ここしばらく、古陶磁の紹介が続きましたので、少し趣向を変えます。
長崎螺鈿の小箪笥です。
このサイズの箪笥をどう呼んだらいいのかわからないので、ここでは手元箪笥としておきます。
長崎螺鈿は、幕末、長崎において造られた工芸品です。
通常の螺鈿に比べて、華麗に彩られた色彩の豊かさが特徴です。
多くの長崎螺鈿が輸出されました。
18㎝x18㎝x22.5㎝
この品も、全面に彩色螺鈿細工が施されています。
前面と背面が蓋になっています。
前面
上面
背面
左面
右面
蓋をとってみると、
引き出しが4段あります。
この中には、何を入れたのでしょうか。
螺鈿の漆器は、夜行貝やアワビなどの殻を薄く研いで漆で貼り付けます。
長崎螺鈿の場合、非常に薄く削った青貝の裏側に彩色を施した物を貼り付けます。色が透けるので、鮮やかな色彩が黒漆の地に浮かび上がります。花鳥風月のデザインが多く、中国風ティストと和の雰囲気がミックスされて、独特の趣をもった漆器となります。
長崎螺鈿は、短期間に相当数製作されたらしく、その気になって探せば見つけることができます。
同じ時代に作られた輪島や東北地方の漆器に比べ、漆器としての品質は劣るように思えます。螺鈿や漆がはがれやすく、あまり実用的ではありません。華麗な装飾を施したエキゾチックな品物であったため、輸出品や長崎土産として人気を博したのでしょう。