猿払・堀越・世田谷事件備忘録

2013-02-15 17:53:49 | 司法試験関連

猿払事件 

有罪。連邦最高裁の採用する「腐ったみかんの論理」に基づく判断。そのため,問題となった個々の行為の政治的中立性を害する程度についてはまるで無関心だった。

猿払批判 

無罪にすべき。組織内部への影響ではなく,個々の行為が持つ政治的中立性を害する恐れの程度を問題にする立場。

堀越事件 

無罪。被告人は管理職に無いことを理由に無罪。「おそれ」を「実質的」に判断するとの姿勢を打ち出す。一見,猿払批判と似ているがまるで違うので注意。あくまでも,組織内部への影響力の大小に関する「おそれ」を「実質的」に判断する,というスタンス。

世田谷事件 

有罪。管理職にあることを理由にした有罪判断。管理職ゆえに内部への影響力が甚大であることを重視した。

堀越事件は猿払事件の判断に反するとの検察官の主張について

事案が異なる。組織的活動性の有無・強弱について違いがあるので矛盾しない,との判断である。共に管理職でもなんでもない点で共通する事件なので,あたかも判例変更したかのような印象を受けるがそうではない。両者は内部的な影響力において違いが出る,との判断だと思われる。この点,堀越事件からはハッキリしないが,同日に出た,世田谷事件のあてはめ部分を見ると,最高裁は一貫して内部的な影響力を問題にしていることが分かる。今回変えたのは,その内部的影響力に関する「おそれ」の判断基準を漠然としたものから「実質的な」ものに変えた点である。

 

私見だが,今回「判例変更」という形を取らなかった理由は,判断の底辺を流れる価値判断そのものは変っていないからではないだろうか。「腐ったみかんの論理」は一貫している,というわけである。

判例が「おそれ」の「実質的」な判断をする際に,特に重視しているのは,「管理職的地位にあるか」,「裁量権限をもつ職務か」の2点だが,実際問題,堀越・世田谷で重視されているのは前者であろう(有罪・無罪の結論を分けた理由もこれ)。後者は,対外的に,職務権限をちらつかせ圧力をかけるような行為を禁止する為のロジックとして便利なので,あげていると思われる。公務員としての立場・権限を背景にして,国民に対し政治的圧力をかける行為が禁止されるのは当然であり,この点については異論は無い。また,裁量的な権限を持つ者は(往々にして職位も高いと思われるが)内部的な影響力もその職位に関係なく大きいとも言えよう。あえて,「管理職的地位(この者は裁量権限を持つ)」のほかに,「裁量権限」というファクターをあえてあげているのは,対外的には,仮に当該公務員の職位が低い場合でも,国民に対しその裁量権をちらつかせ,政治的圧力をかけることはありうるからではなかろうか。

世田谷事件あてはめ部分。

被告人は,本件当時,厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課長補佐であり,庶務係,企画指導係及び技術開発係担当として部下である各係職員を直接指揮するとともに,同課に存する8名の課長補佐の筆頭課長補佐(総括課長補佐)として他の課長補佐等からの業務の相談に対応するなど課内の総合調整等を行う立場にあった。また,国家公務員法108条の2第3項ただし書所定の管理職員等に当たり,一般の職員と同一の職員団体の構成員となることのない職員であった。

 次に,本件配布行為が本件罰則規定の構成要件に該当するかを検討するに,本件配布行為が本規則6項7号が定める行為類型に文言上該当する行為であることは明らかであるが,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものかどうかについて,前記諸般の事情を総合して判断する。

