ゴールデンウィーク最終日の5月6日、ボクシングの4団体(WBA・WBC・WBO・IBF)統一スーパーバンタム級タイトルマッチ「井上尚弥VSルイス・ネリ」が東京ドームで行われました。井上選手は昨年6月に4階級制覇を果たすと、12月のマーロン・タパレス戦にも勝利し、バンタム級に続いて4団体統一を果たしました。今回の尚弥VSネリ戦の舞台は東京ドーム。1990年のマイク・タイソンVSジェームス・ダグラス戦以来、34年ぶりのボクシング興行だそうです。
対戦相手のルイス・ネリ選手は、2017年に当時WBCバンタム級王座を12回も防衛した山中慎介選手を破って王座を奪取するも、試合後に薬物陽性反応が出る。再戦となった2018年3月には体重超過で王座を剝奪され、その後に日本国内での無期限活動停止処分を受けましたが、それが6年ぶりに解除されることに。「日本の怪物」VS「メキシコの悪童」のドーム決戦は、第1ラウンドから波乱の展開となりました。
第1ラウンド、開始20秒近くに尚弥が右フックを見せると、ネリも右ジャブから左フックを狙うが、尚弥が避ける。お互い様子を見ながら迎えた1分49秒辺りで、尚弥が左アッパーを放つと、すぐさまネリが左フックを返して尚弥が倒れる!井上尚弥がまさかの初ダウンを喫してしまう!ネリはダウンを奪った勢いで尚弥をコーナーに追い詰めるが、尚弥はステップとガードで猛攻をしのぐと、アッパーで反撃。それでも最初のラウンドはネリが優勢。
第2ラウンド、序盤から両者がジャブとボディブローを打ち合い、1分30秒過ぎに尚弥の右ボディが次々と入る。残り1分を切り、ネリが前に出るところを尚弥がカウンターの左フックを当ててネリがダウン!井上尚弥がダウンを奪い返した!
第3ラウンド、開始早々に尚弥がボディから連打を見せ、ネリがキャンバスに手を突くもスリップの判定。ネリも強引にパンチを振るも尚弥が上手く避けきると、右のジャブも尚弥が左手でブロック。その後も尚弥のパンチが的確に当たり、このラウンドは尚弥優勢。
4ラウンドも尚弥が先に仕掛け、右ストレートと左ボディをヒットさせる。ネリも必死に前に出るが、尚弥が顎に手を当てて「打って来い」と挑発してから右ストレート&左ボディ。さらにもう1発左ボディを当てた後、ノーガードを見せる。これは尚弥のペースだ。残り1分を切って左右のボディでダメージを与え、バックステップでネリのパンチを防いで終了。
第5ラウンド、両者がフックを出し合うと、尚弥の右の連打でネリが少しぐらつく。1分過ぎには尚弥の右ストレートが決まれば、ネリも荒々しく攻めに出る。半分過ぎに前に出すぎたネリが尚弥とバッティング。レフェリーがネリに注意を与えると、場内からは大ブーイングが起きる。ネリもの凄く焦っている。残り40秒、ネリがプレッシャーをかけるところを、尚弥の左フックが炸裂!井上尚弥この日2度目のダウンを奪う!ネリが立ち上がった後、両者が激しく打ち合い、尚弥は右ストレートを出し続けた。
迎えた第6ラウンド、ネリが積極的に手を出すが、尚弥は堅いガードで受けきってから両手を挙げて挑発。その直後に左フックから右ストレートでネリの顎が上がる。そして1分17秒、尚弥の右ストレートが完璧に決まり、モロに喰らったネリは崩れ落ちてレフェリーストップ!第6ラウンド1分22秒、3度のダウンを奪った井上尚弥がルイス・ネリにTKO勝ち!
34年ぶりとなる東京ドームでのボクシング世界タイトルマッチは、井上尚弥選手がいきなりダウンを喫する波乱の幕開けとなりましたが、第2ラウンドに尚弥選手がダウンを奪い返し、その後はボディ攻撃で相手のスタミナを削ると、ダウンを2度追加してネリ選手を圧倒。メキシコの悪童を退治した井上選手が、4団体のベルトを守り抜きました。(WBCとWBOは2度目、IBFとWBAは初防衛)
最初のダウンの時は「タイソンの悲劇再来か」と思ったけど、すぐに挽回して、最後は右ストレートで沈めてみせたので、強すぎるし凄すぎます。なんでこの試合が地上波の生中継で見られないんだろうか?これで井上尚弥選手は27戦27勝(24KO)、自身も8試合連続KO勝利を果たしました。ダウンを奪われても逆転でKO勝ちしたことは、ボクサーとしてさらに成長したんじゃないかと思います。リング誌の「パウンド・フォー・パウンド」ランキングで1位に返り咲くといいですね。
敗れたネリ選手は、井上尚弥選手から初めてダウンを奪ったこと、何度パンチを浴びながらも前に出続けたのが印象に残りました。前日計量でリミットから500gアンダーでパスしたり、会場に一番乗りしたという辺りは本気度を感じました。6年前のネリとは全然違ったし、敗れても株を上げたことは間違いありません。
一部報道によると、井上尚弥選手は次戦、9月ごろにサム・グッドマン選手(豪州)と対戦予定らしい。9月だと間隔が短いから、10月以降になるんじゃないか?サム・グッドマン選手はWBOとIBFのランキングで共に1位、18戦全勝だそうです。フルトン選手やタパレス選手に比べると格下感はあるかもなぁ。次の試合も井上選手らしい豪快なKO劇を見せてくれることでしょう。
この日の東京ドーム興行は、井上尚弥選手の他にも世界タイトルマッチが3試合行われました。
「WBA世界フライ級タイトルマッチ」ユーリ阿久井政悟VS桑原拓の一戦は、王者の阿久井選手が3-0の判定勝ちを収め、初防衛に成功。
「WBA世界バンタム級タイトルマッチ」井上拓真VS石田匠の試合は、第1ラウンドに石田選手がダウンを奪いながらも、拓真選手が盛り返し、12ラウンド戦った末、拓真選手の判定勝ち。井上拓真選手は2度目の王座防衛。井上兄弟は揃って1ラウンドに倒されながらも勝ちましたね。
「WBO世界バンタム級タイトルマッチ」は、デビューから8戦全てKO勝利の武居由樹選手が、王者のジェイソン・モロニーを判定で破り新王者に輝きました。武居選手はK-1からプロボクシングに転向し、わずか9戦目でK-1とボクシングの世界王者になる偉業を達成。さらに日本のジム所属する男子選手として史上100人目の世界王者誕生です。
これでバンタム級の世界王者は、WBCが中谷潤人選手、WBAが井上拓真選手、WBOが武居選手、さらに先日のIBF王座戦でエマヌエル・ロドリゲスを破った西田凌佑選手と世界主要4団体で日本人が独占。こりゃぁ凄い時代になりましたね。そのうち2人が大橋ジム所属ですよ。日本人同士の統一戦も見てみたいところですが、西田選手は減量苦でIBF王座の返上して階級を上げることも考えているとのことですが、スーパーバンタム級には「モンスター」がいるので・・・。バンタム級には他にも那須川天心選手、堤聖也選手といった期待の日本人ボクサーも世界ランク入りしており、バンタム級ウォーズはますます面白くなりそうです。