クリンの広場

たまっこくりんのおもいのたけ

『変な家』雨穴(感想)

2022-06-09 | 本と雑誌

つながりで・・

去年発売されて、話題になった本

を 読んでみました

 『変な家』(雨穴・著)
おもしろかったです。

 ストーリーは、主人公が  とある中古物件の間取りに

ふしん(不審)を抱き

いろいろ   しらべまわったところ、

ある一家の、ものすごい「闇」にぶつかった

という

いんねん(因縁)話・・

「不動産ミステリー」というカテゴリーにぞくする、

目新しい作りの  ノンフィクション仕立て小説

です

 その家は   窓がたくさんあって、一見明るそうに見える

なのに、

なぜか、二階の子ども部屋には 窓がない。

 

一階にも 

用途のわからない なぞ(謎)の空間があり、

(よくよく考えていくと、なんだか・・怖くない

っていう 

家なんです。

 他にも、あと二軒

同じ目的で設計された、

いびつな間取りの家が 出て来ます。(図面で)


果たして、

その三軒の家に共通する  "目的”とは・・?


 雨穴(うけつ)さんという、YouTuberが Web上に発表して

たちまち大評判になった

とのことですが、

(ひょうばんになるだけあるな~🐻)

って

かんしんしました。

 

 

(読んでたらさむくなりました・・つゆざむ(梅雨寒)が加速するような、怖い本でしたね。

次回もブックレビューです

 

 

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桜ふる小説・15(ヒキタクニオ『凶気の桜』感想)

2022-04-14 | 本と雑誌

 日本という国において、桜はしばしば

死や国家と リンクする花です

その「発展型」として、

平成の アンダーグラウンドを切り取った

『凶気の桜』(きょうきのさくら)

という

社会派小説が あったので、読んでみました

(書いたのは、現代アーティストのヒキタクニオさん。
全く存じあげませんでしたが、マルチメディアクリエイターとして名のある方だそうです

 さて、その小説の内容・・

こわいので ちょっとしか書きませんが、

東京の繁華街で 

恐喝強盗レイプなど、

悪逆無道のかぎりを尽くす若者三人組「ネオ・トージョー」が、

本物の極道と関係したことで、

三人とも 命をけずられるはめに、やがて陥る。

 

・・・(ってな話)


 (映画化もされています)

桜の花の描写は、

ちょっとしか出て来なくて

シンボリック(右翼とかの)に、タイトルされているだけ

 

そして、「ネオ・トージョー」は

ナショナリズムのなんたるか?

は、わかっていない、半グレです。

 クリンたち、ぼう(暴)力シーンや

犯罪シーンのオンパレードだったから、

読むのが とてもつらかった・・

ただ、、

作者がくわしく取材してきた、ブラックマーケットのこととかが

書いてあって、

「ヤ〇を仕込んだ絵画を、国際モダンアートビエンナーレみたいな公募展に出品するというていで、日本に持ち込む

とか・・


いくつか、(へえ・・)と 思うところがありました。

 

 ちょっと・変わりだねの「桜小説」を 読んでみて・・

 

まことに、桜という花は

人をよろこばせたり、

まどわせたり、

狂わせたり、

たぎらせたり、

死なせたり、

生き返らせたり、

考えさせたり・・

 

すごい花だよなあって、あらためて、実かん(感)いたしました

 

 

【おすすめ度:

 

 

(🐻以上をもちまして、「桜ふる小説特集」は 終わります けっこう・おもしろかったな自分では

ここまで、お読みくださいまして、ありがとうございました

 
 
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桜ふる小説・14(五味康祐『桜を斬る』感想)

2022-04-13 | 本と雑誌

「剣術モノ」から、

が、あざやかに浮かび上がる名品を 

ご紹介します

 ごみやすすけ(五味康祐)の『桜を斬る』

です。



 児玉清さんが、『人生を変えた時代小説』にえらんでいた

短ぺん(編)ですが

 3代将軍・家光時代の「寛永御前試合」のようすが

短く・したためられていて、、

 剣技を描いたものの中では、
出色です


グダグダ書かないのに、

キラッと閃いて

サッと終わる。


 読者は、「ふがっ👀!?と 

結末におどろく

 

そんな、切れ味するどい・物語

 五味さんには、『薄桜記』のような

本格長へん(編)も ありますが

こんなふうに

こだわって書かれた 短ぺんには・・

 

