コメント(私見):
今、地域中核病院の産科が、次々に分娩休止や分娩制限に追い込まれています。
今は何とかギリギリの診療体制で持ちこたえている病院であっても、常勤医の一人が個人的都合で辞職してその補充がない場合には、残された医師たちの仕事量が急増してしまい、病院の分娩体制維持が困難となってしまうかもしれません。また、大学医局の事情による派遣医師引き揚げの可能性もあります。
今後、事態を立て直していくには、それぞれの病院や自治体だけで個別に対応していこうとしても大きな限界があります。
地域の産科医療を絶滅の危機から守るためには、地域住民、行政、地域の医療機関などが一体となって、地域の限られた医療資源を有効に活用して、一致団結して対応していく必要があると思います。
参考:医療資源の有効活用に地域一体で対応を (医療タイムス、長野)
産科・小児科の重点配置を提言 (長野県産科・小児科医療対策検討会)
****** 産経新聞、2007年4月22日
浦安市川市民病院が「分娩」休止 医師不足 再開めど立たず
市川市と浦安市が運営する「浦安市川市民病院」(鎌野俊紀院長、浦安市当代島)が5月1日から産婦人科の出産を休止することが21日わかった。常勤の産婦人科医1人が退職し、24時間態勢で対応できなくなったのが理由。産婦人科医の補充の見通しも立たず、当面、再開は困難な状況に陥っている。同病院の出産数はこれまで年約200件だった。
同病院によると、産婦人科はこれまで常勤医3人の態勢だったが、20代の女性医師が個人的な理由で3月末で退職。常勤医2人では出産に24時間態勢で対応するのは難しいと判断し、5月以降の受け入れ休止を決めた。
5月以降に出産予定の妊婦約20人については、近隣の医療機関を紹介するなどし、すでに転院済みという。4月中に出産予定の妊婦は2人態勢で対応している。
外来診療についても、これまで週5日あった産科は全面的に見合わせ、今後は婦人科だけの診療となる。
浦安市川市民病院は昭和26年、当時の浦安町と南行徳町とで病院組合を設立し、診療を開始。現在344床、15の診療科を有する総合病院で、県の救急基幹センターに指定されている。
(産経新聞、2007年4月22日)
****** 毎日新聞、2007年4月20日
医師不足:銚子市立総合病院、新規入院お断り 内・婦人、小児科が来月から /千葉
銚子市立総合病院(佐藤博信院長)は医師不足のため、5月から内科と婦人科、小児科の3科の新規入院を断り、精神神経科は7月から1病棟(54床)を休止する。佐藤院長が19日に「大学病院からの派遣医師の退職などで、3科の2次救急(入院、手術など)の対応もできなくなった」と発表、3月末の呼吸器科休止に続く縮小に市民から不安の声が出ている。
同病院の発表では、内科の常勤医師が5月から2人減の4人となり、小児科と婦人科は現在の各1人では外来・入院患者の対応が難しく、新たな入院患者は受け入れないという。精神神経科も3人の医師が7月から2人になる。皮膚科や泌尿器科などは他の病院からの派遣医師(非常勤)で週に2~3日の診療対応など、現在の11科の常勤医師22人が5月から20人に、さらに7月には17人に減る。一般ベット数も現在の223床が約100床減の110~120床になるという。
内科の入院患者の一部は転院措置をとり、救急医療体制については医師会や近隣の病院などと対応を検討している。佐藤院長は「医師不足による診療科の休止が収入減になる。悪循環を食い止めるには医師確保しかない」と語り、今後も各医療機関と連携していくという。【新沼章】
