Pseudo-Hirschsprung's disease
腸管壁神経節細胞が存在するが、Hirschsprung病と同様に消化管の運動機能に異常を示す疾患の総称。
多くの異なる病因・病態より構成される疾患群である。本疾患群の発生頻度は非常に低く、病因・病態についても不明な点が多く、また、報告者によって診断基準や概念が異なることもある。
【症状】 Hirschsprung病と同様、胎便の排泄遅延や腹満、胆汁性嘔吐などの新生児期の消化管通過障害、さらに腸炎、巨大結腸、慢性便秘などの原因となる。
【分類】 組織学的に、神経節細胞の数や形態に異常がある場合と、神経節細胞には全く異常を認めない場合がある。
Hirschsprung病類縁疾患の分類
1.腸管壁神経節細胞の組織学的形態異常あり
a)神経節細胞減少症 (hypoganglionosis)
b)神経節細胞未熟症(immature ganglionosis)
c)IND(Intestinal neuronal dysplasia)
2.腸管壁神経節細胞の組織学的形態異常なし
a)CIIPS(chronic idiopathic intestinal pseudo-obstruction syndrome)
b)MMIHS(megacysitis microcolon intestinal hypoperistalsis syndrome)
【診断】 診断基準はいまだコンセンサスを得られてない。
新生児期に排便障害や腹部膨満症状が続くのにもかかわらず、検査所見(注腸造影、直腸粘膜生検、肛門内圧検査)上Hirschsprung病に矛盾する結果を得た場合には、Hirschsprung病類縁疾患の可能性を考慮する。
注腸検査: Hirschsprung病に特徴的な狭小部やcaliber changeは認められないことが多く、直腸からS状結腸にかけての拡張像が認められることが多い。
【治療】
内科的治療: 腸管蠕動不全に対し、消化管運動促進剤としてクエン酸モサプリド(ガスモチン)、エリスロマイシン、大建中湯などが用いられる。栄養管理は可能であれば経腸栄養剤で、それでもイレウス症状や腸炎を発症する場合には中心静脈栄養を併用する。
外科的治療: 消化管の減圧と経腸栄養のために腸瘻造設が行われる。減圧用の胃瘻が置かれることも多い。
腸管蠕動不全が恒常的に続く症例に対しては、小腸移植も適応となるが、現時点では小腸移植の成績は必ずしも満足できるものではなく、リスクとベネフィットを十分に検討する必要がある。
【予後】 未だ治療法が確立されておらず、予後不良の場合が多い。神経節細胞未熟症では成長にともない神経節細胞は成熟するが、神経節細胞減少症では神経節細胞の数が増えない。