産婦人科医の多くが少人数体制の過酷な勤務環境にあり、それが産婦人科医を志望する若手医師や医学生が少ない原因の一つとも言われています。平成17年の日本産科婦人科学会の調査でも、分娩取り扱い大学関連病院のうちで、14.2%が一人医長、40.6%が常勤医2名以下という事実が明らかとなりました。
そこで、産婦人科医の過酷な勤務条件を改善する目的で、平成18年4月に、『ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う公立・公的病院は、3名以上の産婦人科に専任する医師が常に勤務していることを原則とする。』という緊急提言が日本産科婦人科学会・産婦人科医療提供体制検討委員会より発表されました。それから2年以上が経過し、全国的に産婦人科・勤務医の再編成が進行しつつあり、常勤産婦人科医2名以下の公立・公的の分娩取り扱い施設はかなり減ってきている筈です。
しかし、地域によっては、産婦人科の勤務条件改善の必要性が理解されず、1人でも産婦人科医を確保すれば分娩の取り扱いを継続できるという考え方に立って、産婦人科医確保の努力を行っている自治体や病院の事例も、時々報道されています。もしも、産婦人科の集約化が全く進まないまま、個別の自治体や病院の努力で一人医長体制の産婦人科が復活するだけの状況が続けば、産婦人科の勤務条件はますます悪化するばかりで、母児の安全も確保できません。
参考記事:
産婦人科医療を安定的に供給する体制の提案、日本産科婦人科学会
緊急提言(日産婦委員会):ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う病院は3名以上の常勤医を!
平成18年4月7日
各位
日本産科婦人科学会
産婦人科医療提供体制検討委員会
本委員会は、中間報告書の提出に際して、以下の点について緊急の提言を行います。本提言の趣旨をご理解の上、何卒、迅速かつ適切なご対応をお願い申し上げます。
緊急提言
ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う公立・公的病院は、3名以上の産婦人科に専任する医師が常に勤務していることを原則とする。
提言の理由
1. 産婦人科医の不足の原因の一つが、その過酷な勤務条件にあることは、既に周知の事実である。しかし、平成17年度の本学会・学会あり方検討委員会の調査においても、分娩取扱大学関連病院のうちで、14.2%が一人医長、40.6%が常勤医2名以下という事実が明らかとなっており、勤務条件の改善傾向は認められていないと考えざるを得ない。
2. それに加えて、地域の病院によっては、産婦人科の勤務条件改善の必要性が理解されず、一人でも産婦人科医を確保すれば、分娩取扱を継続できるという考え方に立って、産婦人科医確保の努力を行っているという現状がある。
3. 産婦人科医を志望する医師および医学生に対して、近い将来の産婦人科医の勤務条件の改善の見通しを提示するためには、この状況を改善する明確な意思を学会が示す必要があると考えられる。
4. 本提言を実効のあるものとするために、各地域の医療現場で働く産婦人科医師は主体的にその活動の場を再編成すべきである。