(毎日新聞、2007年4月20日)
****** 毎日新聞、2007年4月21日
厚木市立病院産科存続問題:小林市長「引き続き努力」 /神奈川
厚木市立病院産婦人科の存続問題について、同市は20日、協力関係にある東京慈恵会医科大から常勤医師4人を7月いっぱいで引き揚げる方針が伝えられたことを正式に発表した。小林常良市長は定例記者会見で「存続に努力したい」と語り、引き続き医師確保に全力を挙げる意向を示した。また「助産師を活用し、出産の態勢整備を検討したい」と話した。正常出産の場合に助産師が対応することで、医師の負担軽減が可能としている。
一方、同病院は、担当する出産件数(05年度実績587件)が「市内の医療機関で最多ではなかった」と訂正した。市内で出産可能な4カ所のうち、同病院は3番目という。【佐藤浩】
(毎日新聞、2007年4月21日)
****** 毎日新聞、2007年4月13日
厚木市立病院産科存続問題:常勤医、7月引き揚げ 廃止の可能性も /神奈川
◇慈恵医大、常勤医を7月引き揚げ
厚木市立病院(厚木市水引1)産婦人科の存続問題で、医師派遣などの協力関係にある東京慈恵会医科大(東京都港区)が、同科の常勤医師4人全員を7月いっぱいで引き揚げる方針を市立病院側に伝えた。同科は縮小されるか、最悪の場合は廃止される可能性が出てきた。厚木市内の医療機関で最多の年間約600件の出産を担ってきたことから、地域医療に大きな影響を与えそうだ。【佐藤浩】
関係者によると、市立病院産婦人科のトップが昨年末に病気になり、慈恵医大側が「異常出産に対応できない」などとして常勤医師引き揚げの意向を伝えた。継続には指導的立場の医師を招くのが条件とし、双方がそれぞれ候補者に交渉したが、断られたという。
慈恵医大側は「どうにもならなくなった。指導的立場の医師がいなければ(常勤医師を)引き揚げざるを得ない」と説明している。
一方、同大に協力関係の継続を要請していた小林常良市長は「何が何でも(産婦人科を)存続させたい」と話しており、今後は他大学の協力を求めていく方針。ただ、全国的な産婦人科医不足の中で、極めて困難とみられる。
厚木市立病院は産婦人科、内科など計15診療科目があり、ベッド数は一般350床、感染症6床。前身は1951年に開設された旧県立厚木病院で、03年4月に県から経営移譲されて市立病院となった。
◇「お産過疎地」、都市部除き深刻
全国的に産科医、助産師が減少する中、県内でも05年末ごろから都市部を除く地域に「お産過疎地」が出始めた。激務や訴訟リスクの高さなどから産科医の成り手が減っているためだ。
県立足柄上病院(松田町)は昨年3月、産婦人科の常勤医3人全員が大学病院に引き揚げ、年間650件ほどの分娩(ぶんべん)受け入れを一時停止せざるを得なくなった。大和市立病院は今年7月に産婦人科の常勤医を4人から2人に減らす予定で、受け入れ制限を告知。三浦市立病院は産婦人科の常勤医2人を確保しているが、小児科医が大学に引き揚げてしまって周産期医療が不可能となり、分娩を当面休止している。
公立病院は、給与が条例や規則で決められており、医師誘致のために賃上げすることが難しく、医師不足に陥りやすい。何とか産科医を2人体制にした足柄上病院の矢野敏行・副総務局長は「ほとんど使命感だけで来てもらっている」と話した。
県は分娩に携わることができる助産師を活用しようと、結婚や出産などで一線を離れた「潜在助産師」らの再教育に助成などをしている。【稲田佳代】
(毎日新聞、2007年4月13日)
