遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

トイレ美術館2 山口硯閑『伊豆の網代』(油彩、8号)

2023年10月29日 | 絵画

故玩館への通路脇のトイレを作るとき、壁面をすべて板にしてもらい、白のクロスを貼りました。大きめのトイレなので、白壁面はかなりの面積になります。何よりも、板壁なので、釘やねじが使い放題。どこへでも額が掛けられるのが良い。

一方、故玩館本体の壁は漆喰なので、釘を打とうものならボロボロと崩れてきます。でも、柱や長押が縦横に走っているので、品物を掛けることは何とか可能です。

そんなわけで、このトイレ美術館の通常展示は重い額入り油絵です。

まずは、今回の品。

操作パネルが写っていると、ここがトイレであると実感されますね(^^;

山口硯閑『伊豆の漁村』、油彩8号。戦前。

山口硯閑:やまぐちけんかん、明治三三(1900)年ー?年、東京生れ。岡田三郎助に師事。風景画を得意とした。

なかなかに雰囲気のある絵です。

実はこの品、ネットオークションが始まってほどなく入手しました。その頃はまだ、オークションのルールが固まっていなくて、売り手と買い手がやり取りする余地が多く残されていました。一番多かったのは手渡しです。買い手には送料が不要ですし、売り手は梱包が簡単で済みます。この絵は、30㎞程離れた東濃の人が出品者でした。丁度、その方面へ出かける用事があったので、途中で落ち合い(当然、初対面)、代金を払って品物を受け取りました。ちょっとドキドキしますが、このような取引をけっこう頻繁に行いました。

この品は、大変安価でした。樋口一葉さん、半人前。というのも、多分タバコだと思いますが、表面が酷く汚れており、肝心の絵がぼんやりとしか見えていませんでした。しかし、絵のタッチから、これはいけると思いました。

家へ帰って、アルコールを含ませた柔らかい布で少しずつ汚れを落としていくと、だんだんと絵が現れてきました。

ほぼ、1か月後の品がこれです(表面に、タブローを塗りました)。

おだやかな朝の漁村の風景が描かれています。

そこで、こんなタイトルをつけました。

が・・・

うっかり、裏側を確かめていませんでした(^^;

『伊豆の網代』だったのです。

まったく当てずっぽでタイトルをつけたのですが、『伊豆の漁村』でも間違いではありませんでした(^.^)

それにしても、伊豆の風景を思わせる描写力は、なかなかのものですね。

 

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トイレ美術館1 芹沢銈介『型絵染 トリカボチャ』

2023年10月27日 | 絵画

先のブログで、トイレのステンドグラスを紹介しました。

このトイレ、手ごろな大きさの絵画をいくつか掛けてあります。

言わば、トイレ美術館(^.^)

同じように、トイレを美術品で飾ろうのコンセプト(大げさ(^^;)は、ブログ初期に紹介した、故玩館2階のトイレでも生きています(^.^)

例によって天邪鬼の虫がむくむくとわき、明治の和風建築の意表をついて、西洋の雰囲気を演出してみました。

 

今回のトイレ美術館は、故玩館2階のトイレに先立つこと7年、改修前の故玩館と住まいを繋ぐ通路脇に作ったトイレの名称です(勝手に呼んでいる(^^;)

ドアを開けると、

小さな額絵が目に入ってきます。

男性の場合、その間、じっと向かい合うことになります(^.^)

何ものか、不明です。

近寄ってみると、

6.0㎝x7.5㎝。昭和。

芹沢銈介の小さな型絵染です。

何を表しているのか、わかりません。

『無題』では淋しい。

ここでハタと閃きました。

これは、鳥兜に似ていないか?

なるほど似ています。

『鳥兜』・・・うーん、どうも堅すぎて絵にそぐわない。

そういえば、兜の頭の部分、ひょうきんなカボチャを思わせます・・・・

そうだ、『トリカボチャ』

今年のハロウィーンは、これで行きましょう(^.^)

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渡辺三郎 油彩『椿』(8号)

2023年02月01日 | 絵画

先回、備前焼の献上鶴首花器を紹介しました。そして、この花器に椿を入れ、眺めているうちに、そういえば、似たような油絵があったはずと気がつき、探し出したのが今回の品です。

油彩 4号。昭和?

渡辺三郎(1928- )。洋画家。岡本太郎らとアバンギャルド運動に参加。その後、写実的な花の絵(特に、椿)を多く描いた。

備前焼と思われる花瓶に椿の花が入れてあります。

脇には、ビー玉と椿の一枝。

透明感のある描写が特徴的です。

先回の実物と並べてみました。

プロとはいえ、達者なものですね。

 

 

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ピアーズて何?

