法務省が出した2008年版「犯罪白書」の内容は、日本が抱える根本的な課題をデータで浮き彫りにした形だ。前年度と構成を変え、第二部に「高齢犯罪者の実態と処遇」と題した特集が組まれている。
平成14年をピークに、一般刑法犯が減少傾向に転じたのに反し、高齢者の犯罪が急増している。高齢者の受刑者数が、高齢人口の増加率をはるかに凌ぐ勢いだ。さすがに凶悪犯罪は少なく、窃盗・横領が圧倒的だが、反面、生活苦から犯罪に及んでいるともいえる。
しかも、再犯率が極めて高い点に注目すべきだ。また、受刑歴がある犯罪者の家族との同居状況をみると、単身者が8割近くを占めている。医療や介護を必要とする受刑者も多いと分析している。
一口に言えば、社会的弱者としての高齢者が行き場を失って、犯罪を犯し刑務所にお世話になる図式がまざまざと伝わってくる。言うまでもなく、刑務所は矯正施設であって福祉施設ではない。生活給付金や高速道路料金値下げなどという低次元な発想を捨て、真剣に対策を講じない限り、”団塊の世代”が高齢期を迎える頃には、犯罪大国になることは目に見えていると思うのだが。