「ちょっとすいません」
夜の11時半ごろ、31歳の男性が千葉県柏市の路上であたかも道を尋ねるような口調で若い男にそう声をかけられる。
立ち止まった次の瞬間、声をかけられた男は隠し持っていたナイフで首や背中などを刺されて亡くなった。
男性が襲われた前後10分の間には別の男性3人が刃物で襲われ、指を切られたり財布や車を奪われる事件が起こっていた。
連続通り魔事件の容疑者として竹井聖寿24歳が逮捕される。
知らない人から道を訊かれることはよくあることである。
たいがいは親切に道を説明し、教えられた方も感謝の言葉をかける。
他人同士とはいえ、人としての最低限の信頼がある。
それを疑い始めるときりがない。
竹井容疑者は過去に小動物を虐待したり異常な行動が明らかになってきているが、声をかけられた他人にはそんなことはわからない。
もし、今回の事件の教訓として、他人から声をかけられても安易に受け答えしないという選択をした人がいたとしても、そのことを責めることはできないかもしれない。
読売新聞のコラムには『答えはない』と書かれてある。
もし、この先誰かに道を訊かれても、たぶん僕は教えると思う。
こんな異常な人間は極稀だと思うから。
でも、こんな事件が頻発したらどうだろう。
警戒して、受け答えをしなくなるかもしれない。
他人を見たら泥棒と思えということわざがあるが、他人を見たら通り魔だと思え、そんな世知辛いことわざを頭に入れて道を歩かなければいけなくなるのかもしれない。
そんな世の中には絶対なってほしくないと切に願う。