 前記のとおり,被告人は,厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課長補佐であり,庶務係,企画指導係及び技術開発係担当として部下である各係職員を直接指揮するとともに,同課に存する8名の課長補佐の筆頭課長補佐(総括課長補佐)として他の課長補佐等からの業務の相談に対応するなど課内の総合調整等を行う立場にあり,国家公務員法108条の2第3項ただし書所定の管理職員等に当たり,一般の職員と同一の職員団体の構成員となることのない職員であったものであって,指揮命令や指導監督等を通じて他の多数の職員の職務の遂行に影響を及ぼすことのできる地位にあったといえる。このような地位及び職務の内容や権限を担っていた被告人が政党機関紙の配布という特定の政党を積極的に支援する行動を行うことについては,それが勤務外のものであったとしても,国民全体の奉仕者として政治的に中立な姿勢を特に堅持すべき立場にある管理職的地位の公務員が殊更にこのような一定の政治的傾向を顕著に示す行動に出ているのであるから,当該公務員による裁量権を伴う職務権限の行使の過程の様々な場面でその政治的傾向が職務内容に現れる蓋然性が高まり,その指揮命令や指導監督を通じてその部下等の職務の遂行や組織の運営にもその傾向に沿った影響を及ぼすことになりかねない。したがって,これらによって,当該公務員及びその属する行政組織の職務の遂行の政治的中立性が損なわれるおそれが実質的に生ずるものということができる。

 そうすると,本件配布行為が,勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せずに,それ自体は公務員としての地位を利用することなく行われたものであること,公務員により組織される団体の活動としての性格を有しないこと,公務員であることを明らかにすることなく,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,公務員による行為と認識し得る態様ではなかったことなどの事情を考慮しても,本件配布行為には,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められ,本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当するというべきである。そして,このように公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる本件配布行為に本件罰則規定を適用することが憲法21条1項,31条に違反しないことは,前記イにおいて説示したところに照らし,明らかというべきである。

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判例変更!?

2013-02-13 19:21:08 | 司法試験関連

堀越事件上告審判決は,猿払事件上告審判決を引用してますが,事実上の判例変更になっていると見られています。

堀越事件も世田谷事件も,「実質的な」危険の有無を検討する際に,「管理職かどうか,裁量のある職務かどうか」をかなり重視しています。しかし,果たしてこれらは相互に関連性があるのかどうか批判のあるところでもあります。

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最判平成24年12月7日 堀越事件上告審判決

2013-02-13 18:28:36 | 司法試験関連

堀越事件上告審判決

(1)原判決及び記録によれば,本件の事実関係は,次のとおりである。
ア 本件公訴事実の要旨は,「被告人は,社会保険庁東京社会保険事務局目黒社会保険事務所に年金審査官として勤務していた厚生労働事務官であるが,平成15年11月9日施行の第43回衆議院議員総選挙に際し,日本共産党を支持する目的をもって,第1 同年10月19日午後0時3分頃から同日午後0時33分頃までの間,東京都中央区(以下省略)所在のB不動産ほか12か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『いよいよ総選挙』で始まるもの)及び同党を支持する政治的目的を有する無署名の文書である東京民報2003年10月号外を配布し,第2 同月25日午前10時11分頃から同日午前10時15分頃までの間,同区(以下省略)所在のC方ほか55か所に前記しんぶん赤旗2003年10月号外及び前記東京民報2003年10月号外を配布し,第3 同年11月3日午前10時6分頃から同日午前10時18分頃までの間,同区(以下省略)所在のD方ほか56か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『憲法問題特集』で始まるもの)及びしんぶん赤旗2003年11月号外を配布した。」というものであり,これが国家公務員法(以下「本法」という。)110条1項19号(平成19年法律第108号による改正前のもの),102条1項,人事院規則14-7(政治的行為)(以下「本規則」という。)6項7号,13号(5項3号)(以下,これらの規定を合わせて「本件罰則規定」という。)に当たるとして起訴された。


