昨年暮れに桜さんからいただいた「羊を数えるCD」のことで、
書こうと思っているうちにだいぶ日がたってしまいました。
どんなのかというと、眠れない子のために、優しい声のおにいさんが
「羊が1匹~羊が2匹~」と数えてくれるっていう…
えーと、あまり詳しく書くのはまずいので、
いや別にまずくはないか、まあそれはちょっとおいといて。
この「眠れないときには羊を数える」というのが、
ずいぶん長いあいだ、よくわからなかったのです。
数えてみたってぜんぜん眠くならないんだもの。
むしろ、数えることで頭が覚めちゃって眠れないです。
そもそも、どうして羊なんだ?
と疑問に思って調べてみましたら、
「羊はいっぱいいて、みんな似てるからではないか」
という説がみつかりました。
つまり単調だから飽きて眠くなるというわけです。
なるほど。
猫だったら三毛とかぶちとかトラとか黒とか白とか、
いろんなのが次々出てきてちっとも飽きないものね。
それがじゃれたりけんかしたりして数えられないだろうし。
さらに調べると
「sheep(羊)がsleep(眠る)と似てるから」
という説にいきあたりました。
「シーッ(静かに)と似てるから」
「寝息を連想するから」というのも。
そうか。
これは英語の国で生まれた英語の呪文なのですね。
日本語だと「ひつじ」って単語そのものがちょっと言いにくいです。
「ひ」「つ」「じ」で、それぞれ口の形が違う。
特に「ひ」は口を横に開いて、喉にも力が入ります。
ちゃんと発音しないと「執事」になっちゃう。
執事がいっぱいいても困る。
「sheep」なら、あまり口を動かさなくても言えるじゃない。
試してみましょう。
目をつぶって、ゆっくり深く呼吸する。
息を吐きながら「シーープ」と思い、
息を吸いながら「いっぴき」と数える。
「シーープ」「にひき」「シーープ」「さんびき」…
おお、これならなんとなく眠れそうではないか。
もうひとつ、大事なことがありました。
1匹2匹と数えた羊は、そのあと、どこへ行くのか、です。
じつは、わたしの頭の中では、羊は1匹ずつ柵を飛び越えて、
広い野原に出て行くことになっていたのでした。
数えれば数えるほど、羊は拡散していく。
どこへ行っちゃうかわかりません。
柵のこっちがわでは、まだ数えてない羊がうろうろ。
こんな落ちつかない状態ではやっぱり眠れないでしょう。
どうして「出て行く」と思い込んでしまったんだろう。
羊飼いが羊を数えるのはどういうときかを
想像してみればわかることだったのに。
放牧地に散らばっている羊たちを呼び集めて、
夜は囲いの中に入れるわけですよね。
オオカミが来ると困るから。
そのとき柵のところで1匹2匹と数えながら入れて、
全部戻ってきたかどうか確かめる。
数えれば数えるほど、羊は囲いの中にたまっていく。
もうどこにも行きません。
静かな夜です。
羊たちは眠ります。
ふわふわ。
もこもこ。
すやすや。
このイメージと「シープ呼吸法」を併用しますと、
たしかに、10匹くらいでふわふわと眠くなってきます。
それに不思議とリラックスする。
言葉のマジック。
わたし、今はそうでもないですが、
かつては非常に寝つきの悪い子どもでした。
あのころに知っていればよかった、
正しい羊の数え方。
で、冒頭のCDの話に戻りますが、いくらプロとはいえ、
マイクの前でひたすら羊を数えるのは疲れるでしょうね。
わたしだったらぜったい途中で「ひちゅじが」って言って
全部やり直しになっちゃうと思う。