ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

腹膜妊娠

2010年03月10日 | 周産期医学

peritoneal pregnancy

【定義】 腹膜妊娠とは妊卵が腹膜に着床して発育する妊娠と定義される。

【頻度】 
子宮外妊娠の1.40%(産婦人科研修の必修知識2007)

子宮外妊娠の0.5%(最新産科学、異常編)

【分類】
①原発性腹膜妊娠:
 受精卵が直接腹膜に着床するもの

②続発性腹膜妊娠:
 腹膜妊娠の大部分は続発性と言われる。

 卵管流産や卵管破裂の後に、胎芽のみ腹腔に排出され、胎盤の一部はなお卵管に着床し続けて、胎芽の発育が持続するとともに、この胎盤がさらに広間膜、子宮後面、大網、腸管などに着床面を拡大していく。胎児の周囲はフィブリン膜で胎嚢を形成する。胎盤は周囲臓器(腸管、大網、子宮)などに癒着する。

【症状】 腹膜は広いので、血液供給が保たれれば、胎児はかなりの大きさまで発育することもある。胎動による不快感、腹痛を訴える。

【診断】
①診断困難なことが多い。
②腹部X線像、超音波断層法、MRI検査が参考になる。
③胎児部分を直接触れる。

【治療】
①開腹して腹腔内の胎児を除去する。
②まれに生児を得ることがある。(多くは先天奇形)
③胎盤は周囲臓器との癒着の程度により、一期的に摘出するか胎盤を残すかを決定する。
 胎盤除去可能の場合は、胎盤が付着している臓器(子宮、付属器、大網など)とともに切除する。
 胎盤除去不能の場合は、胎児・臍帯のみ除去し、臍帯を結紮して胎盤は残置したまま閉腹して胎盤の自然融解、排出を待つ。MTXの全身投与で胎盤組織を変性壊死させた後に再開腹して除去する場合もある。