サンゴロウの絵についてのご質問をまとめました。
回答は、描いた人です。(ちょっと長いです!)
◆直美さんから。
>私がサンゴロウシリーズに惹かれたのはなんと言っても表紙でした。
>かっこいいサンゴロウと海のモチーフに釘付けでした。
>表紙では『ほのおをこえて』とドルフィンの『光のカケラ』が特に好きです。
>ドルフィンシリーズはサンゴロウシリーズよりも絵具がしっかり塗ってあるように
>見えるのですが、それぞれどんな画材で描かれているのでしょうか?
『旅のはじまり』が1994年7月出版なので、絵のほうは、
正確には覚えていませんが、その年の春ころに描いたのだったと思います。
最初の表紙のイメージはもっとシンプルなスッキリした物でしたが、
シンプルすぎるのでは、という出版社の意見で今の方向になりました。
少しクラシックで木のレリーフのようなイメージで、
周りにあれこれ海的な物を楽しんで描きました。
ところが絵として完成したのですが、本の表紙として、
タイトルや装丁という意識で見ると、”楽しんで”という部分が多すぎ、
どうもごちゃごちゃと多く描きすぎてうるさい、という気がして、
ひとつ消し、ふたつ消し……ようやく今の形になりました。
せっかく描いたのに、という気持ちもありましたが、
大局的判断で消しました。
調子良く筆が動いたり、気分が乗るのは良いことなのですが、
時々後ろに下がって、客観的に見ることも大事と反省しました。
ですから原画を見ると、ホワイトで絵を消した跡がずいぶん残っています。
以後、2巻からは、1巻のイメージをさらに広げたり、
ちょうどフランスの小さな島に行ったりして仕入れた、
昔の港町の雰囲気を心がけました。
ドルフィンシリーズは、出版社も違うこともあり、
サンゴロウとは意図的に変えた表紙にしました。
サンゴロウはスミ線に淡彩ですが、ドルフィンは
絵の具で地色を塗った上に描いています。
絵の具はどちらもアクリルガッシュです。
(閑猫記:ドルフィンについてはまた別にまとめますね)
◆美雪さんから。
>この原画は画用紙にペンでお描きになっているのですか?
>どれぐらいの大きさで描かれているのでしょうか?
線の部分はサクラのピグマペン(0.1~1.0)で描いています。
普通の付けペンやロットリングより自分には合っているようです。
紙はごく普通の画用紙(ミューズ社のサンフラワー170)です。
印刷で縮小するため、いつもだいたい1.2倍くらいに描きますが、
勢いもあり、もっと大きくなることもあります。
>サンゴロウは他の姿が考えられないくらい、絵がぴったりだと思うのですが、
>画家さんに対してあらかじめ指示とかお願いをした部分はありますか?
ほかの原稿の場合もそうですが、いただいた原稿を読むと、
絵が頭の上30センチくらいに出てきます。
それをうまく、手と画材を伝って紙の上に導き出します。
ですから指示とかはないのですが、文を書いた人の気持ちが
そのまま出ているのだと思います。
「キング・クリムゾンという音楽がうまれると、
キング・クリムゾンというバンドが、その音楽をプレイする」
とロバート・フィリップは言っておりますが、
サンゴロウという世界がうまれた時、サンゴロウはできていたのです。
注:キング・クリムゾン
イギリスのプログレッシブ・ロックバンド。
1969年アルバム「クリムゾンキングの宮殿」で、
当時アルバムチャートの1位だったビートルズの
「アビーロード」を蹴落とし戦慄的にデビュー。
何枚かアルバムを出すと解散、再結成を繰り返し今に至る。
文章に書かれたことの表面的な説明として物を描写して描くのではなく、
現実との離れ具合を,白地の空間のなかで感じてもらえればと思っています。
ペン先が紙の表面にタッチしたあと、描く(なぞる)のではなく、
そのなにもないサンゴロウの世界に色を置いていく、
あるべきところに、あるように、しているだけなのだと思います。
ムーミンのトーベ・ヤンソンさんのペン画は
非常に色彩豊かで大好きですが、ヤンソンさんも、
ものすごくしっかり、心の中に世界ができているのだと思います。
閑猫記:
最初に「かっこよく!!」ってお願いした記憶はあります(笑)
あとは、おまかせです。
1冊出来上がるまで、ものすごくドキドキでした。
ちょっとギャグの入っちゃった絵が、10巻の中に1枚だけあって、
それははずしてもらったかなあ。