遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

李朝扁額『農隠』

2021年09月06日 | 古陶磁ー高麗・李朝

李朝時代の扁額です。

李朝の高級官僚、両班(ヤンバン)の書斎に掛けられていた物です。

横62.4㎝x縦40.7㎝(額部分)。李朝時代。

 

日本の扁額のように、一枚の板から彫り出したものではなく、書や印は彫った物を貼り付けてあります。

 

額の縁には、唐草?のような模様が描かれています。

いかにも李朝らしい脚もついています。

 

実はこの品、ずっと以前、雑誌『太陽』に広告が載っていました。

当時の私は、生き方の大転換期にありました。ガラクタ集めにのめり込む一方で、土を耕すひっそりとした生活を始めようと試行錯誤の毎日。その時に、これだ、と思う品に出あったのです。広告主は名古屋の李朝専門店。現物を目にして、おおこれだ、という思いをいっそう強くしました。しかし、値が良すぎました。とても、手が出ません。泣く泣く店を出ました。

しかし、世の中はわからないものです(大げさ(^^;)

数年後、興りはじめていたネットオークションに出品がありました。くだんの李朝専門店が東京へ店舗を移転するにあたり、ネットで売りに出したのです。間違いなくあの品です。しかも、四分の一の値段。それでも、ネットオークションの開始価格としては相当の高額で、入札者は私だけ。開始価格で入手できました(^.^)

そしてこの品は、めでたく、李朝箪笥上の一角に納まりました(ここには、戦前からずっと100年程前のゴフラン織が掛かっていましたが、今は行方不明。誰かに差し上げた?(^^;)

このままでは少し寂しいので、韓国現代作家の作品を置いてみました。

故玩館玄関の大ガラス戸を開けると・・・

こんな具合に、李朝がお出迎えしてくれます(^.^)

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青磁象嵌窓菊紋扁壷

2021年09月05日 | 古陶磁ー高麗・李朝

青磁象嵌の壷です。

正面と裏面がわずかに扁平になった扁壷です。

正面、平らな側です。

最大径 19.7㎝(同位置16.4㎝)、口径 10.7㎝、底径 11.6㎝、高 31.8㎝。

肩に連弁紋、

中央の大きな窓の中に菊紋、

下部に連弁紋があります。

間を雲紋が埋めています。

 

横の面です。正面より少し幅が狭く、丸いです。

このような扁壷は珍しいと思い入手したのですが・・・・古格を感じられません(^^;

 

肩に、(南紀徳)川家の蔵票が貼ってあります。

こういう物で、「おお!」という品もあるにはあるのですが・・・

底にくっ付いている赤土を擦ると・・・すぐに取れました(^^;

在庫クリアランスブログとはいえ、近年作でした(^.^)

 

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李朝箪笥バンダチ

2021年09月04日 | 古陶磁ー高麗・李朝

今回は、バンダチとよばれる李朝箪笥を紹介します。

幅 101.8㎝ x 奥行 45.5㎝ x 高 83.4㎝cm。李朝時代。

今から35年程前、ガラクタ集めにのめり込んでしばらくして入手した品です。当時、韓国経済が勢いをつけ始めた時期で、高麗、李朝の品がだんだん値上がりを始めていました。実際、骨董屋で、韓国人バイヤーを見かけることもしばしば。自国の古い品を買い戻しにやって来ていたのです。今、大挙してやって来るのは、中国人バイヤー。でも、韓国人のバイヤーは、どこかはにかんだところがあり、中国人バイヤーのように、根こそぎごっそりということはなかったです。

さて、李朝箪笥の特徴は、

豪壮華麗な飾り金具(鉄)と、

味わいのある箱板(松)です。

この二つの要素に時代が加わって、価値(値段)が決まります。

使う時には、上側の前板を手前に開きます。

開けてみれば、ただの大きな木箱。

ここで、大抵の人は、なあんだという顔になります。が、日本でも朝鮮半島でも、そして、多分、中国やヨーロッパでも、箪笥の原型は箱です。日本でいえば、長持ちに相当します。その後、移動用(火災時が主)に車をつけた車箪笥が登場します。現在のような引き出し型の箪笥が一般的になったのは、明治に入ってからです。