イ 被告人が上記公訴事実記載の機関紙等の配布行為(以下「本件配布行為」という。)を行ったことは,証拠上明らかである。


ウ 被告人は,本件当時,目黒社会保険事務所の国民年金の資格に関する事務等を取り扱う国民年金業務課で,相談室付係長として相談業務を担当していた。その具体的な業務は,来庁した1日当たり20人ないし25人程度の利用者からの年金の受給の可否や年金の請求,年金の見込額等に関する相談を受け,これに対し,コンピューターに保管されている当該利用者の年金に関する記録を調査した上,その情報に基づいて回答し,必要な手続をとるよう促すというものであった。そして,社会保険事務所の業務については,全ての部局の業務遂行の要件や手続が法令により詳細に定められていた上,相談業務に対する回答はコンピューターからの情報に基づくものであるため,被告人の担当業務は,全く裁量の余地のないものであった。さらに,被告人には,年金支給の可否を決定したり,支給される年金額等を変更したりする権限はなく,保険料の徴収等の手続に関与することもなく,社会保険の相談に関する業務を統括管理していた副長の指導の下で,専門職として,相談業務を担当していただけで,人事や監督に関する権限も与えられていなかった


(2)第1審判決は,本件罰則規定は憲法21条1項,31条等に違反せず合憲であるとし,本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に当たるとして,被告人を有罪と認め,被告人を罰金10万円,執行猶予2年に処した。


(3)原判決は,本件配布行為は,裁量の余地のない職務を担当する,地方出先機関の管理職でもない被告人が,休日に,勤務先やその職務と関わりなく,勤務先の所在地や管轄区域から離れた自己の居住地の周辺で,公務員であることを明らかにせず,無言で,他人の居宅や事務所等の郵便受けに政党の機関紙や政治的文書を配布したことにとどまるものであると認定した上で,本件配布行為が本件罰則規定の保護法益である国の行政の中立的運営及びこれに対する国民の信頼の確保を侵害すべき危険性は,抽象的なものを含めて,全く肯認できないから,本件配布行為に対して本件罰則規定を適用することは,国家公務員の政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度を超えた制約を加え,これを処罰の対象とするものといわざるを得ず,憲法21条1項及び31条に違反するとして,第1審判決を破棄し,被告人を無罪とした。


(4)所論は,原判決は,憲法21条1項,31条の解釈を誤ったものであると主張する。
ア そこで検討するに,本法102条1項は,「職員は,政党又は政治的目的のために,寄附金その他の利益を求め,若しくは受領し,又は何らの方法を以てするを問わず,これらの行為に関与し,あるいは選挙権の行使を除く外,人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と規定しているところ,同項は,行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することをその趣旨とするものと解される。すなわち,憲法15条2項は,「すべて公務員は,全体の奉仕者であって,一部の奉仕者ではない。」と定めており,国民の信託に基づく国政の運営のために行われる公務は,国民の一部でなく,その全体の利益のために行われるべきものであることが要請されている。その中で,国の行政機関における公務は,憲法の定める我が国の統治機構の仕組みの下で,議会制民主主義に基づく政治過程を経て決定された政策を忠実に遂行するため,国民全体に対する奉仕を旨として,政治的に中立に運営されるべきものといえる。そして,このような行政の中立的運営が確保されるためには,公務員が,政治的に公正かつ中立的な立場に立って職務の遂行に当たることが必要となるものである。このように,本法102条1項は,公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することを目的とするものと解される。
 他方,国民は,憲法上,表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており,この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって,民主主義社会を基礎付ける重要な権利であることに鑑みると,上記の目的に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は,国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである
 このような本法102条1項の文言,趣旨,目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え,同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると,同項にいう「政治的行為」とは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが,観念的なものにとどまらず,現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し,同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。そして,その委任に基づいて定められた本規則も,このような同項の委任の範囲内において,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為の類型を規定したものと解すべきである。上記のような本法の委任の趣旨及び本規則の性格に照らすと,本件罰則規定に係る本規則6項7号,13号(5項3号)については,それぞれが定める行為類型に文言上該当する行為であって,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものを当該各号の禁止の対象となる政治的行為と規定したものと解するのが相当である。このような行為は,それが一公務員のものであっても,行政の組織的な運営の性質等に鑑みると,当該公務員の職務権限の行使ないし指揮命令や指導監督等を通じてその属する行政組織の職務の遂行や組織の運営に影響が及び,行政の中立的運営に影響を及ぼすものというべきであり,また,こうした影響は,勤務外の行為であっても,事情によってはその政治的傾向が職務内容に現れる蓋然性が高まることなどによって生じ得るものというべきである。
 そして,上記のような規制の目的やその対象となる政治的行為の内容等に鑑みると,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるかどうかは,当該公務員の地位,その職務の内容や権限等,当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。具体的には,当該公務員につき,指揮命令や指導監督等を通じて他の職員の職務の遂行に一定の影響を及ぼし得る地位(管理職的地位)の有無,職務の内容や権限における裁量の有無,当該行為につき,勤務時間の内外,国ないし職場の施設の利用の有無,公務員の地位の利用の有無,公務員により組織される団体の活動としての性格の有無,公務員による行為と直接認識され得る態様の有無,行政の中立的運営と直接相反する目的や内容の有無等が考慮の対象となるものと解される。


