東野圭吾はさまざまなタイプのミステリーを書いています。 学園ミステリーとかスポーツミステリーとか。『魔球』はスポーツミステリーの一つで、最初期の作品。舞台は高校なので、学園ミステリーとも言えますが。東野圭吾のデビュー作は、1985年に江戸川乱歩賞を受賞した『放課後』。『魔球』はその前の年、1984年に江戸川乱歩賞で最終候補作になるも落選。 講談社から単行本化されたのは、『放課後』(1986年)よ . . . 本文を読む
家にあった東野圭吾の作品をランダムに『白夜行』、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、『宿命』、『夜明けの街で』と読み継いできて、作風や構成の多様さに目を瞠りました。 初期の作品から順番に読んだら、作風の変化がわかるだろうと思い、年末にブックオフで5冊ほどの代表作(主に文学賞受賞作品)を買ってきました。『放課後』 略歴によれば、東野圭吾は高校2年生のとき(1974年)、小峰元『アルキメデスは手を汚さない』を読 . . . 本文を読む
※ ネタばれなし 恐ろしい小説です。 推理小説というより、不倫小説と言ってもいいかもしれない。 本書は、「不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。」という一文で始まります。 メインストーリーであるはずの殺人事件が出てくるのは、68ページ目(文庫版)。 その後もストーリーは「不倫」を軸に展開します。 そして事件の種明かしが終わった後、恐怖の結末が待っています。 本書は2004年から雑誌に連載され、200 . . . 本文を読む
※ ネタばれなし 年末、大掃除の合間に読み進み、例によって夜中に読了しました。 1990年発表(講談社文庫1993年)というから、東野圭吾の作品としては比較的初期の物。 刑事になった主人公が、高校時代のライバルと恋人に再会し、ある事件を追います。 殺人事件はボウガンという武器(弓)が使用されていましたが、東野圭吾は大学時代にアーチェリー部の主将だったそうですので関係があるかもしれません。 推理小説 . . . 本文を読む
※ネタばれなし『白夜行』の次に手に取ったのは、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(2012年KADOKAWA刊、2014年角川文庫)。 日曜日、一日で読了しました。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、2012年に第7回中央公論文芸賞受賞、2017年に日本、中国で映画化されたそうです。 日本だけでなく、世界中でベストセラーになり、2023年8月、全世界で1500万部売れたというとんでもない数字が発表されています。『白夜行 . . . 本文を読む
※ ネタばれなし 少し前、知り合いから本を勧められました。「『白夜行』って読んだことありますか?」「いや。誰の作品?」「東野圭吾です」 東野圭吾はミステリー作家で、ミリオンセラーをいくつも出しているはず。私はミステリーの熱心な読み手ではないので、ほとんど読んだことがありません。「とにかく、すごい作品です」「そう? こんど読んでみるよ」 私の家の書架には、私の蔵書以外に、妻が読んだ本、4人の娘たち( . . . 本文を読む
選挙の少し前、行きつけのカフェに行きました。 そこには地元の選挙区から今回の選挙に立候補した、ある候補者のパンフレットが置いてありました。「ああ、この人、前にお店で会った…」「よく来ますよ。事務所が近いからね」 前に会ったとき、三味線を持っていて、今時珍しい人だなあと思いました。 私の亡くなった伯母が小唄の師匠だったこともあり、三味線に関して二言三言、言葉を交わしたのです。「選挙に . . . 本文を読む
写真:『ユンボギの日記』海賊版(クルポッ社) ユンボギの不幸(貧困)の元凶は両親でした。 父親の飲酒、遊び(賭け事、女)、家庭内暴力のせいで、母親は4人の子どもたちを捨てて家出しました。「少年家長」として父を含め家族5人の家計を支えたのが「ガム売り少年」のユンボギでした。「日記」を読んだ担任の柳英子先生は、ユンボギに同情し、励まし、ときには自分の弁当を与えるなどしましたが、それ以上のことはできませ . . . 本文を読む
写真:『ユンボギの日記』出版を伝える新聞記事 前の記事で、「ユンボギの日記」の単行本化に関わったのが、ユンボギの通っていた国民学校の教師の金東植と、知り合いの朴進錫という作家であるということ書きました。 小学校4年生が書いた日記には、字の間違いや表現のつたなさがあったでしょうから、それを教師の金東植やその友人で小説家の朴進錫が多少の修正を施したことは容易に推察されます。 しかし、それだけではなく、 . . . 本文を読む
写真:映画「あの空にも悲しみが」(1965年)のポスター 自分の日記が出版され、ベストセラーになり、映画化もされて、「時の人」になったユンボギ(李潤福)が、その後も貧困から抜け出せず、苦労の多い生涯を送らざるを得なかった、というのはちょっと不思議です。 小学生の日記を世に出したのは、ユンボギが通っていた明徳国民学校の教師、金東植(キム・ドンシク)先生。 金東植は『ユンボギの日記』の序文で、「在日同 . . . 本文を読む
写真:ユンボギこと李潤福(1990年頃)『ユンボギが逝って―青年ユンボギと遺稿集』第3部から、ユンボギの一生を振り返ります。 ユンボギの家は6人家族。父は大邱で木工職人をしていた。 父が仕事で腰を痛めてから、仕事がうまくいかなくなり、酒を飲むようになった。酒癖が悪く、女遊びやギャンブルにも手を出して、母に暴力をふるった。母は、生活苦と父の仕打ちに我慢できず、ユンボギが小学校に入る前に家を飛び出した . . . 本文を読む
『ユンボギの日記』を読んでから数年後、『ユンボギが逝って―青年ユンボギと遺稿集』(白帝社、1993年刊)という本が出ました。『ユンボギの日記』よりも、ある意味でショッキングな内容でした。 その本によれば、『ユンボギの日記』(韓国語版原題は『あの空にも悲しみが』)の著者、李潤福は、1990年に38歳という若さで亡くなり、その長くない生涯がけっして幸せなものではなかったということなのです。 本書の著者 . . . 本文を読む
12月はいろいろなお祝い事がありました。 17日は四女の誕生日、23日は長女の息子(私の孫)の誕生日、25日はクリスマス、26日は三女の娘(私の孫)の誕生日。 三女家族は同居しているので、クリスマス兼誕生日に、2冊の絵本を買ってやりました。『てぶくろ』(エウゲーニー・M・ラチョフ 著、内田莉莎子訳)『三びきのくま』( L・N・トルストイ作、バスネツォフ絵、小笠原豊樹訳) どちらも福音館書店から出 . . . 本文を読む
2017年に刊行されて芥川賞候補になった、温又柔(おん・ゆうじゅう)さんの『真ん中の子どもたち』を読みました。 著者の温又柔さんは、1980年台湾生まれ。3歳のときに東京へ移住。台湾語混じりの中国語を話す両親のもと、日本で育ちます。 小説の主人公は、著者の分身ですが、著者とは違って、父親が日本人、母親が台湾人、本人は日台のハーフという設定になっています。 母語とアイデンティティーの問題をあつかっ . . . 本文を読む
韓国で、太宰治の『人間失格』が売れているんだそうです。 韓国の民音(ミヌム)社は、自社の「世界文学全集」の1冊として翻訳版を2004年5月に発行。2022年の6月に100刷(約30万部)に達したと発表しました。 「世界文学全集」には、400以上の作品があり、その中で100刷を超えたのは、J・D・サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」、ヘルマン・ヘッセ「デミアン」、ジョージ・オーウェル「動物農場」な . . . 本文を読む