鉄道に関する話が続くが、食事は旅行の楽しみのひとつ。日本の場合、全国各地に”ご当地グルメ”なる「駅弁」がある。
駅弁は、手頃で便利だが、観光旅行の場合、食堂車が付いていれば旅情はさらに高まる。1970年代までは、殆どの長距離列車には食堂車が設置されていたが、現在は、トワイライト・エクスプレスや北斗・カシオペア等の夜行列車に限られている。
鉄道網が発達しているヨーロッパでも、減少・簡略化の傾向にあるが、ビュッフェ方式にしたり、座席に配膳する等の工夫をしている。逆に、積極的にテコ入れをしている国(イタリア・スイス・スペイン)もある。アメリカでは、中距離列車でもカフェ設備は必ず付いているし、アラスカ鉄道のように、車両単位で企業スポンサーを募集し、独自の食事サービスを提供するものもある。
日本の場合、食堂車の代替としてキオスク等が充実しているので、不便を感じることはない。が、採算性や効率性を重視すれば、旅行者の楽しみは満たされない。スロヴァキアの現地ガイドのきつい一言。「日本のような金持ちの国が、どうして鉄道を持てないのか?」。「持たないのだ」と答えたが、彼は首をかしげた。
ユニバーサル・サービスが徹底しているヨーロッパの常識は、「不採算事業をカバーするのが国」なので、経済大国ニッポンが何でも民間という発想は、「弱者切捨て」でしかなく、不思議なようだ。