イ そこで,進んで本件罰則規定が憲法21条1項,31条に違反するかを検討する。この点については,本件罰則規定による政治的行為に対する規制が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかによることになるが,これは,本件罰則規定の目的のために規制が必要とされる程度と,規制される自由の内容及び性質,具体的な規制の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである(最高裁昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁等)。そこで,まず,本件罰則規定の目的は,前記のとおり,公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し,これに対する国民の信頼を維持することにあるところ,これは,議会制民主主義に基づく統治機構の仕組みを定める憲法の要請にかなう国民全体の重要な利益というべきであり,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為を禁止することは,国民全体の上記利益の保護のためであって,その規制の目的は合理的であり正当なものといえる。他方,本件罰則規定により禁止されるのは,民主主義社会において重要な意義を有する表現の自由としての政治活動の自由ではあるものの,前記アのとおり,禁止の対象とされるものは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られ,このようなおそれが認められない政治的行為や本規則が規定する行為類型以外の政治的行為が禁止されるものではないから,その制限は必要やむを得ない限度にとどまり,前記の目的を達成するために必要かつ合理的な範囲のものというべきである。そして,上記の解釈の下における本件罰則規定は,不明確なものとも,過度に広汎な規制であるともいえないと解される。なお,このような禁止行為に対しては,服務規律違反を理由とする懲戒処分のみではなく,刑罰を科すことをも制度として予定されているが,これは,国民全体の上記利益を損なう影響の重大性等に鑑みて禁止行為の内容,態様等が懲戒処分等では対応しきれない場合も想定されるためであり,あり得べき対応というべきであって,刑罰を含む規制であることをもって直ちに必要かつ合理的なものであることが否定されるものではない。
 以上の諸点に鑑みれば,本件罰則規定は憲法21条1項,31条に違反するものではないというべきであり,このように解することができることは,当裁判所の判例(最高裁昭和44年(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁最高裁昭和52年(オ)第927号同58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁最高裁昭和57年(行ツ)第156号同59年12月12日大法廷判決・民集38巻12号1308頁最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁最高裁平成10年(分ク)第1号同年12月1日大法廷決定・民集52巻9号1761頁)の趣旨に徴して明らかである。


ウ 次に,本件配布行為が本件罰則規定の構成要件に該当するかを検討するに,本件配布行為が本規則6項7号,13号(5項3号)が定める行為類型に文言上該当する行為であることは明らかであるが,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものかどうかについて,前記諸般の事情を総合して判断する。
 前記のとおり,被告人は,社会保険事務所に年金審査官として勤務する事務官であり,管理職的地位にはなく,その職務の内容や権限も,来庁した利用者からの年金の受給の可否や年金の請求,年金の見込額等に関する相談を受け,これに対し,コンピューターに保管されている当該利用者の年金に関する記録を調査した上,その情報に基づいて回答し,必要な手続をとるよう促すという,裁量の余地のないものであった。そして,本件配布行為は,勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せずに公務員としての地位を利用することなく行われたものである上,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく公務員であることを明らかにすることなく,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,公務員による行為と認識し得る態様でもなかったものである。これらの事情によれば,本件配布行為は,管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって,職務と全く無関係に,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり,公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもないから,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。そうすると,本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しないというべきである。


