
白い毛に覆われて、うつむき加減に咲く赤紫色の花。春に咲き、花が終るとタンポポの綿毛のような白い毛に変化する。その毛が飛んで、真ん中が禿げた翁のように見えるところから名が付いたという翁草(オキナグサ)。僕のことではありません。僕はワスレナグサです。

背丈の低い下向きの花を撮ろうと、地面に寝転びカメラを構えていると、この花を携帯で撮ろうとしていたカップルがいた。携帯のカメラを花に向けながら彼女が言った。「こんなに下を向いていると、撮りにくいわね、だから起きな草っていうのね」。思わず吹き出してしまった。

花言葉は「何も求めない」「清純な心」だとか。他にも「背信の愛」というのもある。人を愛したとき、人は見返りを求める。しかし、この世で一番美しいもの、それは「無償の愛」だと、美輪明宏さんは言う。親が子を思い、子が親を思う心、それが純粋の愛の形、至高の美であると。
親が子を殺し、子が親を殺す世の中、オキナグサのように、うつむきながらわが子を見守る姿に、無償の愛を見つけよう。背信の愛にならぬように・・・。