うつみ(内海)焼のそば猪口です。
5客あったはずですが、一個、見あたりません(^^;
底は無釉。
いたってシンプルな器です。
径8.8㎝、底径5.8㎝、高6.2㎝。明治~昭和。
半陶半磁の素地ですが、陶器質が勝っています。
黒っぽい呉須で圏線が引かれ、間をグラデーションに塗っています。上釉にも、ほんのわずかに呉須が含まれているようで、全体が少し藍色がかっています。
底の外周が少し厚くなっていて、高台を兼ねています。内側は無釉です。
うつみ焼は、愛知県知多半島の内海で焼かれていた陶磁器ですが、今では地元でも知る人は少ないようです。
加藤藤九郎の『原色陶器大辞典』では、「愛知県知多半島の内海(知多郡南知多町)で焼かれた陶器。「うつみ」の印銘がある。」と書かれているのみです。
南知多町の教育委員会によれば、
「内海焼は、明治19年(1886年)から昭和26年(1951年)までの六十数年間にわたり、南知多町内海に作られた四っつの窯で焼かれていた製品です。大量生産されていなかったため、現存する内海焼は多くありません・・・」とあります。
なるほど、底には「うつみ」の印銘があります。
でも、4客の内の3客は、印は、無釉の広い場所ではなく、底の端、わずか数㎜幅の狭い所に押されています。
渋い焼物を焼いていた内海焼ですが、こんな場所に押された印をみると、「どうだ俺達の技は」と陶工がつぶやいているような気がします(^.^)
このそば猪口は、大きさ、形からして、珈琲碗にピッタリです。
陶器質ですから、磁器と違って、熱さが手にチーンときません。口あたりもやさしい。
ということで、ここ何年かは、このそば猪口をMyコーヒーカップとして使っています。
陶器なので、布コースターにも合います。
敷物はまだいくらでもあるので、日替わりチョイス(^.^)
しばし、世の雑事をわすれて(^.^)
このような印銘があるのは貴重ですよね。
氏素性がはっきりしますものね(^_^)
氏素性のはっきりと知れた器で飲むコーヒーの味も格別なことでしょうね(^-^*)
確かに、粘土質の土は内海にもあると存じます。
今度、地元の方にも聞いてみます!
いずれも記録がほとんどなく、だんだん忘れられていくのが淋しいです。
地味な玄人好みの器が多いので、知名度は高くないです。
今でも、たまに骨董市や骨董店に出ることがあります。ひらがなの小さな銘「うつみ」を見逃さなければ、ゲットできます。数は少ないですが、値段はそれほど高くありません(^.^)
地方窯ですでに閉窯しているとなると、ある意味「幻の品」みたいな扱いができそうです。
この品は落ち着いて控えめな感じが魅力的です
それに、ひらがなで「うつみ」の窯印がまたいい味わではないでしょうか。
内陸ですが、岐阜には、こういう地方窯がかなりありました。なかには、それこそ幻の○○窯というのも。
しかし、現物も資料も少ないので、郷土史のテーマになり難いのが現状です。