エ 以上のとおりであり,被告人を無罪とした原判決は結論において相当である。なお,原判決は,本件罰則規定を被告人に適用することが憲法21条1項,31条に違反するとしているが,そもそも本件配布行為は本件罰則規定の解釈上その構成要件に該当しないためその適用がないと解すべきであって,上記憲法の各規定によってその適用が制限されるものではないと解されるから,原判決中その旨を説示する部分は相当ではないが,それが判決に影響を及ぼすものでないことは明らかである。論旨は採用することができない。


2 検察官の上告趣意のうち,判例違反をいう点について
 所論引用の判例(前掲最高裁昭和49年11月6日大法廷判決)の事案は,特定の地区の労働組合協議会事務局長である郵便局職員が,同労働組合協議会の決定に従って選挙用ポスターの掲示や配布をしたというものであるところ,これは,上記労働組合協議会の構成員である職員団体の活動の一環として行われ,公務員により組織される団体の活動としての性格を有するものであり,勤務時間外の行為であっても,その行為の態様からみて当該地区において公務員が特定の政党の候補者を国政選挙において積極的に支援する行為であることが一般人に容易に認識され得るようなものであった。これらの事情によれば,当該公務員が管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地がなく,当該行為が勤務時間外に,国ないし職場の施設を利用せず,公務員の地位を利用することなく行われたことなどの事情を考慮しても,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものであったということができ,行政の中立的運営の確保とこれに対する国民の信頼に影響を及ぼすものであった。
 したがって,上記判例は,このような文書の掲示又は配布の事案についてのものであり,判例違反の主張は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切ではなく,所論は刑訴法405条の上告理由に当たらない。

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公務員の政治活動の自由(超オオヤマ)

2013-02-13 18:21:31 | 司法試験関連

平成24年12月7日に出た,堀越事件上告審判決(無罪),世田谷事件上告審判決(有罪)は極めて重要な判例です。特に堀越事件の方は猿払事件と適用関係につき結論が違いますが,なぜ結論が割れたのか,両事案の「事案の特殊性」は必ず理解しておいて下さい。かなり詳細に言及されています。堀越事件と世田谷事件で結論が分かれた理由も「事案の特殊性」の違いにあります。

大阪市の条例もかなり問題になっていますが,大阪市の方は,懲戒処分のみで罰則規定がありません(地方公務員法は,罰則を付すことをを許さない趣旨との内閣答弁あり)。因みに懲戒処分自体は,「政治活動の自由」を「直接」制約しないことも重要です。なので比例原則や平等原則違反かどうかで裁量の逸脱濫用があるかどうかを判断します(行政法の話になる)。

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会社法へGO!

2013-02-12 18:01:30 | 司法試験関連

短答突破実践力完成講義の19時間目から21時間目を収録しました。最初の30分は色々コメントしてます。で,そのあとは会社法の世界へ。嗚呼,嫌な世界だにゃ 笑

時間がないので,設立から入り,持分会社をチェックして終わりました。適宜他の条文も飛んでいますが相変わらず疲れますね,会社法の条文は。もう少し会社法やるつもりです。あと3時間だけど,講師的にはすんごいしんどい講座です。笑 事前収録は寂しいですね。やはり生講義が一番ですわー。

月末には,今年最初の名京阪遠征っすー☆かなり楽しみー☆

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うつろう時季

2013-02-11 20:03:46 | 司法試験関連

講義3時間にカウンセリング2時間と充実の1日でした。ほぇぇ,祝日なんだねーって感じで20時を迎えていますんすん。笑

さて,今春からのロー進学を控えている人の相談が珍しくなくなってきました。とても良いことです。始動は早いに越したことはありません。ローの授業も上手く使えばかなり効果が期待できるものもありますが,基礎力が脆弱だと課題に振り回されて終わるという激薬でもあります。この点をシッカリ認識して欲しいです。個人的には,基礎力がある人にとっては,ローの授業は良薬になるものが多いように思います。問題は,激薬にしか作用しない人が多いということです。改善されないといけません。

