御用新聞

2011-04-18 10:45:38 | 日常

東京新聞4月7日夕刊掲載のコラム「災害を広げる我欲」を読み、この国の
メディアを思いました。
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 三月十一日に発生した東日本大地震は、西暦七九年のベスビオ火山
大爆発によるポンペイの町埋没に比べられる、悲惨な歴史的記憶に
なっていくだろう。大津波の脅威を映し出すテレビの映像に世界中が
目を見張った。さらに原子力発電所の破損におよび、放射能被害の
可能性はまだ進行中の事態である。

 天災そのものは人間の防御能力を越えているが、その悲劇をさらに
拡大する人災は、私たちの責任である。福島第一原発の事故処理に
関して、人災の部分がすでに発生している。
 二十世紀初頭に西インド諸島で起きた火山の大爆発により、約三万人
が犠牲になった災害もまた、天災であるとともに人災であると言われている。
 一九〇二年五月、西インド諸島の仏領マルティニーク島で起きた
プレー火山大爆発により、当時、島の最大都市だったサンピエールで、
三万人前後が火砕流にのみ込まれ死亡した。ゴードン・トーマス、
マックス・M・ウィッツ共著のドキュメンタリー小説『世界最後の日』
(立風書房・筒井正明訳)によると、数週間前から地震が頻発しており、
火山爆発の予兆があったことは一部で憂慮されていた。
 ところが、島の新聞「レ・コロニー」は、フランス政府派遣の総督の
御用新聞と化しており、総督に不都合な記事は掲載しない。フォール・ド・
フランスへ住民を疎開させるという進言は無視される。選挙日を直前に控え、
住民の移動は選挙に不利になるからであった。沖合のアメリカ商船船長から
火山の異常現象を知らされたアメリカ領事が、住民への周知を求めても新聞
編集長は不必要な動揺を招くと言って受け付けない。ワシントンへの電文は
総督命令で妨害される。
 サンピエール市は安全だとあくまでも主張する総督は、白人至上主義者で
フランス植民地政策の忠実な体現者だった。その結果、サンピエールに滞在
していた総督夫婦も災害に遭う。生き残ったのは地下牢に幽閉されていた
死刑囚と、自宅から離れていた靴屋と一少女だけだった。
 マルティニークはナポレオンのジョセフィーヌ妃の故郷であり、サトウキビ
栽培が大きな産業だった。この作品はサトウキビ農園の白人経営者と搾取
される黒人および混血の労働者たちとの関係、フランス人総督の存在と意味を
明らかにする。そして人間の我欲のために災害を拡大してしまう人災の恐ろしさ
を語っている。プレー火山大爆発を題材にした小説作品には、その他、新田次郎
の短編「熱雲」(一九七八年)がある。
(あら・このみ=立命館大学客員教授、英米文学)
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島の新聞「レ・コロニー」は総督の御用新聞でしたが、日本のメディアは?
菅直人さんの御用新聞でないことは確かです。



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