分娩を請け負う施設がこれだけ多様化していて、それぞれの施設で出産に要する料金の設定もピンからキリまで相当な幅があるというのに、この出産費用を一律無料化するという政策は、あまりに現実離れしているので、やはり実現性には乏しいようです。しかし、出産育児一時金の支給額が増額されて35万円になるので、ほとんどの妊婦さんにとって出産費用はタダ同然になると思われます。
それよりももっと重要な少子化対策は、『産科医と新生児科医を現在の絶滅の危機から守り、専門医を新たに養成して、各医療圏に適正に配置する』ことだと思います。産科医と新生児科医がこのまま絶滅してしまえば、女性がいくら赤ちゃんを産みたくなっても、どこにも産むところがなくなってしまいます。そういう時代がどんどん現実化しつつあります。産科医と新生児科医を『絶滅危惧種』に指定して強力に保護・育成するような政策が必要だと思います。
****** 朝日新聞、2006年1月13日
猪口氏、「出産無料化」朝令暮改 混乱招き発言修正
少子化対策の一環として出産費用を国などが全額負担する支援策について、猪口少子化担当相は13日、「広く検討することは視野に入る」と発言し、前向きな姿勢を示した。その後、政府内からは打ち消す発言が相次いだ。出産育児一時金の支給増額を盛った来年度予算案が昨年末に決まった直後の新規施策の検討は難しく、安倍官房長官も会見で「猪口大臣が精力的に全国を回っておられて、その中で要望が強かったということだ」と火消しにやっきだった。
(以下略)
(朝日新聞、2006年1月13日)