ほんと、かっこよくて 参ってしまいますね🐻

(すみません あらすじを書いちゃうと意味ないよな・・と考え、書かなかったら・・

何にも分からないレビューになってしまいました

でも・・、剣と同じようにペンを研ぎ澄ましていった「達人の境地」をかんじられる・イッピンでした~

 

【おすすめ度:

 

 

(次回最終回ヒキタクニオの『凶気の桜』で、しめてみます🐻)

 
 
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桜ふる小説・13(宮部みゆき『桜ほうさら』感想)

2022-04-11 | 本と雑誌

「人情話」に 心安らいだクリンは🐻

つづけざまに、もう一冊

人情時代小説を 手に取りました。

 宮部みゆき『桜ほうさら』です。


 

さくらほうさら・・

 (どこの言葉)かと思えば、それは、甲州弁の「ささらほうさら」のひねり

で、

そもそもは「色々あって大変だったねっていう・いみ(意味)

だそうです。

 この主人公は、そんな「ささらほうさら」な

目にあった

若き・さむらい(侍)です

 

<あらすじ>

 時は江戸後期・・ 地方藩士・古橋笙之介は、

父が、濡れ衣で切腹に追い込まれた真相を

探るべく、

江戸に出てくる。 

 背後には藩内の派閥抗争があり、

それに巻き込まれている兄の存在が 

見えかくれ・・

 と、まあ・・ 江戸時代小説には

よくある筋立てで、

実は、かなりはじめのほうで、

犯人の一人が わかってしまいました

 でも そんな表面上のことは さておき、

この物語の「味わうべき部分」は、

主人公を取りまく

江戸の町人連中のあたたかさ

に あります。

 ともすれば、黒い巨悪に立ち向かうだけのつらい読み物を、

おもいっきり和らげる

深川の長屋の住人たち・・

これが

わんさか出てきて、いやされるし

 主人公も、実直で やさしい侍だから、応えん(援)できます

 ざんねんながら・・ 主人公の家族というのが

すさまじく・利己的で、

「肉親だからこその憎しみ

この小説の「隠れテーマ」だったりするし、

・・・

さらに

どうしようもない悪党も 出てきて、

「闇深な言葉」で 

主人を きずつけたりもするのですが、、

 いっしょに きずつきながらも、

さいごはスッキリと 

読み終える・・

 そして、読者は、さくら

ずいしょう(瑞祥)のように

やさしく場面を 転かん(換)させるのを

見る

 

そんな・小説でしたね

 

 

【おすすめ度:(3.8くらい)】

 

 

(※次回は、五味康祐の『桜を斬る』を ご紹介します

 

 

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桜ふる小説・12(平岩弓枝『夜の桜』感想)

2022-04-10 | 本と雑誌

男性作家の手で、都合良くかれる

小説の女たち、、

しかし 

女性作家の手にかかれば、

その じゅんしん(純真)さが、きわだって光ります

 平岩弓枝『夜の桜』には、そんな女が

出てきます。

 (あらすじ

 

「おこの」は、

少女のころから びんぼう(貧乏)してきた、苦労人

これまで、ろくな男に 逢って来ませんでした

しかし

近ごろ、店にやって来る・お侍は、

見るからにカタギで、なんかやさしい・・


(・・もしかしたら、目的があって

自分に近づいてきただけかも しれないけど、、

ちょっとだけ、信じてみようかな

と 

心を ゆるしかけた・矢先

お侍がやっぱり、八丁堀の役人

自分の情夫がからむ犯罪を 内偵していただけだった、、

 と知って、きったタンカ!!

(が、ステキだったんです

「誰が・・・誰が、あんた達のいうことなんかきくもんですか。・平吉が訪ねてきたら自首させろ・・・冗談じゃない・・

誰が、あの人を訴人するもんですか・・・殺されたって、はりつけになったって・・・私はあの人を裏切りゃあしない。口惜しかったら、あたしを縛って牢屋にぶち込むがいい・・・

 

ふん、なんだい、侍のくせに、女に惚れたふりをして淫売屋に日参するのがお役目かい。

お前なんぞに、女の気持ちがわかってたまるかい・・・

惚れたら、女は・・・いつだって、命がけなんだ・・」


 

ちなみに、彼女が守ろうとしている平吉は、そこまで実のある男では ありません

 でも、、かばってしまう・・(それが女心)



