Primitive Reflexes (Newborn Reflexes)
【定義】 原始反射は脊髄・脳幹に反射中枢をもち、胎生5~6か月より発達し、脳の成熟とともに消失し始め、さらに高次の神経機構(中脳・大脳皮質)の完成により抑制されていく反射である。
原始反射が存在する時期には、その反射が関与する随意運動はみられず、その随意運動が出現すると、その原始反射は消失する。
【原始反射の診断的意義】
①存在すべき時期に誘発できない: 脳障害
②反射に左右差がある: 上腕神経叢麻痺(分娩麻痺)、鎖骨骨折
③消失すべき時期に存在する: 脳障害
【原始反射の種類】
・ モロー反射 Moro reflex
背臥位から児を座位方向に半ばまで引き上げ、頭部を後方に落とすと、児は手を開いたまま腕を急速に開排伸展する。ついで腕を内転させる。反射は通常4か月で消失する。
・ 手掌把握反射 palmar grasp
検者の手を新生児の手掌にあてると反射的に把握する。通常4~6か月で消失する。
・ 足底把握反射 plantar grasp
新生児の足底を圧迫すると足指が屈曲してくる。独歩確立前(9か月頃)消失する。
・ 歩行反射(自動歩行) stepping refkex
足を床につけ身体を前に傾けると、歩行する。6~8週で消失する。
・ 定位反射(踏み出し反射) placing reflex
新生児の片方の足を足背を机の端にこすると下肢が屈曲してまたいで机に足をつく。
・ 非対称性緊張性頚反射
asymmetric tonic neck reflex (ATNR)
頭部および体幹を正中線に対称的に置いた後に、頭部を一側に向けると顔の向いている側の上下肢が伸展し、後頭部側の上下肢が屈曲する(弓矢をひく姿勢)。生後4~6か月ころ消失する。
・ 追いかけ反射(索餌反射) rooting reflex
児の上下の口唇・左右の口角を触れると口を開き頭を刺激側に向ける。
・ 吸啜(きゅうてつ)反射 sucking reflex
検者の小指を口の中に入れると規則的な吸啜運動がみられる。
・ 背反射(Garant 反射) Galant reflex
腹臥位に抱いた状態で、脊柱に沿ってこすると体幹を同側に傾ける。
・ 腹這い反射 crawl reflex
うつ伏せの状態で一方の足の裏へ圧力を加えると、上肢と下肢を使って這う動きが誘発される。
・ 引き起こし反射 traction response
仰臥位で両手首を握り、ゆっくり坐位まで引き起こすと頚・肩・上肢の筋肉を使って、あたかも引き起こされるのに協力するかのように肘を屈曲し、半屈位で維持する。
****** 参考:
Babinski徴候(Babinski sign) 足の裏をとがったもので踵から爪先にむけてゆっくりとこする。足の親指が足の甲(足背)の方にゆっくり曲がる(拇指現象)。他の4本の指は外側に開く(開扇現象)。成人では錐体路障害を示す病的反射だが、出生時には存在し2歳ごろに消失する(生理的Babinski徴候陽性)。