2019年01月08日 | 絵画
ピアーズを知ってますか?

今回もかわいらしい品です。

                 オークランド市内

【ニュージーランドの骨董市で遭難?】
20年ほど前、ニュージーランドのオークランドに滞在していた時のことです。
 街角で、大骨董市のポスターが目にとまりました。場所は、郊外の競馬場。
 バスを乗り継いで、見当をつけておいた停留所で降りてました。が、それらしきものは何も見あたりません。人口の少ないニュージーランドで人を探すのは至難の技。道を尋ねようにとしても、こんな田舎では、近くに誰もいません。競馬がお休みの日ですから、なおさらです。やむなく、数km歩き回って、ようやく広大な芝生が続く場所に出ました。見渡す限り、芝、しば、シバ。でも、やはり、それらしき物は何も見あたりません。
 そこへ、突然の豪雨。辺りはかすんで、数m先しか見えません。普段なら、何でもない芝生の上を、幾筋もの小川が出現し、水がドウドウと流れてきます。川は太くなる一方です。あちこちには、小さな池も。
 オーストラリア南部でもそうですが、NZは一日のうちで、天気がめまぐるしく変わります。快晴だったのが、いつのまにか土砂降り、そしてまた、すぐに晴れ。だから、雨が降っても街中で傘をさす人は少ない。
 ところが、この日の豪雨は30分以上も続きました。あたりはもう見渡す限り池・・・・・・こんな所で遭難か?
 すると、モヤのなかからヘッドライトの明かりが見え、水しぶきをあげながら、一台の車が近づいてきました。
「骨董会場はどこですか?」
 聞いたのは私ではありません。車に乗っていたNZ人の老夫婦の方なのです。かれらも、雨の中をうろうろしていたにちがいありません。ほうほうの体で、同乗させてもらい、小降りになった雨の中を走り回って、競馬場の一角にある会場にようやくたどり着きました。

【まぼろしのインデンチュア】 
 大きな建物の中には60程のブースが並んでいます。数百の業者が出展する日本の主要骨董市に較べれば、こじんまりしています。でも、人口が500万人に満たないこの国では、最大規模の骨董市でしょう。
 年に一度の大アンティークフェアとあって、正装しているご婦人もちらほら。何よりも、ブースのグレードが高いことがうれしかぎりです。英国の植民地であった関係で、家具や宝飾類の店が多いですが、我々向きの品を置いている店もあります。
 そのうちの一つ、30代の男性がやっているブースに、見たこともない品が、額に入って鎮座していました。
私「これは何ですか?」
店主「Indentureさ」
私「?・・・・・・・・・」
 ひげ文字で書かれた重厚な品です。Indenture(インデンチュア)というのは、どうやら契約書のことを指すらしい。店主によれば、イギリスの貴族と執事の間でかわされた雇用契約証書で、17世紀の品だとのこと。ちょうど、グレゴリア楽譜のような雰囲気です・・・・価格は、600ドル・・・・欲しいけれど・・・「後でもう一度来ます。それまでとっておいて下さい」

ぐるっと会場を回って、元のブースに戻ってきました。
んっ!無い!
 店主によれば、若い女性がどうしても欲しいと言って購入していったとのこと。もう後の祭りです。逃がした魚は大きい!?

【ピアーズ】
気をとりなおしてこの店の品をもう一度見渡してみると、奇妙な絵が目に入りました。
「これは何ですか?」
店主「Pearsさ」
またもや、Pears(ピアーズ)も知らんのか、という顔。どうやら、アートポスターの一種であるらしい。英国圏では人気のコレクターズアイテムで、良い図柄の品は、高額になるという。オリジナル品は石版画です。

 後に調べてみると、18世紀後半、イギリスの石けんメーカーPears社が、販売促進用に作成したもので、商業ポスターの草分けとあります。当初は、かわいいい女の子や男の子が描かれていましたが、やがて、石けんとは関係のない絵柄も含め、多くのポスターが作られました。ほとんどに、人物が描かれていて、かわいいもの、ミュシャふうのもの、滑稽な絵、そして、奇妙な絵も。

 このポスターは、教授風の老紳士とゴイサギのような鳥がシュールに描かれています。左上には、Pearsのサイン。
「これは、レアもんですよ。インテリはみな欲しがる」
巧みな言葉につられながらも、400ドルを350ドルに値切って買いました。