今の時季は,今年大勝負出る人にとってはいよいよ直前期になり,臨戦態勢を強いられる日々である一方で,これから司法試験の世界に参入してくる人が期待と不安を持ちながら過ごす時季でもありますね。

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充填

2013-02-11 13:30:20 | 司法試験関連

全国的に3連休なわけですが,この仕事をしていると,暦はまるで関係ないです。と言うか,平日とか土日という区別自体,全然意識していないというのが本音です。外出して,「あれ,いつもと感じが違うな,嗚呼,休日か」と気がつくというのが殆どです。3連休の最後は月曜だったりすることが多いので,平日かと思っていたら,というわけで結構驚く時あります(笑)まぁ,受験生の皆さんには,もっと関係ないと言うか,今の時期だと,答練がある日を軸に週が構成されているのかな,なんて思います。

しかし2月になってから春の陽気が続いています。このまま春に向けて爆走してくれればいいのですが。あと1ヵ月半もすれば桜が咲き始めるなんて想像できないなぁ,ってこの時季は毎年考えます。花咲く瞬間に向けてエネルギーを蓄えている桜同様,みなさんも今はじっとエネルギーを充填する時季です。5月に一気に放出ですね!

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必要条件だが十分条件ではない

2013-02-08 19:06:00 | 司法試験関連

「過去問題の出題傾向に基づくメリハリ」というのは一般論としては正当である。しかし,この「準則」がまともに機能するためには,ある前提が必要だ。それは,「一定量の過去問題の蓄積がある」,という大前提である。

旧司法試験のように何十年分もの問題が蓄積している場合,テキスト作成にしろ問題作成にしろ,これが一定基準になることに異論は無い。講義のメリハリもこのような「出題傾向」に基づいて的確に行うことが可能である。

しかし,新司法試験はどうか。たかだか7年分である。各科目140問しかない(民法・商法除く)。「これさえやれば大丈夫」なんて発想がどこから出てくるのか分からない。どう見ても「網羅性0」である。

もちろん,「頻出分野」というのはある程度特定できる。同じ分野の問題でも,内容的な変遷が見て取れる分野もある。しかし,逆を言えばその程度のことしか言えない。「過去問題では出ていないからCランク」という言葉の重みは,旧司法試験の場合のそれとはまるで違うということである。

現状,過去問題は修得範囲としては「必要条件」ではあるが,「十分条件」ではない。このことを肝に銘じて欲しい。短答式試験で200点程度しか取れていない人には(しかも2度も3度もである),根本的に共通の誤りが見てとれる。「過去問題を潰した」+「肢別本1冊潰した」=短答対策終わり,である。この共通傾向は,「100%そうだ」といっても過言ではないほどだ。毎年毎年,新規分野からの出題が多いことを忘れないようにしたい。あくまでも,過去問題の傾向は,現状「ある程度の目安」にしかなっていない。

結論は一度は網羅的なインプットをしないと駄目であるといういことである。「効率性」とか言う言葉で真実を隠蔽してはならない。

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判例セレクト刑法その1

2013-02-07 21:17:34 | 司法試験関連

時間無かったので4つだけ。

1事件

過失犯である。実際問題事故原因がなんだったのかという事実認定と注意義務の内容が完全に連動しているので要チェックである。あくまでも「強度不足による事故」という前提で立論されている点に注意。「(仮に)不適切な使用方法がハブを磨耗させて事故が起きたとしても,このことはリコールをすれば結果を回避しえたのではないか」,という原審で採られたロジックは退けられている部分に注意して欲しい。多数意見の判断の前提を考えると,田原裁判官の反対意見はごもっともである。