さすがは、『御宿かわせみ』の作者・平岩弓枝先生です。



【おすすめ度:この「夜の桜」が入っている『花房一平事件帖』全体を合わせて、

 

 

(次回は、宮部みゆきの『桜ほうさら』です。人情時代劇はつづく

 

 

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桜ふる小説・11(なかにし礼『さくら伝説』感想)

2022-04-08 | 本と雑誌

 女のごう)と

結びつけた物語は 多々あれど

 男の本能が全開するさまを、

「桜に棲むあやかしのせい」にして、

400ページにわたり

官能的に つづってしまった

 なかにし礼の『さくら伝説』

レビュー・いきます!!


 

主人公は、大学の先生。

32歳の時、桜の名所で出会った20歳の女子大生をナンパし、やがて妻にします

が、その後

54歳で、24歳のムチムチ娘に出会い、その肉体開発に 夢中になります

 

その娘は、

かつて、自分が捨てた女の娘である。

と知りながら・・

 とにかく、ベッドシーンが延々描かれていて

ほぼほぼ、「渡辺淳一」。

 しかし、わたなべ先生の男性主人公より、

身勝手度が高めな

なかにし礼の男性主人公は、

「色欲の餓鬼」との記述が ピッタリはまるほど

そっちのタガが 外れており、、

 

さいごは

ムチムチ娘と ぼうじ(房事)の最中に

ふくじょうし(腹上死)しかかって

地位とめいよ(名誉)を なくしますが、

 

たいして 後悔しません。

 それどころか 妻、愛人、自分の3人で交わって

「これぞ完璧な解決法」とのたまい、昇天する・・

という、

しあわせな終末(?)を むかえます。


・・・・・

 なかにし礼さんが、主人公のようなアナザーライフを 

ゆめ(夢)みていたのか

はたまた、

男性の理想を ただ・ぶちまけただけなのか

わかりませんが・・

 もう少し、社会性のあるテーマをもつ作家で

なおかつ大衆の心をつかむ・作詞家である

との 

「なかにし礼像」を 抱いている日本人は

多いでしょうから、、

この官能小説には、ドン引きするのでは ないかと、ふと・心配しました

 

うちのチットいわく、

・・20代前半の女が、自分より30歳年上の、

しかも、母親の元婚約者に対して、

『私・・、あなたにならオモチャにされてもかまわない。あなたに人生をめちゃくちゃにされたいの

みたいな嬉しがらせを、言い続けてくれるわけがない。

最初の3ヶ月くらいならまだしも。

 それに・・、浮気を知った妻が 愛人に対して、

『夫にそんなにまで大きな幸せを与えてくれてありがとう

って

直接、感謝の意を述べるとか、

ありえないでしょ。。

 しかも、主人公の男は心臓がわるくて、年中、薬飲んだり病院かかってたりしてるんだよ

そんな、、生命体としておとろえている、

なおかつ・ウンチク好きなエロおじさんに

メロメロになって、

その名を身体にタトゥーまでする女たちが、

いったい、どこにいるのよ

 

いないから

 

・・・と

 

ひとしきり・ほえたあと、

 

・・いないから、わざわざ小説に書いたのか。」

って、気がついていました



【おすすめ度:

 

(一応、「桜鬼(おうき)が人の心を狂わせる」っていう小説なんです文章は うまいから、ヨシとしましょう

久しぶりに、ハラハラしたい人や、あと、頭を冷やしたい人には、、すごくおすすめです。。)


 

 

(※次回は、平岩弓枝『夜の桜』です。←さわやか

 

 

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桜ふる小説・9(世阿弥『西行桜』解釈)

2022-04-05 | 本と雑誌

長く生きた・木には、

「樹木として以上の何か」が 

宿っている気が するものですが・・

 お能の『西行桜(さいぎょうざくら)』

って・演目にも

そんな、老木のせい(精)が あらわれます。

 

 

~「西行桜」(世阿弥)~

 平安末期の僧・西行は、

今年も「ひとりしずかに花を愛でたい」

と 

考えていました。

なのに

自分のところの桜が美しいため、遠方から花見客が来てしまって、

うんざり。

「せっかく山のほうに住んでいるのに、結局は人が来ちゃうのかよ。桜のせいだ

と 
ため息を ついていました。

 そんな・西行の夢に、桜の精があらわれて・・ 

 

「桜に何の罪があるのですか? 

