ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

飯田下伊那の産科体制「やむを得ない」が8割

2007年04月05日 | 飯田下伊那地域の産科問題

地域の産科医療を絶滅の危機から守るためには、地域住民、行政、地域の医療機関などが一体となって、地域の限られた医療資源を有効に活用して、一致団結して対応していく必要があります。

とりわけ、実際に病院内で分娩を担当する産科医と助産師とが一致協力して事に当たる必要があるのは当然です。それもできないようであれば、病院の外部の人達の協力をとりつけられる筈がありません。

地域中核病院の分娩件数が急激に増加する状況であれば、現場で実際に分娩を担当する産科医、助産師などのスタッフの数を大幅に増やさないことには、仕事量の増加に適切に対応できる筈がありません。

緊急避難的な連携により地域の産科体制がかろうじて持ちこたえている間に、何とかして、地域中核病院の産科医、助産師の数を大幅に増やし、診療体制を強化していく必要があります。

手遅れになってしまう前に有効な手を打たないと、地域中核病院・産婦人科の絶滅速度がどんどん加速されていくばかりでしょう。国や県の政策による強力なバックアップも不可欠だと思います。

****** 信濃毎日新聞、2007年4月4日

飯田下伊那の産科体制「やむを得ない」が8割

 産科医不足のため、出産前の健診を診療所、出産を飯田市立病院で役割分担する体制を導入している飯田下伊那地方で、出産を経験した母親の81%が不満を抱えながらも、「やむを得ない」と考えていることが3日、信大医学部の金井誠講師が行ったアンケート調査で分かった。

 現体制を導入した後の昨年2-3月と9-11月に、同病院で出産した399人にアンケート用紙を郵送、238人から回答を得た。回収率は59・6%。

 調査結果によると、現体制について「よくできた体制」は18%で、「即刻この体制を中止すべき」は1%にとどまった。「若干不満があるがやむを得ない」が62%、「大きな不満があるがやむを得ない」が19%を占め、産科医不足の現状を受け入れざるを得ない現実を浮き彫りにした。

 診療所での妊婦健診について「満足」「やや満足」が計47%だったのに対し、「不満」「やや不満」は計26%。市立病院での分娩(ぶんべん)は「満足」「やや満足」が計79%、「不満」「やや不満」は計9%と、健診、分娩ともに満足している人の方が多かった。

 飯田下伊那地方では05年夏から06年春にかけ、出産できる医療機関が6から3に半減。昨年1月、34週未満の健診は診療所、出産は同病院で扱う体制を導入した。

 金井講師は県内の産科医、小児科医を各広域圏の連携強化病院に重点配置することを提言した県検討会の委員も務める。アンケート結果について「母親たちが現状を冷静に受け止め、地域の理解が進んでいる」と話し、「産科医が急に増える見込みがない以上、飯伊の事例は県内の産科医療を崩壊させないための一つのモデル」としている。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2007年4月4日)