2事件

これまた過失犯事例。どのようなリスクが想定され,そこからどのような注意義務が導かれるのかと言う意味で,過失の中身をどう構成するか解説部分は大変参考になる。更に本件は組織的な過失事例であり,誰がどのような注意義務を負うのか,という問題も本試験で出れば避けられない(監督過失,信頼の原則等も出てこよう)。A社の負うべく責務の存在が被告人(部長である)の予見可能性を緩和しないという判断をしつつ,結果回避義務の内容や,注意能力の基準については,「大規模な鉄道事業者の安全対策の責任者の立場にあったもの」,という「業界平均人」基準を採用している点にも注目。

3事件

過失犯3連発である。過失犯に正当防衛が認められたレアケースである。解説部分の,「論点指摘→あてはめ→結論」部分は,この判例の答案構成のようになっており大変便利。しかしどっかで聞いたことあるような事例である(第6回本試験まんまですね)。

4事件

でた幇助の故意。中立的行為による幇助については「論文突破」でも扱いましたが,「6時間で分かるシリーズ」の「刑法共犯総論編」でもウイニー事件については,地裁,高裁判断を両方扱いました。そして最高裁が高裁のロジックを批判し退けている(高裁の判断にどういう問題があるのかは解説第2段落参照のこと)ので超重要判例です。何をどこまで認識認容すれば良いのか,という「故意とは何ぞや」を真正面から問題にしています。この問題は,あてはめ能力も試すことができます。 構成要件レベルついては第5回本試験で,違法性レベルでは第6回本試験でドカンと出ましたが,構成要件レベルでは,「故意論」部分については未出題です。本番で幇助犯を絡めての出題は十分ありえます。個人的には去年からずっと要注意だと思っています。

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乾坤一擲の大勝負,前夜祭

2013-02-07 19:57:40 | 司法試験関連

暇さえあれば!?演習編第2タームのレジュメ作成に勤しむ吉野です。無事民事系に突入いたしました。

さて,試験本番まで100日を切りました。文字通りの「エンジン全開ラスト・スパート」の時季到来であります。この100日弱の踏ん張り如何で,「自分の人生大きく変る!!」,と思ってください。つまり,今年の秋に司法試験受験生を引退するか,それとも現役続行か,三振するのか自己実現を果たすのか,という,冷静に考えたら「天と地と」の差が生じかねない,正に大一番です。

こりゃもう,とにかく勝つしかありません。そして大一番の一発勝負で勝つ為には,もう日々努力あるのみ!悩んでる暇があるなら条文の一つでも覚えた方がいいです。不安になるのは当たり前なので当たり前の事にとらわれている場合ではありません。もしあなたが「何故,俺は呼吸をするのか?」なんてことで悩んでいたら試験の神様に張り倒されます。「勉強せい」と。それと同じで,「試験に落ちたらどうしよう,どうなっちゃうんだろう?」,と不安になるのも当たり前の事なので,こんなこと考えても仕方ない,ということにさっさと気がつきたいところです。

今の頑張りが,試験当日の苦難から自分を救い出してくれます。条文を軽んじる者は,試験当日条文にやられます。判例を軽んじる者は,試験当日判例にやられます。民法を軽んじる者は,試験当日民法にやられます。

とうわけで,何かとやられないようにしましょう!

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判例セレクト憲法

2013-02-06 16:14:47 | 司法試験関連

2事件

国立大学法人に憲法の適用あり(14条を適用している)。大学(院)の入学判定に司法審査が及ぶかにつき,学力や能力等とは直接関係の無い年齢,性別,社会的身分(他事考慮である)による判定には司法審査が及ぶ(安全保障上の配慮について司法審査は及ぶ)。

入学認定については大学に広い裁量がある→しかし,志願者には教育を受け研究する権利利益がある→重用な権利に対する制約になるので,制約には相当な理由が必要となる→あてはめ,という流れを押さえること。

3事件

国籍法と憲法14条である。国籍法12条の立法目的を押さえ,手段審査における合理的関連性審査をどのように行ったか理解せよ。解説冒頭の最大判平成20年6月4日について再度確認のこと。