浮き世に住むのも、山にこもるのも、人の心が勝手にしていることでしょ

しごく・もっともな 申し開きをされてしまい、

西行は、

ぐうの音も 出ないのでした。

 

(※踊っておしまい)


「 願はくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のころ 」  

と 詠んで、

春に死んだ、西行。

 後世の風流人が、みんな、(その気持ちわかる~

と 

共めい(鳴)しながらも・・

 

「先越された感」や、

「それ言っちゃう?感」から、

内心・しっと(嫉妬)を おぼえたであろう

ストレートな 名歌です。



(・・自分だって、そういう最期には憧れるけど、

そこまで口にするのは、遠慮して出来ないものを。

西行、あつかましい

桜は、、みんなの心で、シェアするもの

桜は・・

あんただけのものじゃないんだからね!!


 という・・軽い反発から
世阿弥がこのストーリーを考えてたら、

ちょっとおもしろいな~

って 思いましたにんまり🐻)

 

 

 

【おすすめ度: ※お能を観て味わう作品ですね

ちなみに 世阿弥はとっても西行をリスペクトしているんですよクリンはうがちましたが・・🐻

 

 

(次回は、安珍清姫伝説、「道成寺」を とりあげます

 

 

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桜ふる小説・8(水上勉『櫻守』感想)

2022-04-04 | 本と雑誌

宇野千代も あい(愛)した

銘木「淡墨の桜」・・

同じ木を見て、一筆したためた

 昭和の小説家、水上勉の『櫻守』

今日は とりあげます (名作です



~あらすじ~

 京都。昭和初期。

庭師の弥吉は、

門跡寺院のかかりつけである・植木屋で 働いていましたが、

ある日、

桜の研究家として日本一の名声を誇る竹部庸太郎のお抱えとなり、

広大な桜林の手入れを 任されます。

 以来、桜ひとすじ・ン十年

その間、

結婚したり

兵隊にとられたり

無一文になったり

再び、竹部先生に協力したりしながら

あちこちの消滅危機桜たちの 延命、助命に奔走・・

弥吉は死ぬまで、桜のために かけずりまわりました。


「寡黙な職人の、ひたむきな情熱をキラリと描く感動秘話

と、

一言でかたづけていいような ありがちなものではなく、

 細やかな教よう(養)と、作者の人徳が透き通った桜文学である

読めば、わかります

もちろん

「人間いうもんは、山の木と同じで、放っておくとジャングルになる。

つるにまかれて ゆがんでしまう。」

なんていう・名言も

ずいしょに 

ちりばめられては いますが・・

 そっちに重きをおくよりも、

みずみずしい・ひっち(筆致)

柔らかい京言葉

春のあたたかさを 

かんじてもらいたい、名文

(・・さいきん、桜を見ても、昔ほど感動しないんだよなあ~

都会の桜も、名所の桜も、、俗っぽくて

おかんじの あなたに・・

 山桜のキレイさを 思い出させてくれる作品です




【おすすめ度:

 

 

(※次回は、世阿弥の『西行桜』を、読みます

 

 

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桜ふる小説・7(宇野千代『淡墨の桜』感想)

2022-04-02 | 本と雑誌

天才作家(梶井基次郎)ホレ

りゃくだつ(略奪)を試みた

という人妻が、いるそうです。

 それは、うのちよ(宇野千代)です。

クリンたち🐻、

おばあちゃんになってからの宇野さんしか

知らなかったのですが、

 

 若いころは、さまざまな才人たちから、モテモテだったらしい

そんな、恋多き女流作家に

『淡墨の桜(うすずみのさくら)』

という・小説が あるので、

今日は、それをとりあげます

(実は、 同じ「淡墨の桜」という名の、お線香があるんですよね

仏前にはちょっと・あだっぽすぎて、

いつも、いわかんを かんじております。。)



~宇野千代『淡墨の桜』、概要~


 淡墨の桜は、実在する・岐阜県の名木

樹齢1200年なのに、たいして見る人もいない、

さびしい巨木でした。

 ある日、その木を見に行った・有名着物デザイナーの某女史

は、

衰弱する木の姿に 心打たれるものを感じ

「保護活動」に のり出すけど、

 それを、超資産家の、因業ババアにジャマされる

 

