新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

防風通聖散の肥満に対する効果解明:追加で漢方医学と西洋医学を少し紹介

2013-10-21 21:53:37 | 医学系

こんばんは

 

今日は輸血学会のシンポジウムに参加されている(というか大学の代表者会議ですかね)先生の外来の代診(新患は閉めていたのですけど、来ちゃった人は診ていました)を少しやっておりました。やっている間も思っていたのですが、体がだるい。なんでかしら・・・と思っている今日この頃です。

 

そういう疲れていて頭が回らないときは、単調作業をやることにしています。患者さんのリストの情報収集などですね。なんも考えずに情報を打ち込むだけですので、ずれたりしていなければOK.いつもなら苦痛に感じる単調作業もこういう時は気になりません。

 

で、こういう「疲労感」を感じるときには補中益気湯を飲むんですが、通常数日で回復します。

 

ということで、今日は漢方薬のこんな記事からです。

 

横浜市大が肥満への漢方薬効果を解明/神奈川

2013年10月20日
 横浜市大医学部の研究チームは19日までに、内臓脂肪型肥満に対する漢方薬の改善効果を科学的に解明することに成功した。食欲増進ホルモンを低下させるメカニズムを世界で初めて発見、24日から開催される日本高血圧学会総会で発表する。

 肥満症はメタボリック症候群を経てさまざまな生活習慣病の原因になるが、治療は食事、運動療法による減量が中心で成功例が少ないのが実情。一方、漢方薬は日常診療で広く使用されているが、効能のメカニズムは大部分が不明。今回の研究成果によって、西洋医学の知見と組み合わせた統合医療が前進しそうだ。

 発見したのは田村功一准教授ら循環器・腎臓内科学の研究グループ。肥満症、動悸、肩凝りなど高血圧の随伴症状に効能・効果があり、医師が処方した場合には保険が適用される漢方薬「防風通聖散(つうしょうさん)」を対象に、厚生労働省の助成研究として2010年度から12年度まで効能・効果のメカニズム解明に取り組んできた

 研究グループは、内臓脂肪型肥満、高血圧などの生活習慣病を発症させたマウスに防風通聖散を投与。体重、餌を食べる量、血圧、脂肪組織、糖脂質代謝に対する治療効果を検証した。

 試験観察では、脂肪を燃焼させる基礎代謝を担う褐色脂肪細胞が活性化した一方、皮下脂肪などの白色脂肪細胞の小型化が促進されることが分かった。血液検査では、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の低下、脂肪細胞から分泌される抗動脈硬化ホルモンの上昇も認められた。餌の摂取量が減少したことから、食欲抑制のメカニズムを解析したところ、食欲増進ホルモンのグレリンの血中濃度低下を確認。体重や食事量の増加、血圧上昇が継続して抑えられた。

 漢方薬は日常的な診療でさまざまな疾患に対して処方されており、厚労省が設置した「『統合医療』のあり方に関する検討会」は「食生活やストレスなど複合要因によって起こりうる疾患については、近代西洋医学だけでなく、漢方、健康食品など各種の民間療法が広く患者、国民に利用されている実態がある」との認識を示している。

 田村准教授は「肥満症は、薬品や手術による治療法もあるが、副作用などから適用はごく一部の重症患者に限られている。処方されることが多い漢方薬の作用メカニズムの一端が解明されたことで、西洋医学との併用によって効果的な治療につながる」としている。
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ということで、僕は漢方薬の勉強を少しだけした程度の人間でしかありませんが、少しだけ。
 
まず、漢方医学と西洋医学では大きく異なるのが漢方は治療が優先、西洋医学では病態が優先です。わかりやすいので西洋医学から行きますと、西洋医学は病態を解明(病理診断)して、病気の原因に対して治療を行います。漢方医学は積み重ねてきた治療の歴史が中心で、「こんな人にはこの薬が効く」という経験から始まった治療医学です。
 
X軸とY軸があって、理想が中心だとすると病気はどちらかの方向にずれているので、そのずれを戻してあげる感じでしょうか。すなわち同じ系統の疾患でも、ずれた方向が異なれば違う治療薬が来ます(同病異治)。逆もあるわけですが(異病同治)。
 
 
まぁ、簡単に書きすぎかもしれませんが西洋医学は「病気を中心に患者さんを診る」感じで、漢方は「患者さんに合わせて処方する」感じだと思います。病気の症状や患者さんの状態に合わせて処方する感じでしょうか。
 
さて、ここで出てきた防風通聖散、昔僕も務めていた病院に入れてもらったりしましたw
僕がいなくなった後誰も使わないといわれていたらしいですが・・・。
 
さて、この薬は昔から内服開始後の最初の2ヶ月で基礎代謝が上昇するというのは言われていました。その効果が「褐色肥満細胞の増加」なのかもしれません。
 
他にも機序不明だった漢方薬の機序が有名雑誌に投稿されたりしたものはいくつかあります。僕の大好きな五苓散とか。溢水状態では利尿作用なのに、脱水では水分貯留(尿量減少)に働く機序がわからない・・・と思っていたら、血管内外の水の移動を妨げる効果だったということでしたね。
 
 
さて、防風通聖散の基礎代謝を上げる効果、僕も太った高血圧の患者さんで、若干便秘がちな人には好んで使用していました。ちなみに防風通聖散は一般的に「熱証」で便秘がちな方の下剤です。石膏が入っているから体を冷やす方向に持っていきますので、寒がりな方が飲んでもね・・・という気はします。まぁ、熱証って「熱がりで冷房を入れたがり、赤ら顔で乾燥した舌をしていて、高血圧、高体温の傾向がある便秘がちな人」といわれるんですがね。
 
 
 
ということで、漢方薬は証がありますので全員が同じ効き目ということはないかもしれません。ただ、証を考えて使うと結構いいです。
 
ちなみに実家の犬(先日死にましたが)が僕が研修医終わったくらいの頃(札幌にいたので、実家住まいでした)に腫瘍ができて、食事も食べられなくなりやせ細っていきましたが、先ほど言った補中益気湯を飲んだ後は元気になりました。正直、「動物でも効くんだなぁ」と思ったものです。
 
 
僕は西洋医学中心ですが、二番煎じとして漢方薬を使用できるようにしています。前も書きましたが、そのほうが診察時に2倍楽しめる(と書くと怒られそうですが、西洋医学の診察方法と同時に漢方医学の診察も考えられる)ので、よいと思っています(患者さんにとっても)。
 
 
時間があったらもう一度漢方の本を読み直そう。体調の悪い時は本を読むに限る(考えずに吸収するのみ)。
 
 
さて、明日は少し調子が良くなっているとよいなぁ。
 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。

コメント (5)
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