面白いことに、朝鮮半島の箪笥には、足(5㎝程)がついています。

冬場、オンドルで床の温度が高くなります。その時、熱が箱内に伝わり難くするためです。

李朝の鍵は、極めて単純な造りです。これは、おまけで付けてもらった現代の品(^^;

 

せっかくですから、李朝の青磁象嵌壷を飾ってみました。

ワシものせてくれ、と李朝の片岡◯太郎がつぶやいています(^^;

いつか、何かの役に立つかも、と買った後、例によってしまったままになっていた裂き織りを出してみました。

オバサマのテーブルセッティングのように敷いてみると、

まあまあいける感じ(^.^)

以前、箪笥資料館なる所を訪れたことがあります。創作総桐箪笥をウリにしていた和箪笥屋さんがやっていました。当然、古い和箪笥がズラッと展示してあると思ったのですが、ほとんど李朝箪笥なのには驚きました。

ま、事の次第はさておき、李朝箪笥が和のティストに合うのは確かです。これだけの飾り金具を付けながらも、嫌みな感じがしません。でしゃばり感が薄いのです。中国物になると、そうはいきませんね。

大陸人に較べて、半島人と島国人とは、メンタリティが近いのでしょう。韓流ドラマにはまる女性が多いのも、宜なるかな(^.^)

 

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青磁象嵌竹梅柳葦水禽昆虫紋梅瓶

2021年09月03日 | 古陶磁ー高麗・李朝

高麗青磁白黒象嵌梅瓶です。

最大径 15.5㎝、口径 5.6㎝、底径 12.6㎝、高 30.5㎝。高麗時代(?)。

非常に透明度の高い青磁釉が掛かった品です。

肩に連弁紋、下方に雷紋、胴には三方に植物紋が描かれ、その間に、昆虫と水禽が、それぞれ3匹ずつ配置されています。

最初の写真には、竹と梅が大きく描かれ、上方に昆虫、下方に水禽が描かれています、ほとんどが、白、黒象嵌で模様が描かれていますが、水禽の下の波紋は陰刻です。

反時計回りに120度回転すると、

柳と葦(ススキ)が描かれています。上方には昆虫、下には水禽がいます。

さらに120度回転すると、

葦(ススキ)が大きく描かれ、上方に昆虫、下方に水禽がいます。

水禽下の波紋は陰刻。

ミズスマシ?  でも、空中を飛べないし・・(^^;

先回のブログで、非常に気泡の多い青磁釉の大壷を紹介しました。大壷では、白象嵌が浮き上がって見えました。そのことは、目視でも、顕微写真でも同じでした。

今回の品の青磁釉は非常に透明度が高く、白象嵌、黒象嵌で描かれた模様はいずれも、器肌表面に直接描かれているかのように見えます。

拡大写真(昆虫の羽根部分)をみても、白象嵌が浮き上がって見えることはありません。青磁釉中の気泡はわずかです。

やはり、白象嵌がぼやっと浮き上がって見えるのは、青磁釉の気泡の影響のようです。

今回の品は、口に金直しがあり、底の窯疵は銀直しされています。いずれもプロによる修理です。大切にされてきたのでしょう。

「前所有者はかなりの金額で購入してます。うんと勉強しましょう。いい品だからぜひ・・」などと、いつもの甘言にのせられ、骨董屋を出たのです(^^;

その後、本棚の一冊に・・・

青磁象嵌梅竹水禽文瓶(東博)『世界陶磁全集18 高麗』(小学館)

今回も、真赤なコピー品で大恥かき?(^.^)

 

