ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

大野病院事件「表彰」は妥当?(県議会一般質問)

2006年06月30日 | 報道記事

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この事件に関しては、「癒着胎盤の術前診断は不可能であること」、「癒着胎盤は非常にまれな疾患で、治療の難易度はきわめて高いこと」などから、事件が報道された当初から、日本全国の多くの専門医達が異口同音に逮捕は不当と主張しています。また、日本医師会、日本産科婦人科学会をはじめとした非常に多くの医療関係の団体が、今回の事件に対して「逮捕は不当」とする声明を相次いで発表しました。

そのことは警察側でも十分に承知しているはずなのに、あえて、県警本部長が今回の事件の「功績?」により富岡署を表彰したというのは、確かに、非常に奇妙な話だと思います。福島県警のトップが、「治療に最善を尽くした医師であっても、治療の結果次第で、今後もどんどん逮捕しなさい!」と組織全体に対して命令を下し、そのことを世間に対しても堂々とアピールしているわけです。警察権力によって地域内のあらゆる医療行為が全面的に禁止されたようなものだと思われます。

****** 河北新報、2006年6月29日

 福島県立大野病院(大熊町)で2004年に帝王切開手術を受けた女性=当時(29)=が死亡し、産婦人科医が業務上過失致死などの罪で逮捕、起訴された事件で、県警本部長が医師逮捕で富岡署を表彰したことの可否が28日、県議会一般質問で取り上げられた。

 質問した県議は「(事件は)治療に最善を尽くした医師が逮捕された国内初の出来事。どんな基準で富岡署が本部長表彰に該当したのか」と疑問を投げ掛けた。綿貫茂本部長は「事案の重要性と困難性を認め、表彰した」と答えた。

 事件は、子宮壁に胎盤が密着する「癒着胎盤」だった女性が帝王切開手術中に出血性ショックで死亡。富岡署は今年2月、無理に胎盤をはがそうとしたのが原因として執刀医(38)を逮捕した。日本産科婦人科学会などは「難度の高い手術で刑事責任を問われたらメスを持てない」と一斉に反発、「逮捕は不当」とする声明が相次いだ。

 富岡署が4月14日に本部長表彰を受けた際も、大阪府保険医協会などが「不当な『表彰』の辞退を要求する」との声明文を同署に提出した。

(河北新報、2006年06月29日)