こんにちは
今週は当直。研究会が続いたため、嫁さんが実家に戻っております。先程、掃除・洗濯などをして今から本でも読もうかねぇと思っていたところでした。
その前に一つ記事を。
いつも当科のカンファレンスがあまりにも長く、学生が参加してても何かに取りつかれたように頭が下がっていってしまうので、患者さんの症例ごとに何か1つだけ教えようとしております。そうでなければ血液内科に関して学生のイメージが悪くなってしまう(笑
ちなみにカンファの時間は約3時間から4時間。わからない人間にとっては苦痛以外の何物でもありません(笑
先日のカンファでこんなことがありました。
糖尿病の評価でよく用いられる「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」というものがあります。あまり血液疾患ではこの指標を用いませんが、たまたま初発の患者さんだったということでそれを評価に用いていた患者さんがいました。確かに貧血はほとんどなかったので、それほど大きくずれることはないのですけど。
HbA1cはヘモグロビンA1という物質の糖化したものの割合を示しています。赤血球の寿命は120日ですので2~3か月くらいの間に糖化した赤血球の割合を見ることができ、それが長期の血糖コントロールを反映するため役に立つわけです。
血液疾患(それ以外でもよいですが)ではこういうことが起きえます。
たとえば、溶血や出血のあと「赤血球が急速に失われる」けど「赤血球産生能力は正常(高い)」場合は、糖化したヘモグロビンも含めて短期間に失われるだけでなく、新しいものがどんどん産生されてきますので「HbA1c」は見かけ上低値になります。
一方で血液疾患で産生に障害があると「グリコアルブミン」などを参考にした値と比較して、やや高値になります。なんといっても本来は一定割合で新しい赤血球が作られるはずなのに、それが作られてこなければ古いものの割合が増えますよね。
その辺を一生懸命説明していましたが、わかった学生さんは「なるほど」という顔をしていたのですが、どうしてもひとりの学生さんが納得がいかないという顔をしていました。
そこでさすがに
「あのさぁ、いったい何がわからないの?」
と聞いてみたところ
「いえ、理屈はわかるんですけど、なんでHbA1cをはからなくてはいけないのかがわからなくて・・・」
・・・・
・・・・・・
・・・目からうろこ・・・・という感じでした。
「・・・・そこか。そうか、わかった」
本来は、そういった理屈は臨床実習に入る前に勉強してくるものだと思いましたが、もしかすると理屈を教えていないのですかね。数値だけ説明して…(汗
そこで、こう説明しました。
「まず、血糖値に関しては短期的には当然それをはかればいい。ただ、長期的なものを反映しているかはわからない。例えば、いつもは暴飲暴食している人がいる。甘いものが好きで甘いものばかり食べている。お酒も好きでよく飲みもする(両刀使い?)。けど、健康診断とかでいろいろ言われたくないから数日前から節制したりすると血糖値は正常だったりする。そうだね、日常では血糖170~200mg/dlくらいで実は経過しているんだけど、受診するタイミングでは100mg/dl前後に頑張ってみたりするとか。受診の時だけよくても、それって患者さんの本当の数値ではないよね?」
「はい。そうですね」
「そこでHbA1cという物質が役に立つわけだ。この物質は短期的な変化ではなくて、2~3か月の変化を反映するものだから、そういった直前だけ頑張っても数値に大きな変化はない。これがHbA1cというものを測定する理由」
というような話を説明したところ、納得してくれました。
僕も「当然知」前提で話しているものを「学生が知らない可能性」を考える必要があると、少し思いました。今回は学生が質問するタイプ(勉強していたかどうかは知りませんが)だったので、そのままにならずに済みましたが・・・。
本当に「目からうろこ」と思うことがあります。
学生さんだったり患者さんだったり、このblogにコメントをくださる皆さんからいろいろ学ばせてもらっています。
医者が勝手にわかるだろうと思って話してはいけないなぁ・・・と本当に思いました。
けど、HbA1cをはかる理由は臨床実習前に勉強しておく必要がありますが(汗
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
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それでは、また。