桜は、存続できるのか

・・・・・

(ってな、女のバトル話です


 名声をもつ「着物デザイナー老女」が、権力をもつ「資産家老女」に

ちょいちょい・プライドを きずつけられ

逆に 

とうし(闘志)を もやしていく・・

 その心もようが おもしろく 読んでいて、

ぞくぞくしました。

 それと並行して
若い男女の恋の話

まじってくるのですが・・

その若い女性の容姿が、

(男性作家ではこうはいかないよな)と 

きょうたんするほど、

あざやかに 描かれています。

 女性としての視点で、をてってい的に見つめたからこそ・書ける

 また、何がしかの地位をもつ老女の、のごとき手強さを

みずから知る

宇野千代先生ならではの 作品。。

 



昭和40年代の地方や、

バブルのころの東京を

たん(端)的ながらも

しっかりかんじられるのも、よかったです。

 

 女友だちどうしで読んだら、次に会った時に、この話だいが止まらないでしょうね




【おすすめ度:

 

(※次回は、同じ「淡墨の桜」を見たことがある、水上勉の小説『櫻守』をレビューします

 

 

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桜ふる小説・6(梶井基次郎『桜の樹の下には』感想)

2022-04-01 | 本と雑誌

桜に「魔」をかんじとった作家は

古今にあれど、

「桜の樹の下には屍体が埋まっている

と 

言い切って、

近代作家としての地位を かく(確)立したのは

 かじいもとじろう(梶井基次郎)です。

 彼の手になる『桜の樹の下には』

 

それは、

ぼうとう(冒頭)の「衝撃的なフレーズ」以外、

人々の記おく(憶)に定着しにくい

作品ですが、

このたび、たった3ページほどの その短文を読んで・・

 クリンたち、しびれました

 説明できるような・ストーリーじゃないんです

でも・・

もとじろうは

れんそう(連想)の幻視を かさねながら

「なぜ自分が、桜を見て『死体が埋まっている』と考えざるを得ないのか?

 らくらい(落雷)のはげしさをもって、

読者に 叩き込んでくるのです



 クリンたち・・🐻 何回か読んでいるはずなのに、

今回初めて、

そのすごさがわかって びっくりしたので

ちょっと この人物(梶井基次郎の来歴)を、しらべたくなりました。


そしたら・・

 かなり・はちゃめちゃな、マグマ男であることが、

判明しました

 ~梶井基次郎・略歴~

 

明治34年、大阪生まれ。

第三高等学校の理科に入学したのに、

文学へ傾倒しすぎて、後に東京帝国大学に文科で入学する(あたまいい

女性には全くモテなかったけど男友達はたくさんいて

才能あふれる友人を相手に 夜な夜な談義して青春を謳歌。

功利主義を低俗とみなし、精神面で偉大になろうと決意するも、一体何をしていいか分からず懊悩・・

享楽におぼれて色々やらかしつつ、学問、芸術、スポーツとまんべんなく熱中しそれらから、すべからく最良のものを吸収。


(と並行して、)

実家のいざこざや自らの不健康など、不安定要素が 突き刺さり・・

 

ちょっと精神を病んだ(かな、、)


なお 京都の「丸善」にレモンばくだん(爆弾)を 仕かけていたころ、

数々の伝説も のこしています💣💣💣

 ~梶井基次郎、伝説(※wikiより適当に抜粋)


🍋漱石が好きすぎて、どこに何が書いてあるか?すべて暗記。

🍋「肺病になりたい。肺病にならんと、ええ文学はでけへんぞ」と三条大橋の上で叫んで胸を叩く。

🍋酔って大の字に寝ころび、「俺に童貞を捨てさせろ」と大声で叫んで遊郭に登楼。

🍋酔って愛宕参りの団体客の部屋に裸で乱入。

🍋和歌山で海水浴中、崖から飛び込んで海中の岩で鼻を怪我。

🍋酔って料理屋の池に飛び込み、鯉を追っかけて、出禁となる。

🍋京都のカフェーでヤクザと喧嘩し、左の頬をビール瓶でなぐられる。

🍋東京でも、赤門前のカフェーで客と喧嘩し2階から転落。飲み屋で明治大学の不良と大喧嘩。
etc・・


・・・・・

なかなかの あらくれっぷりです。

 とはいえ もとじろうは、きほん、「義理人情」にあつく

すぐれた人には すぐにかんか(感化)される

ホットな交流を求めた

才子であることも 同時にわかりました。

 

(ピュアです)


 結核が進行し・・、帝大を中退した年に

もとじろうが書いたのが、

『桜の樹の下には』、、


クリンたち、

 俺には惨劇が必要なんだ」

といった、この夭折の天才が、

(なにゆえ屍体を想像したか?)

