****** 毎日新聞、栃木、2009年3月31日
佐野厚生総合病院:12月から産科休止
周産期医療機関、栃木病院も返上
リスクの高い妊娠に対応する地域周産期医療機関に認定されている佐野厚生総合病院(佐野市)が、12月から産科を休止することが分かった。また、国立病院機構栃木病院(宇都宮市)も2月に地域周産期医療機関の認定を県に返上していたことが分かった。07年の分娩(ぶんべん)数は、佐野厚生総合病院は540件、国立栃木病院は135件に上る。いずれも産科医の不足による対応で、地域の産科医療に深刻な影響を及ぼしそうだ。
佐野厚生総合病院は現在3人いる産科医が4月から2人に減る。11月まで予約が入っている分娩には対応するが、それ以降の新規出産は受け入れない。国立栃木病院も医師が減少し、産科は継続するもののハイリスク分娩には対応しない。
県医事厚生課によると、07年の県内医療機関での分娩は1万8335件。最も多いのは済生会宇都宮病院(宇都宮市)で1248件に上る。
比較的高度な医療設備とスタッフを抱え、異常妊娠に対応する地域周産期医療機関に認定されているのは、08年度で県内8病院。両病院の産科休止や認定返上により、認定病院は6病院に減り、宇都宮市内では済生会宇都宮病院、両毛地域では足利赤十字病院(足利市)のみになる。【葛西大博】
(毎日新聞、栃木、2009年3月31日)
****** 読売新聞、栃木、2009年3月28日
周産期医療センター 国立栃木認定返上
佐野厚生総合、出産休止へ
母体や胎児へのリスクが高い出産に対応する「地域周産期母子医療センター」が、現在の8病院から2減となる見通しであることが27日、わかった。国立病院機構栃木病院(宇都宮市中戸祭)が認定の返上を県に申し出たほか、佐野厚生総合病院(佐野市堀米町)が11月末で出産の扱いを休止する方針。いずれも医師不足を理由に挙げている。今後、緊急時や県南部の出産受け入れ体制に大きな影響が出る可能性がある。
県によると、国立栃木病院は現在2人いる産科常勤医が4月から1人となる見込みで、「医師不足のためハイリスク分娩に対応できない」と2月に返上の申し入れがあった。
認定返上は2007年11月の佐野市民病院、宇都宮社会保険病院に続いて3件目。
佐野厚生総合病院は、現在入っている11月までの予約には対応するが、新規の出産受け入れは休止する。同病院によると、2007年度に5人いた産科常勤医が08年度に3人に減少。3月末にはさらに1人が退職することになり、休止を決断したという。今後、新たな医師を確保できない場合は「センター認定を返上するしかない」と話している。
それぞれの病院の認定返上、出産休止は、27日に開かれた県周産期医療協議会で報告された。
国立栃木病院は、07年度から出産受け入れを縮小している。
一方、佐野厚生総合病院は年間約400件の出産を扱っており、佐野市内で出産を扱う医療機関3か所のうち救急搬送に対応できるのは同病院だけ。周辺の病院が受け入れを大幅に拡大しなければ、地元で出産施設が見つからない「お産難民」が発生する可能性もある。
協議会では、「小児救急や高度な周産期医療を担う足利赤十字病院の負担増は避けられないのではないか」と懸念する声が上がった。
(読売新聞、栃木、2009年3月28日)
****** 下野新聞、2009年3月28日
佐野厚生病院、12月から産科休止 周産期機関返上へ
合併症などリスクの高い妊婦を受け入れる地域周産期医療機関に認定された佐野厚生総合病院(佐野市)が十二月から産科を休止する方針であることが二十七日、分かった。現在三人の産科常勤医が四月から二人に減るためで、十一月までのお産と産科救急も当面対応する予定という。出産前後の周産期医療体制を支える地域拠点病院がこのまま離脱すれば、弱体化は必至だ。
同日の県周産期医療協議会で病院関係者が報告した。
下野新聞社の取材に対し、現在診療している妊婦は責任を持ってお産まで担当するが、四月以降に常勤医が三人に戻らなければ、十一月いっぱいでお産を休止せざるを得ないという。
佐野厚生のお産件数は、年間四百件近くに上る。産科救急は四月から対応できる範囲が縮小する見通し。また地域周産期医療機関の認定も産科が休止すれば、返上するという。
県保健福祉部によると、県内でお産に対応する医療機関は減少する一方。三年前には五十カ所だったが、昨年四月には下都賀総合病院(栃木市)のお産休止などで四十四カ所に減った。
地域拠点病院も今年二月に国立病院機構栃木病院(宇都宮市)が地域周産期医療機関の認定返上を申し出たばかりだった。
県保健福祉部の担当者は「きょう初めて聞き、えっと思った。救急の対応など今後の状況を、きちんと確認したい」と、驚きを隠さなかった。
(下野新聞、2009年3月28日)
****** 下野新聞、2009年4月6日
周産期搬送受け入れ改善 「3回以上拒否」減少 県内08年
出産前後の周産期救急搬送で、県内医療機関に三回以上受け入れを断られた事例は2008年1年間に9件あったが、前年(12件)より改善したことが5日までの、県消防防災課の調査で分かった。受け入れ円滑化を目指した周産期医療連携センター事業が一定の効果を挙げた、と同課はみている。しかし医療機関が断った最多回数は前年(5回)を上回る7回。かかりつけ医のいない「飛び込み出産」が、救急搬送を難しくしている実態が県内でも顕在化した。
周産期の救急搬送は08年一年間で236件。うち3回断られたのが計6件で4、5、7回は各1件だった。
最多の7回断られた事例は、小山市消防本部管内で起きた。女性は腹痛を訴えたが、救急隊は明らかな陣痛と判断。かかりつけ医はなく、近くの産科医療機関に照会したが、受け入れ先は見つからない。結局、最後のとりでの総合周産期母子医療センターを置く大学病院に搬送した。駆け付けた救急車が現場から動けず、最長の一時間待機した事例も、かかりつけ医がいなかった。
鹿沼市の30代女性が昨年4月、自宅で出産。搬送先が見つからない上、へその緒の処置などでも時間がかかった。最終的に赤ちゃんと共に別の大学病院に搬送された。こうした飛び込み出産は「妊娠週数が分からず、感染症や母体の合併症、未熟児などの問題もあり、地域の病院で受け入れにくい」と、大学病院関係者は指摘する。
奈良県で07年夏、妊婦の受け入れ先が見つからず、救急車内で死産したのも同様の事例だ。
県内市町は無料で妊婦健診が受けられるよう公費負担の回数を引き上げ、国も08年度第2次補正予算で出産までに必要な計14回分を財政措置した。
だが別の大学病院関係者は「お産なんて陣痛が来たら、どこかで産める、と考える人に妊婦健診の公費負担が何回でも関係ない」と悲観的だ。
(下野新聞、2009年4月6日)