ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

北海道新聞:旭医大派遣の産婦人科医、室蘭・日鋼病院から引き揚げ

2006年06月01日 | 地域周産期医療

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参考:http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/JYOSEI/center.htm

日本全国では、総合周産期母子医療センターが54施設、地域周産期母子医療センターが187施設認定されている。

北海道では、総合周産期母子医療センターが2施設、地域周産期母子医療センターが25施設認定されている。しかし、地域周産期母子医療センターと認定された施設が、次々に産科部門を閉鎖せざるを得ない事態に追い込まれているようなので、現在の2次医療圏を統合してより広域の二次医療圏に設定しなおし、2次医療圏の数を思い切って減らして医師の再配置を進めてゆくしかないと思われる。

****** 北海道新聞、2006年5月31日

旭医大派遣の産婦人科医、室蘭・日鋼病院から引き揚げ 9月末 大学病院の医師足りず  

2006/05/31

 【室蘭】旭川医大が日鋼記念病院(室蘭)に派遣している産婦人科の常勤医を9月末ですべて引き揚げることが30日、分かった。卒後臨床研修に伴う大学病院の医師不足が理由とみられる。危険性の高い出産を担う道認定の「地域周産期母子医療センター」は西胆振地域で同病院のみで、撤退に伴い重症者は苫小牧や札幌方面への搬送が必要になる可能性が高く、妊婦への負担が増しそうだ。

 同病院によると、大学側から昨年10月ごろ、「2006年秋まで派遣を続けるが、それ以上は困難」と通告があった。4月に4人が2人に減員され、9月末までにさらに2人減員の見通し。同病院は医師確保を急いでいるが、「センター機能が事実上消滅する可能性が高い」という。

 同病院は道内に25カ所ある地域周産期母子医療センターの一つ。新生児集中治療管理室(NICU)を三床備え、超未熟児の受け入れが可能で、切迫性流産や重度の妊娠中毒症などの診療も行う。05年度は398件の出産のうち四割弱がこうした危険性の高い症例だった。

 室蘭市内には市立室蘭総合病院や新日鉄室蘭総合病院にも産婦人科があるが、常勤医一、二人でNICUもない。近隣でセンター機能を持つ医療機関は、車で約一時間の苫小牧にしかない。

 道は01年度から、地域周産期母子医療センターを認定してきた。道によると、センターに認定されながら医師派遣の打ち切りなどで機能を果たせなくなった病院は、ほかに道立紋別病院など三カ所あるという。道子ども未来推進局は「医師の集約化など再配置を進め、センター機能を維持したいが、これまでの体制を守るのは難しい」としている。

(北海道新聞、2006年5月31日)


神戸新聞:県内の産科、10年で3割減

2006年06月01日 | 地域周産期医療

****** 神戸新聞、2006年6月1日

県内の産科、10年で3割減

 兵庫県内で産科・産婦人科の診療科目を設ける病院数が、十年前に比べ三割減っていることが、三十一日までの県の調査で分かった。二〇〇四年に始まった臨床研修制度の影響で、大学が派遣先の病院から医師を引き揚げるケースが目立つ上、激務などで産科医の希望者自体が減っているためという。六-七月も三病院が相次いで産科の休診を予定。県などは対策を検討している。

 県によると、産科・産婦人科病院は一九九六年は九十七カ所だったが、今春の調査では六十九。この中にはお産を一時休止している病院も含まれ、実際に子どもを産める病院はさらに少ない。

 六月には市立加西病院(加西市)と高砂市民病院(高砂市)が産科休診を予定。七月は神鋼病院(神戸市)が予定する。いずれも神戸大が、派遣していた医師を引き揚げるあおりを受けた。

 県産科婦人科学会長を務める丸尾猛・神戸大大学院教授によると、医師引き揚げは、臨床研修制度の導入で、大学病院の医師不足が深刻になったためだ。同制度は免許取得後、病院で二年間の臨床研修を義務付け。以前は大学病院医局に集中していた若手医師が、都市の民間病院に流出した。

