どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

最後のモノクロ作品でもある「東京暮色」

2018年11月04日 19時58分00秒 | 映画
前回書き込みに続けて「東京暮色」で、もう少々(^_^;

タイトルに夕闇や薄暗い色合いを意味する言葉が含まれているとおり、単彩による階調の美しさを極めたと言って良い作品です。

個人的に印象に残るシーンを順に...。

手前の男の革ジャンの光沢が非常に美しく、質感だけでなく皮の匂いまで感じとれます。


文字通り、雪見障子から降り始めた雪がとてもキレイです(^_^)


雀荘の奥行きがとても立体感がよく出ていて、階調表現が素晴らしい。


雲一つない冬の青空の微細な階調。そして手前の踏切、奥に見える電柱のコントラストが鮮明で、色まで感じます(^_^)


全体的に暗いシーンですが、黒つぶれすることなく微細な階調で人物の表情、奥に見える海や建物までキチンと視認できる巧みさ!




深夜喫茶のシーンですが、暗がりの中に浮かぶポイント的な照明器具と、不気味に照らし出される人物表現...とても計算しつくされている照明の職人技を感じます。


寒々とした夜の警察署内...全体的に弱い照明で影部分も多め...観ているだけで身も心も冷え冷えしてきます...。


これも微弱な照明を配置して、全体に暗い室内ながらも、手前と奥をノッペリさせずに奥行き感がよく出ていると思います。



夜の上野駅ホーム...汽車の車体に鈍く反射する硬質感、全体的に黒々しつつも、人物を効果的に浮かび上がらせている...。


手前に額縁のような襖、奥にガラス窓、そして窓越しに見える閉鎖的な庭先...この造形は小津作品によく出てくる背景描写ですが、ディテールもよく出ていて、小道具にも無駄がない...本当に見事です。

「東京暮色」の次作は「彼岸花」、カラー化のためもあり一転して明るく華やかな作風になっていきます。

カラー化するのにかなり躊躇し、フィルム選びも大変だったみたいですが、この「東京暮色」を観ていると安易に色出しに頼らず、モノクロだけでもまだまだ充分に作品表現が可能なのだというコダワリの気持ちがビンビン伝わってくるのです(^_^)