飯田下伊那地域では、現在、3施設(飯田市立病院、椎名レディースクリニック、羽場医院)で、地域の分娩(約1500件)を分担して取り扱ってます。しかし、時代の流れにかんがみて、数年後には地域の分娩のほとんどが飯田市立病院に集中する可能性も考えられます。
現在、飯田市立病院が取り扱っている年間分娩件数は約1000件で、産科病棟はほぼ満床の状態が続き、施設的にこれ以上の妊婦さんを受け入れるのは困難な状況ですが、病院の構造上、産科病棟を現在の場所で改修・拡張するのには限界があります。そこで、第3次整備計画を練り直して、2年後に手術室に隣接した中庭に周産期センター棟が新築されることになりました。
現在のスタッフの陣容では年間分娩件数1000件で精一杯の状況です。今のうちに産婦人科医、助産師の数を少しづつ増やしていく必要があると考えてます。産婦人科医数は一進一退を繰り返していますが、数年前の最悪期と比べるとやや増加傾向にはあります。4月からは1人増えて一応6人体制になります。また、助産師も毎年多くの新人を迎えることができ総勢40人近くまで増えてきましたが、最近は助産師自身のベビーラッシュで経験豊富な助産師の多くが産休中で、修行中の若い助産師の比率が高くなり、産科病棟師長は勤務表作成のやりくりにいつも頭を悩ませている状況です。
周産期医療を充実させるためには、産科だけでなく小児科や麻酔科の充実が非常に重要です。飯田市立病院では、以前から小児科の先生方が新生児医療に熱心に取り組んでおられます。緊急時にはいつでも分娩室や手術室に駆けつけて来てくださり、新生児の蘇生処置をしてくださってます。また最近、麻酔科のマンパワーが充実してきて非常に助かってます。4月からは1人増えて麻酔科7人体制となります。真夜中の緊急帝王切開にも、いつも麻酔科医2人で適切に対応してくださいますし、年に数例はある超緊急帝王切開(子宮破裂、臍帯脱出、常位胎盤早期剥離など)にもいつも適切に対応してくださってます。
考えてみれば、周産期医療提供体制は1人や2人の頑張りだけではどうにもなりません。いっとき盛り上がって頑張ればそれで済むようなものでもありません。大きな組織の体制が永続的に機能する必要があります。私も定年退職までの9年間を精一杯頑張りたいと思いますが、個人の頑張りには限界があります。どの分野で頑張っている人でも、みんな年々歳を取っていき、いつかは引退しなければなりません。その時、その業務を引き継いでくれる次の世代の人が育ってなければ、その業務はそこで途絶えてしまいます。周産期医療の業務は、人類が存続する限り、今後も引き継いでいく必要がありますが、次世代の人達が育ってくれないことには業務を存続させることが困難となってしまいます。次世代の若い人達が入門を尻込みするような過酷な勤務環境で、無理に無理を重ねて頑張り続けるのは考えものです。若い人達が喜んで入門できるような勤務環境を整えることが重要です。この業界の今最も重要な課題は、持続可能な組織の体制を確立することだと思います。次世代を担う若い人達が多く集まって、立派に育っていく場所を作りたいと思います。10年後も20年後も立派に機能する組織を残したいと思います。