新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

インドの瀉血療法:お金がないために医療が受けられない社会にはなってほしくない

2013-08-04 15:46:28 | 医療

こんにちは

 

少し古い記事ですが少し気になったので紹介します。

 

インド貧困層で続く「汚れた血を抜く」治療

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130731-00000033-jij_afp-int&pos=2

AFP=時事 7月31日(水)16時28分配信

【AFP=時事】インド、オールドデリー(Old Delhi)の暑い日差しの中、3児の母リラバティ・デビさんは、微動だにせず立つ。その腕の血管を、施術者と助手が探る。やがて、施術者はカミソリを手に、デビさんの肌に慎重に切り目を入れて「汚れた血」を流れ出させる。

切開の痛みに顔をゆがめる患者【写真8枚】

 デビさんは、持病の関節痛が、「医師」モハメド・ギャス氏(82)による伝統治療の「瀉血(しゃけつ)」で治ると信じている。

 血が流れ出る手に助手が冷水をかけ、灰色のハーブ粉末をまぶす中、デビさんはAFPの取材に「科学と近代医学では治らなかった」と語った。イスラム教徒のギャス氏による治療だけが「深刻な関節痛を止められる唯一の方法だった」という。

 瀉血は数千年前から19世紀末まで続いたが、近代医学によってうち捨て去られ、取って代わられた

 しかし、医療費が支払えなかったり、医師を信頼できなかったり、診療のために長期間待たなければならないようなインド国内の一部の貧困層や遠隔地の共同体では、瀉血のような手法が好まれている。

 インド最大のモスク、ジャーマ・マスジッド(Jama Masjid)の裏手にある青空診療所には、毎日約50人の患者が列を作る。ギャス氏は、まひから糖尿病、果ては子宮頸がんまで治療可能だと述べている。

■汚れた血が全ての疾患の根本

「治療の基本教義は、全ての疾患の根本が汚れた血にあるという考えだ。汚れた血を除去すれば、健康問題は解決される」と、ギャス氏は語る。ギャス氏は父親から治療方法を学び、この診療所で40年以上治療をしてきた。

「汚れた血の流れを追うことが最も必要な技術。切開は無作為ではない。全ての血管を調べる必要がある」とギャス氏は説明する。

 施術者は血管の閉塞やもつれ、塊やこぶを発見し、切開して除去し、血流を改善する。

 ギャス氏は患者から治療費をとらない。患者の多くが貧しいからだ。だが、患者は助手におよそ40ルピー(約60円)を支払うという。「私のもとを訪れる人々はほとんどお金を持っていない。そのような人々から何を取り立てるというのか」

 ギャス氏は、店舗経営をしている息子から生活の支援を受けている。別の息子は後継者として修行中だ。

「私たちの治療は他の伝統医療と同じ。人々の健康が大切だから、営利目的の医師にはならない」と、息子のモハマド・イクバル氏は語った。

 インドには世界レベルの医療施設があるが、国民の多くは治療費を支払うことができない10年間の急速な経済成長により、政府の貧困層や遠隔地共同体への支出も増えたが、人口12億人のニーズをかなえるほどの公共医療制度はまだ存在しない

 だが、瀉血治療を受ける人の全員が、安価な最後の手段として利用しているわけではない。治療の成功例などを聞き、治療効果に期待して受ける人もいる。

 4年前、交通事故で身体に障害を負ったジャヤント・クマルさん(42)は「前は立つことも、座ることもできなかった」と語る。「今では支えてもらわずに歩くことだってできる」【翻訳編集】 AFPBB News

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さて、この記事から思うことは2つ

1つめは瀉血療法というものがいまだにやられていることです。

有名な話ですが「ジョージ・ワシントン」は急性扁桃炎(咽頭炎?)+肺炎で亡くなったといわれていますが、実際は治療を受けて当初は800mlの瀉血を行い、改善がなかったのでさらに瀉血を繰り返したところ死亡したといわれています。

 

実際に今の現代医学で瀉血を行うとすれば「多血症」に対する瀉血療法くらいではないかと思います。

 

それが今も行われていることには驚きました。

 

そしてもう一つ、最も重要なことは世界レベルの医療技術があっても、多くの国民が医療を享受できない…という話です。

 

日本国内では「世界レベルの医療技術」を国民のほとんどが同様の医療を受けることができます

 

確かに…一部の政治家さんとかが「病院上層部に圧力をかけ」で無理やり親族を入院させるようなことも行われたりすることもあるようですが、そういう常識はずれの事が行われなければ「平等」に医療を受けることができます

 