4事件

民法900条4号但書である。法令合憲+適用違憲の判断をした。本判決は,「重婚的」婚外関係から出生した婚外子に適用される限りで立法目的に合理性ありとしている。本件原告は,生誕時には,父親は原告の母以外の他の女性と婚姻しているなど重婚的関係を持っていなかった。単に原告を婚外子としてもうけただけであり,他の女性と結婚し子供が生まれるのはその後である。このような場合には,民法900条4号但書は適用すべきではないとしたわけである。

5事件

第8回大会の大本命,不起立・不斉唱・伴奏拒否事件である。最高裁(平成23年6月6日)は「間接的制約」にすぎないという前提で立論していることを確認せよ。論文突破レジュメ+補助レジュメで詳しく扱ったところである。マスターしないことは許されまい。なお,5事件自体は,行政法判例であろう。

7事件

条例制定権の範囲の問題忘れずに。それを踏まえ,本件条例は直ちに無効ではない→しかし,経済活動の自由・憲法15条及び21条1項の保障する議員活動の自由を制約する→重要な人権の制約なので,本件規制には合理性・必要性が認められなければならない→あてはめ,というロジックを確認のこと。権利の種類の認定に注目せよ。部分社会の法理の問題についても確認すること。

9事件

権利の種類認定に注目せよ。表現の自由と請願権を問題にし,請願権とはなんぞや,という話に踏み込んでいる。誠実処理義務をどう捉えてロジックを展開しているかがポイント。原審と控訴審では解釈の仕方が異なる。両方のロジックを押さえておこう。

10事件

制度後退論は採用していない。判旨自体は,生存権の最高裁の立場からの裁量逸脱濫用審査を行っていて,実質は行政法判例である。

11事件

何が問題になっているかだけ(租税法規の遡及効如何)でよいでしょう。

14条の問題が目立つこと,議会や大学など司法審査が及ぶかどうかという問題が絡んでいるものが多いこと,権利設定が具体的で新司法試験向きであることなどが特徴である。

個人的予想では,第8回大会憲法では,19条,14条,22条が「Dangerous3兄弟」であろう。

 

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銀座線よ・・・。

2013-02-06 13:49:42 | 司法試験関連

お前,地下鉄だろう,とも言いたい。

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大人って大人って

2013-02-06 10:57:31 | 雑感

雪降っていないのに,「雪のためダイヤが乱れております」と言い切る銀座線は大人だと思う。

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へたれでござんす

2013-02-05 19:54:52 | 雑感

更新が滞っております,へたれ吉野です。みなさんお元気ですか。

節分には,毎年恒例の恵方巻きを頬張りました。渋谷東急の地下で購入が定番。祈念する内容も定番。そんなこんなで節分が過ぎ,日に日に昼が長くなることに密かに昂奮を禁じえない今日この頃です。

ちょいと「スケジュールきついぉ!たまらんぉ!」と書きすぎたせいか,ご心配くださる方がいらっしゃるようです。ありがとうございます。こちらの「ひぇぇぇ」なんてのは受験生の「ひぇぇぇ」に比べれば,屁のツッパリは要らんですよレベルなのでご安心下さい。へたれゆえの「ひぇぇぇ(純粋主観説)」なのであります。

まぁ,スケジュール管理はしっかりやってくふがふが自主規制な風情ではありますが,元気ハツラツオロナミンモンダミンCであります。インフルエンザはA型の次はB型のようです。インフルには決して罹患しない男なので,しったこっちゃありませんが。Z型までいってみろやごらぁっでございます。

さて,レジュメ作ろ。

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如月カウンセリング事情

2013-02-01 18:34:22 | 司法試験関連

http://www.itojuku.co.jp/shiken/shihou/follow/counseling/koushi_counseling/yoshino/index.html

如月のカウンセリング・スケジュールを既に発表しました。今月は,収録スケジュールと,レジュメ作成スケジュールがあまりに超タイトなので,東京校4時間だけにさせて頂きました(さすがにこの時季にカウンセリングなしは無いなと思ったので)。お茶の水の2時間枠は今月だけ休止とさせていただきます。弥生はまた復活させますのでご了承下さい。

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