このたび、しっかりと、わかってしまいました。🐻

 

 

【おすすめ度:

 

 

(※次回は、基次郎がホレた宇野千代の『淡墨の桜』という作品を、とりあげます

 

 

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桜ふる小説・5(坂口安吾『桜の森の満開の下』感想)

2022-03-30 | 本と雑誌

満開をすぎて

おびただしい花びらが 散るころになると

思い出すのが、

 坂口安吾の、『桜の森の満開の下』です。


それは、

桜が持つ、恐るべき・まりょく(魔力)を 読者に思い起こさせる

一冊で、

 このたび・再読したら、あまりに けっさく(傑作)なので、

夜、眠れなくなりました。

 ~あらすじ~

平安時代、鈴鹿峠に山賊がいました。

およそ悪事のかぎりを尽くしてきた山賊でしたが、

ゆいいつ満開の桜の森を通りかかると へんな気分になるので

苦手でした。

ある日、

山賊はすごい美人の人妻をさらって来ますが、

この女が おそるべきワガママで、

山賊はふりまわされっぱなし。

女の求めに応じて

都ぐらしを始めたものの、

夜な夜な、都人の殺害を 命じられる日々・・。


 女は、人間の生首をコレクションする、鬼だった。。

しかして

鬼女と山賊にふりかかる、桜吹雪のラストシーンは

い・か・に


っていうお話。

 ひとけとネオンがあっても、夜桜見物って ちょっと・こわいです

 しずしずとふりそそぐ山の桜なら、なおのこと、ぞっとするでしょう。

 みんながおそれ、幻わく(惑)される桜、、
 その花を使って、おどろおどろしい・平安絵巻を 仕立てるなんて、
 

坂口安吾の 

すごみを、かんじます。。

 凡人がマネしたら、ただの中二病になるでしょうね

 

 

【おすすめ度:

 

 

(次回は、これまた桜の怖さを見抜いて恐れた梶井基次郎の『桜の樹の下には』を 読みます

アレが埋まってるとか言うんですよね、サクラの下に・・🐻)

 

 

 

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桜ふる小説・4(歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』感想)

2022-03-28 | 本と雑誌

小説、もう一本。

『葉桜の季節に君を想うということ』

(うたのしょうご:歌野晶午)、

レビューいきます!!

 今風なタイトル・・。

こういうのって、出版社がつけてるんですかね?

(このタイトルからするに、相当ロマンチックな内容だろうなあ~・・

・・きっと、臆面もなくストレートに、「若い恋愛」つづられているにちがいない)

 と、、かくごをもって 読みはじめた・クリンたち

ところが、

 1ページ目冒頭――「射精をしたあとは動きたくない。」

(かくごは、軽く越えられてしまいました

 ちなみに、「恋愛小説」ではなく、

「探偵小説」でした

しかも

数々のしょう(賞)をとった、本格ミステリーです

 読んでみてのかんそう(感想)は、あっという間に読み終わる。

って ことと、

この作品に似たものを、以前どこかで読んだおぼえがある。。

この二点です

 とくちょうは・・ 
平成以こう(降)の作家に共通する、

「軽妙で互換性のある」文章スタイル

 

万人から みとめられる、そつのない・てんかい(展開)、

あなどれない取材力と、計算されたプロット、

ところどころにちりばめらる・名言

スピードかん・・



純文学好きには 
ちょっと引っかかり

ブンガク好きからは しょうさん(賞賛)のあらしがおこる

あのたぐいの、とてもおもしろい小説です。 

 主人公はもと・たんてい(探偵)で、

老人をカモにする・「蓬莱倶楽部」(悪徳業者)が 

関わっているとみられる

殺人事件を 追いますが・・

 

この主人公が

とても向こう見ずの、フットワークの軽い、バイタリティーあふれる、女好きのせいぎかん(正義漢)

だったものですから、

 クリンたち、コロッとだまされました。


何にだまされたか?