****** 神奈川新聞、2007年3月15日
産科医の減少に伴い7月から分娩制限へ/大和市立病院
大和市の基幹病院である大和市立病院(同市深見西、大宮東生院長)が七月以降、産科医の減少に伴い、分娩(ぶんべん)制限を行う方針であることが十四日、分かった。県央地域では厚木市立病院が七月以降の分娩受け入れを停止するなど産科医不足が進んでおり、病院関係者からは「自治体病院が単独で医師を確保するのは難しい。県などの行政主体でどう分娩体制を維持するか考えてほしい」との声が上がっている。
同病院によると、現在、勤務している産科医は常勤四人、非常勤三人の計七人。常勤医の定員は五人だが、全国的な産科医不足により、一昨年末から四人で診療を続けていた。しかし、今年六月末で一人が大学の医局に戻され、一人が自己都合で退職。常勤医の半減に伴い、受け付けを縮小せざるをえなくなった。
同病院によると、大和市内でお産を引き受ける病院・診療所は四カ所。年間計約三千件の分娩が行われ、大和市立病院でも年間約八百件の分娩が行われていたというが、七月以降は従来の約三分の一程度、年間二百五十件程度の受け付けにとどめる方針。一定数以上の分娩予約については「他の病院を紹介する」としているが、全県的な産科医不足などもあり「紹介してもその病院が患者を引き受けてくれるかどうかは分からない」と頭を悩ませている。
同病院では、協力関係にある大学病院に医師の派遣を要請するとともに、インターネットなどで医師を公募。いまだ医師確保のめどはたっていないといい、医師確保に向け県などに要望する方針だという。
(神奈川新聞、2007年3月15日)
****** 産婦人科 分娩休止一覧
昨年
4月 福島県大野病院/福島
新城市民病院/愛知
西宮市立中央病院/兵庫
宇都宮社会保険病院/栃木
県立佐原病院/千葉
市立函館病院/北海道
岐阜社会保険病院/岐阜
北九州市立八幡病院/福岡
下伊那赤十字病院/長野
国立病院機構・鶴舞医療センター/京都
健康保険南海病院/大分
草加市立病院/埼玉
社会保険神戸中央病院/兵庫
国立病院機構・水戸医療センター/茨城
済生会富田林病院/大阪
八代総合病院/熊本
荒尾市民病院/熊本
斗南病院/北海道
金沢赤十字病院/石川
金沢市立病院/石川
県立佐原病院/千葉
市立小樽病院/北海道
庄原赤十字病院/広島
県立五條病院/奈良
5月 西条中央病院/愛媛
6月 新潟労災病院/新潟
市立加西病院/兵庫
高砂市民病院/兵庫
JR大阪鉄道病院/大阪
安曇野赤十字病院/長野
公立おがた総合病院/大分
7月 坂出市立病院/香川
加賀市民病院/石川
神鋼病院/兵庫
白根徳洲会病院/山梨
社会保険山梨病院/山梨
加納岩総合病院/山梨
8月 福島労災病院/福島
井原市民病院/岡山
町立大島病院/山口
9月 都立豊島病院/東京
西横浜国際総合病院/神奈川
市立根室病院/北海道
福島県立会津総合病院/福島
兵庫県立尼崎病院/兵庫
10月 新潟県厚生連けいなん病院/新潟
国立病院機構・南和歌山医療センター/和歌山
国立病院機構・災害医療センター/東京
上野原市立病院/山梨
済生会御所病院/奈良
11月 大館市立扇田病院/秋田
県立志摩病院/三重
新潟県立がんセンター/新潟
12月 宇部興産中央病院/山口
NTT東日本長野病院/長野
銚子市立総合病院/千葉
昨年までに縮小・休診/静岡
島田市民病院(7→1名)
御前崎市民病院(1名)
伊東市民病院(3→1名)
静岡県東部医療センター(6→1名)
共立蒲原病院(2→0名)
社会保険浜松病院(2→1名)
浜松日赤病院(1→0名)
浜松労災病院(3→0名)
