産科・小児科を中心に、医師集約化によって医師の過重労働を改善しようという動きが全国的に活発になってきました。
産科・小児科の医師不足に関しては、最近ではマスコミでも大きく取り上げられていますし、国や県などでも対策がいろいろ協議されていて、一般の方々の間にも周産期医療の崩壊に対して危機感を持ってくださる方がだんだん増えてきました。
産科や小児科の場合は、診療科の特性から、若い一般の方々が関係しているので、地域住民の関心が集まりやすく、自治体の首長にとっても、『自治体内の産科・小児科が撤退ということになってしまえば、次の選挙では勝てない』という選挙対策的な事情もあります。
しかし、実際に絶滅の危機に陥っている診療科は、産科・小児科だけにとどまらず、例えば、麻酔科、外科なども相当に危機的な状況にあります。
特に、周産期医療の場合、麻酔科医の存在が非常に重要で、産科・小児科の「連携強化病院」では麻酔科を充実させることが必須条件となります。常勤の麻酔科医がいなくなってしまえば、周産期医療体制の継続はきわめて困難となります。
また、体力勝負の外科の先生方の平均年齢も年々上がっていて、若い外科医は非常に少ないです。このままでは、十年後に外科手術はできるのだろうか?と心配になります。
今後は、産科・小児科のみにとどまらず、もっと多くの診療科を含めて、医師確保、医師重点配置などの対策を協議してゆく必要があると思います。
****** 信濃毎日新聞、2007年4月10日
医師の集約化 格差を広げないために
(略)
産科の減少は深刻だ。2001年に68カ所あったお産を扱う施設は、今年1月に50カ所に減っている。今後も分べんの制限や休止を予定している病院が複数ある。
小児科医不足も同様だ。4月から辰野町立辰野総合病院、飯山赤十字病院で小児科の常勤医がいなくなったほか、規模の大きい総合病院でも医師の欠員状態が続いている。
総合病院では日中の外来、病棟診療に加え、当直勤務や緊急呼び出しの待機などを繰り返し、疲れ切った医師が少なくない。開業や転勤で医師が減ると、残った勤務医の負担が増すといった悪循環だ。
県の産科・小児科医療対策検討会は、二次医療圏ごとに中核となる「連携強化病院」を選び、医師を集める必要があると提言した。ほかの病院では、医師が辞めても、県内の主な医師派遣元である信大からは補充されない可能性が高い。
医師が減り続けると、中核病院以外では救急や入院患者の受け入れができなくなる心配がある。地域によってはお産や小児医療の場が遠くなり、医療レベルの低下につながる。今後、医療圏ごとの協議会で検討するが、住民の声を聞きながらの話し合いが必要になる。
問題は、集約化が「緊急避難」で済むのかということだ。県民の理解を得るためには、医師確保策を急ぐ必要がある。
(以下略)
(信濃毎日新聞、2007年4月10日)