それを言っちゃうと 全部台無しだから 

ぜったい言わないけど、

(え!?!?えええ~!?!?!?

えええええええ~~~、、

ああ~・・

なるほど・・

そっか。。そうだったんだね。。)

てな、

だまされ方を しました。

 いわゆるどんでん返しに、後からはたと気づく、、

(そういや、あちこちにヒントがあったな、、)

と。

 

作者の歌野さん・こんしん(渾身)のあざむき

さいごは、気が抜けて 終わりました

(※そして、「葉桜の季節」というタイトルワードも、

その秘密に関わって来ていたんです。

アア~ン🐻

さいしょっから、なんか「違和感」かんじてたのになぁ~~~

 

 

【おすすめ度:

(実はその「どんでん返し」の内容が根本的なものでして・・、クリンたち🐻「未熟」だからまだ受け入れられていないんです・・ でも、まちがいなく楽しめるミステリーでしたよ

 

 

(※次回は、坂口安吾の『桜の森の満開の下』を、とりあげます

 

 

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桜ふる小説・3(太宰治『葉桜と魔笛』感想)

2022-03-27 | 本と雑誌

 亡くなった日に「桜桃忌」の名がつく、さくらんぼ作家・だざいおさむ(太宰治)・・

 彼の手になる・「最高の桜小説」といえば、、

『葉桜と魔笛(はざくらとまてき)』でしょう


(※うちのチットが高校生のころ、国語の教科書で出会った、乙女小説です

 ~甘ずっぱい・ストーリー~

日露戦争中の1905年、

島根県のあるまちに住む主人公(ハタチの女性)には

病気の妹が いました

18歳になる妹は寝てばかりでしたが、

どうやら病にたおれる直前に 別れた男性がいたようで・・

 妹の部屋から、男性が送ったラブレターを30通も見つけてしまっ

お姉ちゃん(主人公)は、

妹がもう処女じゃない、ということを知って

ドキドキしながらも、

(・・この子、病気になったから捨てられたんだ。)

と、

妹を ふびんに思いました


そして、
一計をあんじます。

 別れた男になりすまして、妹にラブレターを書いたのです

ごめんね、僕が弱かったばかりに、、君は全然悪くない。愛しています

って 書かれた、

なぐさめのラブレター・・。

余命いくばくもない妹は その手紙を読んで、、


(以降ネタバレなし


 若々しく、せんさいな、桜の花のごとき小さな物語


これを、

男性が、

しかも、太宰治みたいな人が書いたという事実は

何か、ステキないたずらでしょうか、、


 どんなに・こわれた「毒男」でも、この作品のつくり手であるかぎり、

太宰のつみ(罪)は 

すべてゆるされる・・

4月の教室で、気持ちよく読んだのを 
ずっと忘れない。」

って、

うちのチットが 言ってました


【おすすめ度:


(※次回は歌野晶午の、『葉桜の季節に君を想うということ』をレビューします

コメント (15)
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桜ふる小説・2(太宰治『桜桃』感想)

2022-03-26 | 本と雑誌

 戦前の教よう(養)人にとって、ロシア文学は

「一種のバイブル」だったようですが・・、

中でも、

チェーホフに ドはまりして

『桜の園』を下じきにした小説まで書いたのが、

だざいおさむ(太宰治)です。

(※太宰治は、『斜陽』の中で、
没落華族の女性に自分と思われる主人公に宛てたラブレターを書かせ、「マイ・チェホフって言わせるかぶせよう・・)

 そして、今回とりあげる太宰作品『桜桃(おうとう)』
にも

やはり、

チェーホフは、オーバーラップしています。🌈

 



~『桜桃』出だし~

「私は家庭に在っては、いつも冗談を言っている。

それこそ『心には悩みわずらう』ことの多いゆえに、『おもてには快楽』をよそわざるを得ない、

・・いや、家庭に在る時ばかりでなく、私は人に接する時でも、心がどんなにつらくても、からだがどんなに苦しくても、

ほとんど必死で、楽しい雰囲気を創ることに努力する。」

 いつも後ろ向きで、ぜつぼう(絶望)的な太宰にしては、

がんばっているかんじです。

 

・・・・・

太宰治があこがれた・チェーホフ

は、

びんぼう(貧乏)家庭に育ち、苦労したそうですが、

 ネクラ(根暗)にな
らず、いつも 家ぞくをはげまし

未来を信じて前に進もうとするつよさを 失わなかった

って ききました。

(そういえば、小説の中にも、前向きな青年が出て来ます

『桜桃』の出だしで「自分、努めて明るくしてます

と宣言した、太宰治・・。

(走れメロスに通じる陽の部分が出たのかな?)

