anorectal malformation(imperforate anus)
【病態】 先天的な肛門形成異常で、肛門の位置異常、会陰部に瘻孔が開口しているもの、肛門が欠如しているものなど、外観はさまざまである。
【疫学】 発生頻度は5000人に1人で、男児にやや多い。
【病型】 直腸盲端の高さと恥骨直腸筋群との位置関係によって、低位、中間位、高位に分類される。男児では高位・中間位、女児では低位が多い。
【合併奇形】 本症の50%に合併奇形を認める。腎奇形(水腎症、膀胱尿管逆流症など)、心奇形、食道閉鎖症、十二指腸閉鎖症、椎体異常など。
【診断】
● 会陰部の注意深い視診: 本来の肛門の位置に肛門がない。あるいは肛門の位置に異常がある。瘻孔がある場合はそこから胎便が出てくる。会陰や陰囊の皮下に胎便の透見できる索状物があることもある。男児の場合、瘻孔の位置は肛門窩から陰囊、陰茎背面の間、女児の場合、肛門窩から膣前庭までの間のどこにでもありえる。また、肛門が外見的には正常に見えてもその奥の肛門管や直腸に狭窄があるものも直腸肛門奇形の一つである。
● 倒立位X線撮影(invertography、Wangensteen-Rice法): 廔孔を伴わない例において、直腸盲端の位置を確認し、病型診断するために行う。ガスが直腸まで到達していなければ診断できず、また盲端部に胎便がたまって誤診することもあるため、近年はより直接的な診断が可能である超音波検査やMRI検査が行なわれる。
● 瘻孔造影: 廔孔を有する症例では、瘻孔からバルーンカテーテルを挿入して造影を行い、直腸盲端を描出し、瘻孔の長さを計測する。
【治療】
● 低位型では、多くの場合、新生児期に根治手術(一期的肛門形成術)を行う。中間位・高位型では人工肛門を造設後、乳児期に肛門形成術を施行する。従来、後方矢状切開直腸肛門形成術(Pena手術)が広く行われてきたが、近年では、鏡視下手術も行われてきている。
● 術後の排便機能は低位型・中間位型ではほぼ良好であるが、高位型では半数以上に便失禁がみられ、必ずしも良好とはいえない。