犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国便り~ソシュール友達との再会

2009-04-22 23:51:21 | 韓国便り(帰任以後)
 言語学者フェルディナン・ド・ソシュールがジュネーブ大学で『一般言語学講義』という歴史的な講義を行ってから,約100年が経とうとしています。

 かねてより,書籍として刊行された『一般言語学講義』(小林英夫訳)は,実際に講義を聴講していない弟子たちによって編纂されたもので,実際の講義内容を正しく伝えていないという問題点が指摘されていました。

 日本では,中央大学の故丸山圭三郎教授が精力的に研究し,1980年代に数冊の本を著して,「ソシュールの実像」を紹介しました。ちょうど私が大学時代に,丸山氏が出張講義をされていて,たいへん興味深く授業を聞いたことを覚えています。

 丸山氏はその後独自の言語哲学を展開されたあと,90年代前半に亡くなりました。おそらく氏の仕事に触発されたのでしょう,その後,ある日本人の学者が,実際に『講義』に参加していた生徒のノートを筆耕し,フランス語で出版しました。

 それが日本語に翻訳されたのは,21世紀に入ってから。3回にわたる講義ノートの翻訳が完結すると,今度は最も重要といわれる第三回講義が,別の訳者によって翻訳されました。

 つい最近,その翻訳を購入した私は,今回のソウル出張の往きの飛行機の中で読んでいたのですが,ふと思い出した友達がいる。ソウル駐在時代に知り合った韓国人が日本に留学中,やはり丸山圭三郎の「ソシュール学」に興味をもち,研究したとのことで,えらく話が弾んだのですね。彼(T氏)は,以前このブログに登場したことがあります(→リンク)。

 T氏とは,私の帰任以後,それっきりになっていたのですが,ソシュールを読みながら彼のことが思い出され,到着した仁川空港から連絡してみました。幸い,帰任時に聞いていた携帯の番号はつながった。日程を聞いてみると,私の出張の後半はすでに予定があるという。今日ならいいとのことで,1年9カ月ぶりに旧交を温めることができました。

 夜8時に私の宿泊ホテルで待ち合わせ。

「何食べようか」

「犬鍋さんとなら,ポシンタンしかないでしょう」とT氏。

「じゃ,サリチプにしよう」

ということで,北倉洞(プクチャンドン)へ向かいます。トマコギ(犬の蒸し肉)をつつきながら,話が弾む。

「最近,登山にはまってるんですよ。今週末も,チリサンです」

 チリサンは全羅道の名山。智異山と書いて,チリサンと読む,不思議な山です(本来ならチイサンのはず)。

「ソウルの山はあらかた登ったけど,智異山は行ったことないなあ」

 実は,私のソウル生活の最後の2年,登山のおもしろさに目覚め,毎週のように近場の山に登ったことがあります。

「智異山はいいですよ。雪岳山と双璧です。今度いっしょに行きましょう」

「泊まりがけは,出張のときは無理だなあ。今度,マイレージで遊びに来るよ」

「ぜひそうしてください」

 犬鍋屋は10時で閉店ということで,近くの行きつけのBARへ。馴染みのアガシは健在でした。

「あら,Tさん,お久しぶり」

 アガシはT氏とも旧知の仲です。

「あれ? 前は別のところで会ったような」

「あ,明洞ね」

 アガシはいろいろな所を渡り歩いていて,以前,T氏と行ったのは明洞のBARでした。前回の出張時に飲み残したスコッチブルーを傾ける。なんかいろんな話をしたようですが,よく覚えていない。

「明日から仕事だから,そろそろ行こうか」

「そうしましょう」

と言って店を出たものの,

「せっかく久しぶりに会ったから,もう一軒行きましょう!」

というT氏に引っ張られ,かの有名なポクチャンドン式個室バーへ繰り出す。酩酊状態のまま,夢のような時間が過ぎたあと,ホテルに戻ったのは午前2時をまわっていた。

 出張初日でいきなりこれです。翌日のきつかったこと…。

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