昼から仕事になった彼女を見送りに幡ヶ谷へ。
ぶらり。
甲州街道を少し新宿方面にもどると、なんだこれ?
一つの店に3つの名前がついている。
月曜 「どっかん」背脂煮干醤油
火曜~金曜 「我武者羅」長岡醤油
土日 「弥彦」新潟味噌
曜日によってスープが変わり、店の名前も変えていると言うことか。
初台や代々木にもそんなみせがあったなあ。
今日は濃厚みそ味。辛かったりカレーしているのもあるけれど、
私たちのチョイスは、基本の濃厚味噌。
がっつりでした。がつんと来るみそ味を受け止める太麺は、湯がくにも時間がかかり
なんか力仕事で力こぶが入っています。
カウンター越しに兄さんがゆでを上げて、女性2人がスープとサービスを担当しています。
体育会系です。きれいな笑顔です。食べる方も心してスタートラインにつきます。
臭みの無い豚骨スープは味が深い。魚介も負けないくらいに海を泳いでいます。
みそ味天下一品だい。どろりとしたスープをすくうのが、口二つ分くらいの大玉レンゲで
ギャグだそうです。
方向性が統一されているので好感がもてて、気持ちよく汗をかきかきすすらせていただきました。
腹ごなしにぶらりと笹塚へ。
10号通りは昼から大にぎわい。八百屋さんに魚屋さん、威勢のいい声が街に住む実感です。
開店したばかりの石窯ベーカリーは花輪と人の列で賑わっています。
歩いて楽しい街、団子でも食べようかなとおもいつつ、ここは我慢。
京王新線にのって初台に向かいます。
コーヒーを求めてやってきたのが、駅からすこし裏通りに入り、
事故がどれほど出会い頭に起こるだろう、と複雑な気持ちになる、
病院近くの五叉路の分け目に立つ黒い外壁のお店です。
ZAROFFさん。代々木郵便局に夜、未配達の書留なんかを取りに行く帰りに前をとおって
気になっていたお店です。
店の前の黒板には、珈琲500円~としか書いてませんし、
ガラス窓からのぞく店内はクラシカルな木製テーブルと椅子が並んでいます。
開店しているのかどうかもよく分からない扉をあけると、
良い音質のクラッシック音楽が流れてきます。
でも、人影も、お迎えの声もあがりません。
お出かけかな、と一瞬思うと、立ちすくみました。
細く伸びたカウンター奥から振り向いた、目力が印象的な店主に射すくめられたのです。
もちろん、低いかすれた声。あんまりにも見た目通りの声です。
値踏みされてると感じるような感じ、という言い方が合うかな。
最初何を言われたかもわからないけれど、少なくともいらっしゃいませ、とかこちらへどうぞ、
とかいったセオリーのご案内でないことはたしかな言葉をかけられました。
「喫茶ですか展示ですか」だったような気がします、あとで考えると。
というのは、2階がギャラリーになっていると、メニューに書いてありました。
店内は私一人。
緊張しながらブレンドを頼みます。
ガラス瓶から豆を出して、グラインド、KOHNO式のペーパードリップ。
苦み4,酸味1とランク付けされた珈琲は、透明な黒い質感があって、
しっかり苦みがエッジングされています。舌先にわずかな酸味に、
雑味がないのですっきりしています。
これで500円は相当コスパが高い、と普通なら声を上げてほめるとこですが、
どうやらそうしたお愛想が必要な店主でもなさそうに見えます。
気圧されたままなのも悔しい、と思いつつ、本を開けばこの音楽だけ聞こえる静かな空間は
決して店主に気遣いをする必要がないという確信があるために
心がうちにこもって、読み進める神経をとぎすますには絶好の場所となったのでした。
高村 薫「冷血」 上巻のほぼラストという盛り上がり具合も支えになったようです。
30分ほど座って、支払いをすませると、次の客がやってきました。
女の子をつれたお父さんです。
どうやら常連らしく、女の子が微笑むので振り返ると、あの店主が小さく手を振っています。
そして笑ってます、店主。
なるほどね、だから人間はおもしろい。愉快な気分になって、初台を坂下に降りて、
いつものディスカウントスーパーOKで、午後の買い物を楽しみ、
お菓子を買いすぎるのでした。
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