会社法百選5事件とA1事件の違い

2018-06-01 17:52:27 | 司法試験関連

百選5事件(最判昭和33年10月24日)と百選A1事件(最判昭和35年12月9日)の事例処理の違いの理由は分かりますでしょうか。

百選5事件の方は、「発起人の開業準備行為」の事件です。A会社はまだ設立中であるにもかかわらず、「A会社代表取締役」として発起人の一人であるYが野球試合の実施をX球団と締結した事件。Yが民法117条1項の類推適用で個人的に責任を負いました。

A1事件は、石炭販売業を目的とする設立中の会社Aの発起人であったY1~7らが、設立以前に同会社名義で石炭販売事業を行った事例です。発起人は7人いましたが、うち4人による組合の代理権が認められた事例です。この事件では発起人組合の組合員Yら7名全員の責任が認められています。

A1事件では、会社の事業である石炭販売業を発起人組合が行った事例で、会社の事業行為は「発起人組合の」目的の範囲内に含まれ、しかもY1~4らに組合の代理権が認められたので、売買契約の法的効果が組合員全員に帰属する、と処理されたのです(これは民法上の組合における組合の目的如何の問題で、本件では設立会社の事業行為も組合の目的の範囲内である、という合意が認められたのである)。

それに対し、百選5事件では、野球試合の開催は、A社の宣伝目的で行われたもので、A社の事業行為そのものではありませんでした。そのため、「発起人組合の」目的の範囲内の行為とも認められませんでした。当然、組合員には効果帰属しません。結果、「Yのスタンドプレー」とみなされ、無権代理人類似の責任を個人的に負う、と言う処理になったのです。

両事件では、「設立中の会社=成立後の会社」に対する責任追及は一切問題になっていません。それは、A1事件で問題となった「事業行為」は、設立中の会社の権利能力の範囲外なので効果帰属せず(争いなし)、百選5事件も、「開業準備行為」は判例の立場では、設立中の会社の権利能力の範囲外になるのでこれまた効果帰属しないからです。

なんて講義を4期基礎攻略ではやっています。今日収録したんですけどね(笑)。

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