ここまで極端ではないですが、運が悪いと・・・TPPで国民皆保険制度が壊された場合は、このようなことが生じていくかもしれないということですね。

お金がなければ先進医療は受けられないような社会にはなってほしくないと、医師として心からそう思っています。

 

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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コメントの返信です

2013-08-04 10:58:04 | 医療

こんにちは

 

金曜日は多発性骨髄腫に関して三浦先生の講演会があり、聞きに行っておりました。また、昨日は14:30~19:00ころまでの「悪性リンパ腫」のシンポジウム(2年に1回開催されている国際カンファレンス(ICML)の報告)を聞きに行っておりました。

こういう会で情報を仕入れていかないと、医学の進歩は速いので。

 

さて、コメントにいろいろなお話をいただいております。それぞれ参考になったり、なるほどと思ったりしております。ありがとうございます。

 

これは個人的にコメントの返信でしかないのですが、同じコメント内に公開してもよいものと、ここから先は公開しないでほしいというものとが混在していたので、このような形でコメントの返信をさせていただきます。

 

では、いただきましたコメントです

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 30日の産経新聞に以下の記事掲載がありました。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130730/bdy13073008040005-n1.htm
希少白血病に分子標的薬 治療選択肢が拡大

 記事の「オファツムマブは・・・(略)・・・Bリンパ球の表面にある「CD20」という分子に結合することでがん細胞を破壊し、効果を発揮」という記述に反応。ネット検索したところ、NHLに対しては治験中だと気付きました。
http://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/clinical_trial/T3936.html
http://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/clinical_trial/T3810.html

 上記治験は第III相とあるため、以下の資料(3ページ目)から治験の最終段階に入っていると理解しました。承認申請と審査とに1~2年程度の時間がかかるとのことなので、治験にて有効性と安全性とが確認されたとして、オファツムマブが保険適用にてNHLの患者も利用可能となるのは3年以上先かなと思った次第です。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1030-8c.pdf

 オファツムマブ開発の経緯については不知ですが、CLLに対する治験とNHLに対する治験とを同時にすることはできなかったのかなと思ってしまいます。また、アンフェタミンさんは「ハイドロキシウレアとかは十年以上放置」と書かれていますが、NHLでの承認が放置されることのないようにと思っています。

 さて、私は6回のR-CHOP点滴後に12週に1回の別の点滴治療を行ってきたところですが、8月5日(月)に8回目の点滴を行うことで終了です。しばらくは経過観察に移ると説明を受けています。点滴1週間前から点滴針の恐怖と戦っているような状態なので、点滴からの解放感(もちろん、R-CHOP終了時の解放感のほうが大きいです。)でうれしい気持ちもありますが、不安が大きくなって行くのかなという予感もあります。
 R-CHOP点滴中は外出を控えたりしましたが、次の点滴治療中は普通の生活を送ることができました。分子標的薬だから安全とは言えませんし、オファツムマブの体に対する負担については不知ですが、普通の生活を送りながら治療できるということが最重要課題です。オファツムマブ利用可能となる日が早く来てほしいと思っています。もちろん、一番の期待事項は再発しないことです。

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リツキシマブとオファツムマブは同じCD20に対する抗体ですが「大ループ(リツキシマブ)」と「小ループ(オファツムマブ)」で結合部位が異なります

CLLのようにCD20の発現が弱いものでもオファツムマブは結合できるということ(リツキシマブよりも有効であった)もあり、治験に入っております。

 

ちなみにこの話でどうでもいいことですが、うちのカンファレンスで少しだけ無駄話をしました(オファツムマブを使用する予定の方がいるので)。オファツムマブ併用CHOPはR-CHOPではなくてどう呼ばれるのか・・・。

O-CHOP

CHOPO(チョッポ・・・と僕が言ったら、弱そうだからそうは呼びたくないといわれましたw

CHOOP(これも微妙w)

・・・まぁ、普通に考えたらO-CHOPなんでしょうね。

 

Rituximabのメンテナンスは実際に2ヶ月一回でやると保険で見えてしまいます。3ヶ月一回であれば、保険ではある月に1回リツキシマブが入っているなぁ・・・ということになります(何をしているかはわかっていると思いますが)。

うちの大学も3か月に一回です。

 

オファツムマブのCLLでのデータはありますが、NHLでの効果はわかりません。今後はさらに新しい薬剤が多数入ってくると思われますが(分子標的薬ですね)、それらの組み合わせによる治療が行われるのだと思います。

 

昨日もリンパ腫の話を一日聞いておりましたが、まだまだ改善すべきところは多いと思っています。

 

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