昨年までの分娩休止/長野
丸子中央病院
町立辰野総合病院
安曇総合病院
富士見高原病院
下伊那赤十字病院
安曇野赤十字病院
NTT東日本長野病院
昨年までの分娩休止/大阪
KKR大手前病院
市立岸和田市民病院
昨年までの分娩休止/大分
国東市民病院(産婦人科休止)
今年
1月 東京逓信病院/東京
道立江差病院/北海道
銚子市立総合病院/千葉
塩谷総合病院 /栃木
東北労災病院/宮城
2月 みつわ台総合病院/千葉
八潮中央総合病院/埼玉
小郡第一総合病院/山口
3月 九州労災病院/九州
津和野共存病院 /島根
柏原赤十字/兵庫
阪和住吉総合病院/大阪
住友病院/大阪
大淀病院/奈良
県立三春病院/福島
彦根市立病院/滋賀
恵那市で唯一の産婦人科医院/岐阜
三浦市立病院/神奈川
総合磐城共立病院/福島
盛岡市立病院/岩手
釧路労災病院/北海道
江別市立病院/北海道
足立病院/釧路 北海道
宮城社会保険病院/宮城
境港総合病院/鳥取
福山市民病院/広島
東近江市立蒲生病院/滋賀
市立牛深市民病院/熊本
小国公立病院/熊本
福井総合病院/福井
県立東金病院/千葉
袋井市民病院/静岡
カレス・アライアンス日鋼記念病院/北海道
沖縄県立北部病院/沖縄
4月 オーク住吉産婦人科/大阪
盛岡市立病院/岩手
市立小樽病院/北海道
関西医科大学附属男山病院/京都
中津市民病院/大分
福井社会保険病院/福井
諏訪中央病院/長野
青森労災病院/青森
弘前市立病院/青森
菊水町立病院/熊本
福山市民病院/広島
国立病院機構・姫路医療センター/兵庫
済生会境港総合病院/鳥取
5月 旭川赤十字病院/北海道
県立坂町病院/新潟
浦安市川市民病院/千葉
6月 山鹿市立病院/熊本
7月 厚木市立病院/神奈川
8月 国立病院機構・栃木病院/栃木
9月 津島市民病院/愛知
10月 塩山市民病院/山梨
新宮市立医療センター/和歌山
11月 登米市立佐沼病院/宮城
今年度中に縮小・休診/静岡
袋井市民病院(2→0名))
聖隷三方原病院(7→4名)
聖隷沼津病院(3→2名)
共立湖西病院(3→0名)
今年度中に縮小・休診/北海道
カレス・アライアンス日鋼記念病院
滝川市立病院
留萌市立総合病院
道立紋別病院
北海道社会事業協会富良野病院
岩見沢市立総合病院
新日鉄室蘭病院
分娩制限
総合守谷第一病院/茨城 平成18年10月~
横浜市立みなと赤十字病院 平成18年12月~
東京医科大学八王子医療センター/東京
都立墨東病院/東京
中津川市民病院/岐阜
秦野赤十字病院/神奈川
福井愛育病院 /福井
隠岐病院/島根
龍ヶ崎済生会病院/茨城
水戸済生会総合病院/茨城
住吉市民病院/大阪
都立荏原病院/東京 平成18年12月~
大阪府愛染橋病院/大阪
関西労災病院/兵庫 平成18年~
大和高田市立病院/奈良
川崎協同病院/神奈川
北野病院/大阪
聖バルナバ病院/大阪
新潟市民病院/新潟
済生会横浜市南部病院/神奈川
市立宝塚病院/兵庫
市立伊丹病院/兵庫
市立池田病院/大阪
横須賀共済病院/神奈川
公立阿伎留医療センター/東京 平成19年1月~
太田総合病院/神奈川
JA広島総合病院/広島 平成19年2月~
近江八幡市立総合医療センター/滋賀
佐久市立国保浅間総合病院/長野
国立病院機構・松本病院/長野
新日鉄室蘭病院/北海道 平成19年6月~
大和市立病院/神奈川 平成19年7月~
ベルランド総合病院産婦人科/大阪
(この分娩休止リストの中に誤った情報があった場合には速やかに訂正いたします。ご指摘の程、よろしくお願い申し上げます。07/04/25)