ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

着床 (implantation)

2020年08月01日 | 生殖内分泌

着床とは、受精卵から初期発生を経て形成された胚が子宮内膜に触れ、結合(進入・絨毛構造を形成)することをいい、妊娠の始まりと言える現象である。着床過程は、胚と子宮内膜上皮の接着上皮下の間質への浸潤胚全体の被包・定着初期胎盤の形成に分けられる。子宮内膜が着床を起こすことができる時期は限られており、それを胚受容期(implantation window)という。胚受容期でなければ着床することはできない。着床成立には胚と子宮内膜の条件が同調している必要がある。

 着床過程

月経により子宮内膜が剥離・排泄された後、子宮内膜はエストロゲンの刺激を受け発育し厚みをもつ。排卵後にプロゲステロンが徐々に上昇し、子宮内膜管腔上皮細胞の増殖抑制と間質細胞の増殖亢進が起きる。その後にエストロゲンが上昇し、その刺激により子宮内膜は胚を着床させる能力を獲得し、着床が可能な胚受容期となる。その時期に着床成立しなければ、非胚受容期へと至る。胚受容期の時期は排卵後5~9日後と推定される。


 排卵後の女性ホルモン動態と胚受容期

参考文献:
1)データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017
2)生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014
3)今すぐ知りたい!不妊治療Q&A、久慈直昭ら編、医学書院、2019