従来より、地方中核病院の産婦人科の多くは、医師の人事を全面的に大学の医局人事に頼ってきました。
従って、大学病院自体が極端な医師不足に陥って、大学病院の診療・研究態勢を維持するために派遣医師の総引き揚げを決定すれば、必然的に、引き揚げられたその日から地方中核病院の産婦人科は休診に追い込まれる事態となってしまいます。
地域の中核病院が産婦人科休診に追い込まれた場合には、その地域の産婦人科医療の全体が一気に崩壊してしまいます。地域で産婦人科医療を今後も末永く継続させていくためには、長期的視野に立って、地域でも専門医の養成をしていく体制を本格的に構築する必要があります。これは、産婦人科だけでなく、他の診療科でも事情は全く同じです。
今いくら大活躍している有能な医師達であっても、みんないつかは必ず年老いて働けなくなっていきます。いつ倒れてしまうかもわかりません。自分達の亡きあとも、地域の医療がちゃんと継続されていくような態勢を、普段からちゃんと築き上げておく必要があります。
地域医療の存続のためには、まず、地域の中核病院を研修医が大勢集まって来るような活気のある病院にしなくてはなりません。研修医は、病院の未来の柱であり、地域にとって宝です。研修医に選ばれる病院にならないことには、病院の未来はあり得ないと思います。
****** 朝日新聞、2007年4月2日
大学病院も産科医不足 研究・がん治療瀬戸際
子宮がんなどの治療も縮小し、研究も思うようにできない――。朝日新聞が全国80大学の産婦人科医局に実施した調査で、大学病院でも医師不足が深刻になっている実態があきらかになった。夜間の出産への対応に加え、トラブルがあればすぐに訴訟になるといった理由から敬遠傾向にある中、地域の病院に派遣していた医師を引き揚げても補えず、5年間で医師が半減した大学も多い。高度医療と人材育成、治療法の研究を担う大学病院の産婦人科が危機に直面している。
(中略)
調査は全国80大学の産婦人科医局を対象に調査票を2月に送り、67大学(84%)から回答があった。1月現在、大学本体の医局にいる医師数は平均22.1人。02年の27.1人から5人減った。5年前より医局員数が増えたのは4大学だけだった。
入局者数は、02年が3.9人、03年は3.4人だったが、臨床研修が必修化され、新人医師が2年間に様々な診療科を回るようになった04年は1.1人、05年は0.9人。研修を終えた医師が初めて入局した06年も2.7人と、必修化前の水準には戻らなかった。
4月の新規入局予定者数は平均2.9人。「0人」が7大学、「1人」が15大学あった。
(朝日新聞、2007年4月2日)