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高麗青磁象嵌柳竹鶴紋大壷

2021年09月01日 | 古陶磁ー高麗・李朝

高麗青磁の大壷です。

最大径 33.6㎝、口径 14.1㎝、高台径 13.9㎝、高 31.2㎝。重 4.1㎏。高麗時代。

古格を感じる壷です。高台の畳付は非常に滑らかで、長い間使用されてきたことがわかります。

やや失透気味の青磁釉が掛かっています。表面には、全体に細かい貫入がビッシリと入っています。

貫入のシミには色が付いていますが、新しい貫入もいくつか見られ、経年の変化を物語っています。

これまで見てきた青磁象嵌にも見られた、象嵌で地を削った時の歪みによる貫入を、この壷では、非常にはっきりと見ることができます。上の写真で竹をとりかこむ円窓の枠は2本の白象嵌で描かれています。この線上に、二本の貫入が丸く現れています。そして、それに対して直角に、短い貫入が入っています。丁度、鉄道のレールのようです。象嵌に沿った貫入とそれに直角の放射状貫入。この大壷には、そこかしこに、このような貫入が見られます。高麗青磁象嵌に特有のパターンがこれほどはっきりと表れた品も珍しいです。

 

円窓の外側には、鶴と雲が象嵌で表されています。

 

この壷には、4個の円窓が描かれています。一番初めの写真を正面として、他の3面を次に示します。

右面:竹に鶴

後面:柳に鶴

左面:竹に鶴

 

それぞれの円窓を拡大して見ていきます。

正面の円窓:

柳の木を中心に、3羽の鶴。

一羽は地面にいます。柳の下には、ススキが、左、右に一本ずつ描かれています。わかり難いですが、ススキの白い穂が垂れた柳の枝と交錯しています。こういう象嵌は、どうやって行うのかわかりません。高度な技法です。

木のてっぺんにいるのは、子供の鳥でしょう。

 

右面の円窓:

竹と4羽の鶴が描かれています。

4羽のうち、2羽は地表に、他は空中。

 

後面の円窓:

正面の円窓とよく似ています。見難いですが、左上に鶴が一羽います。木のてっぺんに、子供もいるようです。

下左に鶴1羽、右にもいる?

見難いですが、柳の木の左右に、ススキが一本ずつ生えています。

 

左面の円窓:

竹と4羽の鶴。

上に2羽、下に2羽。右面の円窓と同じです。

 

この壷は長く置いてあったので、ホコリがたまっていました(^^;

今回、布巾で掃除をするうちに、不思議な事に気がつきました(^.^)

肩には菊花紋が11組描かれていますが、それぞれの菊花紋の辺りが扁平なのです。内側から触ってみると、指で押さえられたような凹みがあります。結果として、壷の上部は、11個の軽い面取り状になっています。

同様に調べてみると、雲の象嵌部もすべて押さえられています。鶴模様の部分には、押さえた形跡がありません。

一方、壷の下半分には、雲も含めて、押さえた跡は全くありません。

このような象嵌部の押さえは、先のブログ、青磁象嵌雲鶴紋梅瓶でもみられました。意図的になされた事は間違いありませんが、どのような効果を狙ったのでしょうか。

 

もう一つ、この青磁壷では、面白いものが見えます。

壷が大きすぎたのでしょうか。青磁釉が掛かっていない所が下半部にあるのです。

素地がむき出しになっていて、青磁象嵌の施し方がわかります。

また、青磁釉の有る無しで、模様の見え方がどのように変わるかもわかります。青磁釉が掛かると、模様が上へ浮き上がって見えます。特に、白象嵌の部分が上がってきたように見えます。

正面の円窓の部分を拡大して見ます。

円窓の右下ススキの穂の部分です。やはり、白い穂の部分が浮き上がって見えます。たくさんの気泡が見えますが、この効果でしょうか。

気泡が少なく、透明度の高い高麗青磁と比較すれば、気泡の効果かどうかがわかると思います。

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