               『博士の休日』(仮題)


【かわいいピアーズ】
こうなったら、次は、かわいい女の子が描かれた、ピアーズ初期の品が無性に欲しくなります。でも、それこそ超レアもの。ちょっとやそっとで手に入る品ではありません。で、後日、街の小さな骨董屋で、プリントを見つけて購入。10ドルでした。

            ピアーズ石けん 初期ポスター(複製プリント) 


 後日、日本のネットオークションでPearsを見つけました。落札値は、開始価格の3000円。かわいい男の子が描かれたミラーです。ガラス絵の手法で描かれています。英国のパブには定番の品で、人気があります。西洋版画もそうですが、こういった品は、日本の方が、安価かつ容易にゲットできるようです。

               ピアーズ石けん化粧鏡


追記1: 5年ほど前に、同じアンティークフェアに行きました。が、ひどく様変わり!ガラクタばかりの市になっていて、ガッカリでした。
追記2: 日本では、Pears社を、ピアーズ社と表記しています。果物Pearsの場合は、なぜか、ペアーズです。
 英国より、e を i に近く発音するといわれているニュージーランド英語ですが、彼らの発音を何回聞いても、私には、Pearsは、ペアーズと聞こえるのですが。



 


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西洋銅版画

2019年01月07日 | 絵画
西洋銅版画

 古面のお話はまだまだ続くのですが、オドロオドロシイ画面のオンパレードでは、ウンザリする人も多いでしょう、特に女性は。

 もともと、男性と女性では、古物に対する考え方が大きく違います。
 男は基本的に見栄、よく言えば他人とは異なる自分の世界をもつことが蒐集の原動力です。しかし、女性にとってそんな品物に大枚をつぎ込むのは愚の骨頂。どうせお金をはらうのなら何かの役に立たないと、ということになります。とびっきり、美意識をくすぐる品は別のようですが。

 いずれにしても、遅生老人のまわりにころがっている膨大な品々は、女性にとってドウショーモナイものばかりです。
 これまで、故玩館を訪れた女性で、古面に興味を示したのは2人だけ。一人は神楽マニア、もう一人は祭りの研究者。

 しかし、世の中の半数は女性。無視したり、敵にまわすのは得策ではありません。特に、一見何気ないふうを装いながら、遅生老人をしっかりと監視していらっしゃるつれ合いには気をつかわねば、居場所をなくしかねません(笑)。
 
 ということで、何とも得体の知れない品々の中に、おやっと思うような物がいくつあります。購入時には、特に、女性を意識したわけではないのですが、そんな品も骨董迷い道の途中で、いくつかひろい集めてきましたので、気が向いたら紹介していきます。

 前置きが長くなりましたが、今回は、西洋版画です。ヨーロッパやアメリカのちょっと気の利いたホテルの部屋には、こういった銅版画がかかっています。また、たいていの骨董屋にも、どっさりと置いてあります。写真が普及する以前は、書物の図版もほとんどが銅版画でしたから、膨大な量の品が刷られていたことになります。

 値段もそこそこなのでよりどりみどりです。気に入った図柄の品を探すのが楽しい(世界に通用する駒井哲朗や長谷川潔の作品なら、人に見せびらかして自慢できますが、財布がとても許さない!)。そして、自分で飾って満足すれば、それなりに実用的ではありませんか。なによりも、女性に、いやな顔をされません。

 次の2枚の銅版画は、30年ほど前、アメリカ、フィラデルフィア郊外の教会のチャリティオークションで得た品です。2枚で、150ドルくらいでした。彩色が丁寧で、女性も品が良い。
 ということで、私の机の両横の壁に、一枚ずつ掛けました。以来、何十年間、この二人にじっと見つめられて過ごしてきた訳です・・・・こちらは、年々老いていくけれども、彼女たちはいつまでも若い!



 



 両横から2人の麗しい女性に見もまもられながら、正面には、この細長い銅版画を飾りました。アールヌーボーからアールデコへ移る頃の品でしょうか。この手の物は少ないです。上の二つと同じ頃に、ニューヨークの骨董屋で100ドルで入手。





 このように西欧ではポピュラーな銅版画ですが、日本ではなじみが薄いし、人気もありません。ですから、ネットオークションではいつも入札無しで流れてしまいます。開始価格で落札できる可能性が高いですから、ちょっとしたインテリアを求めるにはうってつけです。次の銅版画はそのような品の一つです。







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