congenital diaphragmatic hernia
・ 横隔膜の先天性欠損部部位から腹腔内臓器が胸腔内に脱出する。
・ 8割が左側に発生し、脱出臓器は小腸、結腸、脾臓、胃、肝臓などであるが、肝脱出例は重症例が多い。欠損部位は後外側に多い(Bochdalek孔ヘルニア)。
・ 肺低形成による新生児遷延性肺高血圧(PPHN)を伴う。
【発生頻度】 2000~3000人に1人で、性差はない。
【合併奇形】 腸回転異常症、心奇形、染色体異常など。
【診断】
・ 出生前診断例が増加している。
本症は、右側で脱出臓器が肝臓のみの場合を除けば、超音波検査で異常を指摘しやすい疾患である。羊水過多をきっかけとすることが多いが、より早期に超音波のスクリーニングで指摘されるケースも増えている。さらに胎児MRIを撮影することによって、解剖学的な異常はおおむね出生前に診断できるようになった。
胎児超音波検査: 胃(st)と心臓(hrt)が胸腔内に認められる
・ 胸腹部単純X線写真: 患側胸腔内の消化管ガス像と縦隔の健側偏位を認める。
left-sided congenital diaphragmatic hernia
left-sided congenital diaphragmatic hernia
right-sided congenital diaphragmatic hernia
【治療】
・ 出生前診断症例では、予定帝王切開あるいは計画分娩を考慮し、出生後に外的な刺激を避けるように管理する。分娩方法は、世界的には経腟分娩が標準であるが、日本では出生直後から万全の体制で新生児の治療に当たれるよう、帝王切開が選択されることも多い。いずれにせよ、本疾患の管理に習熟したスタッフが待機する環境での計画分娩が望ましい。
・ 初療: 経鼻胃管を挿入し、胃内の減圧により肺圧迫を減圧する。鎮静し、気管挿管を行い呼吸管理を開始する。
・ PPHNに対しては、高頻度振動換気法(HFO)、一酸化窒素(NO)吸入療法、体外式膜型人工肺(ECMO)などを考慮する。
・ 手術: 胸腔内に脱出した臓器を腹腔へ還納して横隔膜の孔を閉鎖する。欠損孔が小さい場合には直接縫合できるが、これができないときにはゴアテックスなどの人工布を縫着することが多い。後者の場合、ヘルニアが再発することが多い。
※ 近年、鏡視下手術が導入されつつある。適応に関しては検討が待たれる。
【予後】 本症全体の救命率は60~70%であるが、肺低形成の程度によって予後が大きく異なる。一般的には、肝脱出例、妊娠早期から発見されたもの、羊水過多を伴うもの、超音波で計測した肺が小さいものなどが予後不良因子とされている。また、染色体異常や重篤な心奇形を合併している場合も、予後不良である。