こっちも元気に 読みすすめたのですが・・

 そこから5行くらいで、いつもの暗い「太宰節」が、

シャッて出て来て だまされました。。

 (以下要約)


明るい態度は「あえて」なのに、
人々はそれに気がつかない。
それどころか「軽薄だ」とさげすむ。
いや、それより、
人々が気づかないどころか、
妻ですら、
気がつかない。

オレがこんなに苦しんでいるのに、、

 彼のごとき、めんどくさい「破滅型男」に

かかわりたくない

クリンたちには、

この私小説について

的をいたかんそうは、述べられないでしょう・・。

 でも、この『桜桃』には、この作家の心の真ん中の部分が

したためられており、

 

読者は、そこから血が流れるさまを、はっきりと見ることが できます

 彼の命日に「桜桃忌(おうとうき)」の名がついた理由が

この本を読んで、

とてもよく わかりました。

 

 

【おすすめ度:

 

 

(🐻おうとう(桜桃)って、サクランボのことでした~桜小説じゃなかったですね今さらだけど・・

※次回は、同じく太宰治より、『葉桜と魔笛』という、奇跡のステキ小説をとりあげます

 

 

コメント (10)
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桜ふる小説・1(チェーホフ『桜の園』感想)

2022-03-24 | 本と雑誌

桜小説特集」なのに、いきなりの 外国文学ですが、

 チェーホフの『桜の園』から、行かせていただきます!!

(ロシアの文豪ですね 

帝政末期のロシアが舞台の物語なんですけど、今話題の・・ウクライナのハリコフとかも出て来ます)

 

 「桜の園」・・

それは、南ロシアにあった、

きぞく(貴族)の おやしき。

そこに出もどってきた、うれいを帯びた中年女性が、

主人公です。

 ってきくと、(ハーレクインロマンスでも始まっちゃうのかな

と、

いっしゅん・桃色気分になりますが、

そんなじゃなくて・・

 実はこの「桜の園」は、借金まみれで、

抵当に入っており

主人公たち「貴族一家」が 

おっとりしている間に・・

あれよあれよで 

けいばい(競売)にかけられ、買い取られてしまう

 

それも

かつて自分ちの、のうど(農奴)だった男に、、

という・・

ソ連の足音がきこえる、「階級制崩壊話」なのでした。

 「桜の園」に咲く桜は、

ほろびゆく・とっけんきぞく(特権貴族)の 

しょうちょう(象徴)のように 咲き

ラストで 切り倒されます。



けっきょく、

貴族一家も

バラバラに りさんして 終わります。


 ただ、作者チェーホフは、

「没落の哀切とかを メインに 

描きたかったわけでは ないらしく・・

 

そこに 文章化されていたのは

世間知らずなきぞく(貴族)の ドタバタと、

社会にんしき(認識)のちぐはぐが 

生み出した、

「悲喜こもごも」でした。。


 ロシア革命の少し前に書かれた・本作は、日本でも

大正時代に ヒットして

若い知しき人に、

かんめい(感銘)

あたらしい時代への予かん(感)を 与えたそうです。

 日本でも、当時・同じようなもんだい(格差社会)が

大きくなっていたからだ

って ききました。

 先日・・この件で、お母さんと 話していたところ

戦後の大学生は、

「ロシア文学といえば、ドストエフスキーやトルストイ」

で、

「チェーホフやツルゲーネフは、女子供の読むもの」

という・扱いだったそうです。

 それをチット(親友)に話したら、

 

 戦前と戦後の差かね~。

誰の、どんな主張が重要視されるかは

その時々の世情が関わってくるから・・

後世の人たちが 自分たちの感覚でおしなべては、いけないんだよね」  

 

という、、

 

わりあい・じゅうよう(重要)なことに 気がついていました。

 

 


【おすすめ度:←戯曲なので読みにくいんですよね 演劇でご覧になったほうがよろしいかと存じます

 

次回は、チェーホフにドはまりした太宰治の『桜桃』を 取り上げます

 

 

コメント (13)
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