未来技術の光と影。
SIYOU’s Chronicle




故人のDNAを含む木を「生きた墓標」に
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20051108201.html

他界した後も人間のDNAを生き続けさせる方法を、イギリスのアートグループが編み出した。
遺伝子組み換え技術の神秘的な応用法だ。ゲオルク・トレメル氏と福原志保氏が設立した英バイオプレゼンス社は、亡くなって間もない愛する人のDNAを木に注入し、その木を生きた記念碑にしようと考えている。
簡単に言えば、バイオプレゼンス社は、木にすでに存在する核酸の冗長なトリプレットの下に人間のDNAを載せる。これらの冗長なトリプレットは木において実際に発現することはなく、余分な情報の保存を可能にしてくれる。

人は様々な方式で、自分の愛した者の記憶を、後世に残そうとする。やがては記憶が薄れて行ってしまうことを知っているからこそ、何らかの物質的な形態にその姿や想い出を留め、愛する者の生きた証を残そうとするのだ。

中世の画家は、主に肖像画を描くことにより、生活の糧を得ていた。やがて写真が発明されると、その役割は写真に取って変わり、最近はビデオやDVDも、その一躍を担っている。

また一つ、新たな技術が、悲しみに暮れる人々の心の支えになろうとしている。


「ご依頼の、奥様の遺伝情報をあなたのDNAに書きこむ件ですが、ちょっと問題が発生しました。」
「どのような問題でしょう。」
「既に彼方のDNAのトリプレット下には、なんらかの人為的な情報が、びっしりと書きこまれておりまして、新たな遺伝情報を書きこむ余地が、まったくありません。」
「つまり、私の遺伝子の間隙に、何者か別の人物の遺伝情報が、既に組み込まれていると、言うのでしょうか。」
「正確に言いますと、遺伝情報ではありませんね。なんらかの電子情報のようです。」
「コンピュータのデータみたいなものですか?」
「ちょっと、解析してみましょう。・・・どうやら、PDFファイルのようですね。」
「内容は確認できるんでしょうか?」
「お父様は、生物学者でいらっしゃいましたか?」
「いえ、ごく普通の、サラリーマンですが。」
「そうですか。では、非常に志の高い方だったようですね。」
「・・・。いや、そんなはずは、ありませんけれどもっ。」
「人類の犯してしまった過ちを、後世に語り継ごうと計画されたようです。絶滅危惧種に関する情報が、パンフレット形式にまとめられていますね。」
「『イリオモテヤマネコ』とか『アマミノクロウサギ』とか、ですか?」
「ええ、そうです。何か思いあたる節があるんですね。」
「ええ。生前は、それが原因で、母と口論が絶えませんでしたから。」
「アマチュア研究家かなにかでしょうか。」
「確かに、HPを開設するほど、熱中していましたけどね。父はチョコに付いてるオマケの類を集めるのが趣味だったんですよ。それは、その中でもお気に入りの『日本の天然記念物』シリーズです。自分のコレクションの存在を、何とかして、後世に残したかったんでしょうね。」

「ひとつ、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「なぐさめならば、いりませんよ。」
「いえ、純粋に、学術的な興味からです。」
「なんでしょう。」
「夢の中に、頻繁に『オマケ』が出て来たりしませんか?」

「それの、どこが、学術的な興味なんですか。でも確かに、見たこともない映画やアニメのキャラの名前が、ひとりでに解ることがあるのを、不思議に思うことが良くありますよ。」
「本当ですかっ!それが、本当ならば、今までの常識を覆すような、凄い発見ですよっ!!」
「いや、単に、子供の頃は、おもちゃがそれしか買って貰えなかったんで、いつもそれで遊んでいるうちに、潜在意識に摺れこまれただけのことだと思いますよ。」

「・・・まっ、そりゃ、そーでしょうね。コレクションは、まだ、ご健在ですか?」
「いえ。父が亡くなって直ぐに、母がネットのオークションで処分してしまったようです。」
「そうですか。・・・では、このことは、お母様には内密にしておいた方が良さそうですね。」


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