 加えて近年、産科医は医学生の間で人気が低い。医師総数が年々増える中、県内の産科・産婦人科医は九六年から5%減り、〇四年は四百七十人。丸尾教授は「昼夜を問わず過酷な労働が続き、訴訟を起こされることも多い」と背景を語る。

 福島県の病院で帝王切開を受けた女性が死亡した事故では今年二月、業務上過失致死容疑などで一人勤務の担当医が逮捕された。日本産科婦人科学会は四月、リスクの高いお産を扱う公立、公的病院は三人以上の産科医を常勤させるべき、と提言。今回休診する三病院はいずれも二人勤務で、丸尾教授は「休診の代わりに、近隣の拠点病院に医師を集約したい」とする。県も本年度、助産師約十人に研修し、医師不足を補う方針。さらに「産科医への給与引き上げのための方策も検討したい」としている。(浅野広明)

(神戸新聞、2006年6月1日)

****** 参考:

産婦人科常勤医、2年で8%(412人)減

長野県の分娩施設 5年間で20施設減少


毎日新聞:産科医療:「出産診療取りやめ」次々、地域の格差拡大 県、病院の連携検討へ/山梨

2006年06月01日 | 地域周産期医療

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根本的には、産科医数を増やしていかない限りは決して解決できない問題である。若手医師が新規参入しやすいように、現在の産科医療全体のやり方を大きく変革してゆく必要がある。一地方に限った問題ではないので、国策として、産婦人科医の労働条件の改善(産科医療の集約化、報酬の差別化など)、医療訴訟への対応(無過失補償制度など)、女性医師のバックアップシステムの構築など、強力に推進していく必要があると思われる。

****** 毎日新聞 山梨、2006年6月1日

産科医療:「出産診療取りやめ」次々、地域の格差拡大 県、病院の連携検討へ /山梨

 出産できる医療機関のある市町村が減り、地域格差が拡大している。8月以降は、県内で出産できる病院や診療所は22から19に減少し、峡北、峡南、東部に加え峡西地域にも全くない状況になる。このため県は1日、甲府市内で県医師会や県産婦人科医会などによる協議会を開き、産科医療の拠点となる大型病院と出産できない診療所が連携するシステムの構築に向け協議し、地域格差の是正を目指す。
 県内では7月までに白根徳洲会(南アルプス市)、社会保険山梨(甲府市)、加納岩総合(山梨市)の3病院が出産の診療を取り止める予定。04年11月には大月市立中央病院が、05年4月には上野原市立病院も取り止めた。大学付属病院などから派遣されていた医師の引き上げや看護師不足が原因。
 分娩が可能な医療機関があるのは8月以降、▽甲府市(4病院6診療所)▽甲州、中央、都留、富士吉田市、富士河口湖町(各1病院)▽甲斐、笛吹、山梨市、昭和町(各1診療所)――の8市2町(9病院10診療所)に減る。
 県医務課によると、派遣医師の引き上げの背景には、「いつ出産するか分からない」などと常に緊張を強いられ、他の科に比べ医療事故による責任問題が起こりやすい産科医療の現状がある。出産時の安全性を確保するため、病院のスタッフを増やし、出産は複数の医師でカバーできる態勢を整えるため引き上げるとみられる。
 これにより出産可能な病院が近くにない地域が拡大し、妊娠後の健康診断時から長距離通院したり、万一に備え出産時の入院期間を長くとる女性も出ている。このため、県は現状を踏まえた上で、出産可能な施設が自宅付近にない住民もできるだけ良質な医療を受けられるよう、病院間の連携方法の確立を目指す。
 協議会で県は国の方針に基づき診療所が妊婦の診察を、病院が出産を受け持つ役割分担制度「セミオープンシステム」を提示する。その後、委員に県内の出産可能な医療機関の分布などの現状を把握してもらい、医療機関の連携方法などについて協議する。【宇都宮裕一】

(毎日新聞) - 6月1日13時4分更新