』という42頁の冊子が、ある。奥付けは昭和56年〔1981年〕7月31日発行(100円)となっている。
 その最後の「むすび」では、

  「すでに原子力発電は技術的に確立し、少量のウランで大量のエネルギーを出し、発電コストも石油火力の半分という利点があります。自動車事故では年間一万人の人が死んでいますが、原子力の事故で死んだ人は過去に一人もいないのです。しかし、より安全性の向上に努めることで、原子力発電の発展を期したいと思います。」(自由民主党広報委員会出版局.1981.7『原子力発電 その魅力と安全性』:41-42頁)。

 「チェルノブイリでは多数の死者が出たが、福島原発事故では死者はゼロです」とか、言った人が一人以上いたと記憶する。
 
[J]
自由民主党広報委員会出版局(編).1981.7.時局シリーズ 第6集 あすの暮らしを守る?:原子力発電 その魅力と安全性.42pp.自由民主党広報委員会出版局発行.[y100][表紙、中表紙、そして奥付で記載されている表題が少しずつ異なる。[(どこで?)1981.11.12入手。]


[T]
田中角栄.1972.日本列島改造論.vi+219pp.日刊工業新聞社.[y500]