ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

新医師臨床研修制度

2007年04月22日 | 地域周産期医療

新人医師の臨床研修は、従来、出身大学の医局で多く行われてきました。しかし、その当時の研修医達は、アルバイトをしなければとても生活できないわずかな日雇いの給料で、しかも下働きの雑務に追われて、研修制度としては非常に多くの問題点が指摘されていました。

国が2004年から導入した新医師臨床研修制度では、研修医のアルバイトを禁止し、各病院が給与や労働時間などの処遇を大幅に改善した上で、内科、外科、産婦人科、小児科など幅広い診療能力の習得を目指した研修プログラム(2年間)を公表し、新人医師が自分の研修先を自由に選ぶ方式になりました。

現行の新しい医師臨床研修制度にもいろいろな問題点があるのかもしれませんが、研修医がアルバイトをしなくても十分に生活できる安定した給料を得られるようになったし、研修医自身がいろいろな病院の研修プログラムを比較検討して、自分にとって最適と判断した研修先で研修が受けられるようになった点など、従来の研修制度と比べると、格段に改善されたと思います。もはや、現行制度を廃止して元の制度に戻すなんてことは絶対にできる筈がありません。

とは言うものの、医師になって最初の2年間の初期臨床研修は、臨床研修の単なる序章にしか過ぎません。はっきり言って、どこで初期臨床研修を受けようとも、それほど大きな差はないと思います。各医師のキャリア形成にとって最も重要な臨床研修は後期臨床研修から始まると言っても過言ではありません。どの病院のどの診療科で後期臨床研修を開始するのか?は、医師のその後の人生行路の方向を決定する非常に大きな分岐点であり、それぞれの医師にとって人生の中でもきわめて重要な選択の一つだと思います。

病院側にとっても、『初期臨床研修や後期臨床研修の研修先として、多くの若手医師達に選択してもらえるかどうか?』に、将来の命運がかかっていますから、若手医師達の個人の選択が、各病院の将来にとってもきわめて重要となります。また、研修先として一度は選んでもらえたとしても、実際は期待に反してまともな研修ができない環境だったとすれば、研修医達は失望してもっといい研修先を求めてどんどん辞めてしまうでしょうし、後に続く後輩も決して来ないでしょう。逆に、先輩の研修医達が、生き生きとして目を輝かせて働いていて、大きな成長を遂げているのを見れば、後に続く後輩も多くでてくると思います。『毎年、多くの研修医達が集まって来るような、魅力ある研修環境を提供できるかどうか?』に病院の命運が大きく左右されると思います。