ソチ五輪大会11日目の17日(現地時間)は、スキージャンプの男子ラージヒルの団体戦(HS=ヒルサイズ:140m、K点:125m)が行われました。国の威信を懸けて戦うこの種目、98年の長野五輪以来のメダル獲得を目指す日本は、銀メダリストの葛西紀明選手、伊東大貴選手、竹内択選手、若手のホープ・清水礼留飛選手の4名が出場しました。
1回目、日本の1人目・清水は飛行中にバランスを崩しかけるも、K点を大きく超えるジャンプを披露。テレマークもしっかり入れ、132m50を飛んで127.8点を獲得。第1グループ終了時点で日本は2位スタート。2番手の竹内は、安定飛行のジャンプでわずかにK点を超える。 約2mの追い風を受けて127m、飛型点も117.9点に留まり、チームも2位から4位に後退。3番手・伊東は追い風ながらも距離を伸ばし、130.5mを飛んで130.3点をマーク。3人終えた時点で375.9点を挙げ、372.6点のノルウェ-を抜いて再び3位に躍り出る。そして4番手の葛西が登場し、鋭く踏み切ると、大きなV字飛行で130m台まで伸ばす!着地もバッチリと決め、134mの大ジャンプ。飛型点も審査員の5人全員が18.5点をつけ、131.5点を獲得。
1回目を終え、日本は4人合計で507.5点を記録して3位。トップ争いは、ドイツが519.0点でトップ。2人目のマリヌス・クラウスが136.5m(136.1点)、3人目のアンドレアス・ヴェリンガーが133m(125.3点)を飛ぶなど、4人全員が130mを超えるジャンプをみせた。2位はオーストリアで4人合計516.5点。1人目のミヒャエル・ハイボエクが134mを飛ぶと、トーマス・ディートハルトが136mの大ジャンプを披露。一方、個人2冠のカミル・ストッフを擁するポーランドは、489.2点で4位。日本とポーランドの差は18.3ポイント。
後半の2回目、トップバッターとしてにチームを勢いづけるフライトを見せた清水は、2本目も高さのあるジャンプで軽々とK点オーバー。追い風をモノともせず、131mを飛んで132.6点と1回目より飛型点を伸ばした。首位・ドイツの1人目・アンドレアス・ヴァンクは128m、2位につけているオーストリアの1人・ハイボエクは130mをマーク。1人目を終えてドイツが644.5点に対し、オーストリアは649.9点で首位に立つ。日本は640.1点で3位キープ。
第2グループ、日本の2人目・竹内は向かい風を貰い、130mと距離を伸ばして120.5点を追加。見事に1回目の失敗を挽回できた。ドイツ2人目のクラウスは、安定した飛行から134.5m。完璧な着地とランディングでポイントを稼ぎ、132.0点を加えた。対するオーストリアは、モルゲンシュテルンが133.5mを飛んで130.4点。6回飛び終えてオーストリアが776.8点でトップを守り、ドイツが776.5点で2位。両国の差はわずか0.3点差。日本は760.6点で3位とメダル圏内。
第3グループ、3位の日本は追い風の中素晴らしいジャンプを見せた伊東が、132mを飛んで127.0点。メダルへ王手を懸ける大ジャンプで、トータル887.6点。2位ドイツの3人目・ヴェリンガーは、高い飛行から134.5m。しっかりとした着地で133.9点を挙げた。首位オーストリアの3人目は、1回目に136mのフライトを見せたディートハルト。板が揺れながらも132.5mを記録。飛型点は130.2点とドイツを下回る。これで総合得点もドイツが910.4点、オーストリアが907.0点で、ドイツが逆転して再び1位になった。
運命の最終グループ。前半4位のポーランドは、アンカーのストッフが安定飛行から135mを飛び、2冠王者の意地を見せつけた。飛型点も139.8点を挙げ、合計1011.8点で終了。そして、日本は葛西が登場。メダルを懸けたラストフライト、大きくV字を広げて130m台まで持って行った!メダルを決定付ける見事な飛行!134mで飛型点137.7点!合計1024.9点とポーランドを上回りメダル確定!
気になるドイツVSオーストリアの金メダル争いは、まずオーストリアのグレゴア・シュリーレンツァウアーが132mで131.4点をマーク。チーム合計1038.4点で競技終了。ドイツはアンカーのセヴェリン・フロイントが131mを飛ぶ。飛型点も130.7点を挙げ、合計1041.1点でドイツが接戦を制して金メダルを手にしました。
男子ラージヒル団体戦 最終結果
金メダル ドイツ 1041.1点
銀メダル オーストリア 1038.4点
銅メダル 日本 1024.9点
葛西選手率いる「日の丸飛行隊2014」が、団体戦で銅メダルを獲得しました!1998年の長野五輪の金メダル以来、4大会ぶり3度目のメダルです。切り込み隊長の清水選手が、攻めのジャンプでチームに勢いをもたらすと、竹内選手がうまくつなぎ、伊東選手が膝の痛みに耐えながらも130m台を連発し、最年長の葛西選手が2本とも134mの大ジャンプを披露しました。葛西選手は先日の個人ラージヒルの銀メダルに続き、今大会2個目のメダル。試合後のインタビューでは「力を合わせてメダルが取れたことが、うれしいし、本当に取らしてあげたいといったので良かった」と涙ながらにコメント。ソチで「葛西伝説」がまた一つ誕生しましたね。
葛西選手のインタビューの中で、「竹内も病気で一緒に選ばれた」と語っておりましたが、記者会見で竹内選手が「アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)」という難病を患っている事を公表。欧州遠征中に39度の高熱が出るなど体調を崩し、帰国後に2週間の入院。そこで「アレルギー性肉芽腫性血管炎」の診断をうけました。竹内選手は元々ぜんそくの持病を抱えていましたが、症状が悪化して誘発したそうです。現在もステロイド剤を飲んで症状を抑えていますが、筋力は低下。そのため、本番に合わせるために病室でトレーニングを行ったそうです。
「アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)」とは、細い血管に血管障害が生じる病気であり、早期治療を行うと治癒するけど、末梢神経障害や再発する可能性もある病気。国内で年間に新たに発症する患者数は推定で約100人もいるそうです。竹内選手の公表によって「チャーグ・ストラウス症候群」という病名を初めて聞いた人もさぞかし多いでしょう。難病と闘いながら五輪で活躍したことで、同じ病気に罹っているに勇気を与えたことは間違いありません。
あと、伊東選手は左ひざに爆弾を抱えていたそうで、五輪直前の大会に左膝裏の違和感を感じ、大事を取って8日のノーマルヒルを欠場。団体戦では2本目の着地の後に倒れ込み、フラワーセレモニーでは歩くのがやっとの状態でした。葛西選手も腰を痛めていており、みんなが満身創痍の中、メダルを掴み取る事ができました。チーム最年少の清水選手は、個人戦と同様130m台を連発。レルヒの貢献度が無かったら、メダルは取れていなかったと思います。彼にとってソチでの経験は大きな財産となるでしょう。
長野以降不振が続いていたジャンプ日本代表ですが、ソチ五輪でメダル2個を獲得し、「日の丸飛行隊」復活を印象付けました。4年後の平昌五輪では、男子団体戦の金メダル、それに女子ジャンプの高梨沙羅選手のリベンジに期待したいと思います。